【東京2020男子サッカー】準決勝日本vsスペイン感想~健闘した!で終わらせないために~
日本は決勝進出をかけドリームチーム・スペインと対戦。0-0のまま90分では決着がつかず延長戦へ。試合を通してよく守りよく走りスペインを苦しめたが、延長後半、アセンシオの一撃に沈む。
まずは素晴らしい試合をした選手を称えたい。そして勇気ある交代策を実行した森保監督にも賛辞を送りたい。サッカーファンとして、日本人として非常に胸が熱くなった試合だった。
が、しかしである。「感動した!」「健闘した!」「いい試合だった!」で終わらせていてはロシアワールドカップのベルギー戦と変わらないし、何より選手は誰一人として満足はしていないだろう。
正直言ってやりようによっては勝つ可能性があったと思う。個の力では確かにスペインの方が上回っていただろうし、勝敗を分けたのもその部分だとは思う。しかし個の力で劣るニュージーランドが戦術的工夫で日本を苦しめ延長まで持ち込んだ事を考えれば、高いスキルを持つ日本が今日のスペインに勝つ事は決して不可能ではなかったはずだ。
負けた試合を後に「たら」「れば」を行っても始まらない。しかしあえて言いたい。もしもこうだったなら…。
「槍」を備えなかった日本の左サイド
日本のスタメンは試合前に予想した通りだった。というか大方の予想通りだっただろう。唯一予想の難しかった左サイドには旗手を入れてきた。
ここは一点、森保監督が消極的な選択をした部分だと思う。
確かに左SBの中山&旗手はチームに守備の安定をもたらす。主導権を握られるであろうスペインを相手に慎重を期す気持ちは分からないでもないが、スタートから相馬を使っていたら違った展開になっていたはずだ。
昨日の記事に書いた通り、スペインの右サイドは左サイドに比べて攻撃力は劣る。そこまで守備に警戒しなくてもよかったはずだ。旗手は攻撃面においても決して悪い働きではなかったが、カウンターでの迫力という面ではやはり物足りない。右サイドの堂安はどちらかと言うと中へ仕掛けていくタイプの選手なので、左サイドには「槍」タイプの選手を置きたかった。後半、パウトーレスを相手に何度も仕掛けていたように、前半から相馬がいたならもっとスペインを苦しめたことだろう。
実際日本は低めにブロックを敷きカウンターを狙ったが、左サイドからは皆無で、主に堂安が奪ってからの突破を試みていた。しかしスペインの左SBは超攻撃的なククレジャ。左サイドを押し上げダニ・オルモと連携しながらかなり高い位置で仕掛けてくる。必然的に堂安のトランジションは低い位置からになるので容易に裏まで抜けられない。何度かカウンターを仕掛けたがハーフライン付近でつかまって失速を余儀なくされていた。
また交代策としても相馬→前田大然ならば久保&堂安のいるうちにもっと効果的なカウンターを仕掛けられただろう。延長に久保→三好、堂安→前田と交代して両サイドに「槍」を揃えたが、ボールを保持して前を向けるのが三好1人ではやや負担が大きく効果的とは言えなかった。
林から上田への交代での戦力ダウン
またの林大地が精力的に動き体を張ってボールをつないでと素晴らしい働きだったのに対し、後半投入された上田は物足りなさが目立った。この試合、森保監督は早めの交代で点を取りに行く姿勢を見せ、延長には久保&堂安の2枚替えという勇気ある采配を見せたが、いかんせん組み合わせの面で効果が薄かったように思う。
ここまでの試合でも林→上田の交代で一気に戦力ダウンしていた。それを踏まえると林がいるうちにとにかく点を取るというプランが最適だったように思う。
左MFは相馬→前田。右MFを堂安→三好でつなぎ、カウンターでなんとかリードを奪ったところで林→上田、久保→旗手で逃げ切る。あくまでも90分で点を奪い勝ち切るプランを見てみたかった。
フィニッシュの落ち着きを
しかしながら日本は高いスキルを持つスペインに対ししっかりとブロックを敷き延長後半まで0点に抑え、数は少ないが決定機を作った。残念だったのはその少ないチャンスで見られたフィニッシュの焦りである。それはスペインにも言えることで、拮抗した試合の中シュートチャンスに力んでしまったり、落ち着いてルックアップすればフリーの選手がいるのに無理に打ってブロックに合うといったシーンが多かった。
そんな中延長後半に落ち着いたフィニッシュで試合を決めたのは両チーム唯一のFW登録のオーバーエイジ・アセンシオだった。一瞬のスキを逃さず肩の力の抜けた美しいフォームで左足を振り抜いた。さすがとしか言いようがない。
銅メダルのかかるメキシコ戦に向けて
3位決定戦のメキシコはグループリーグで勝利している相手だけに難しい試合になるだろう。延長に劇的な1点を奪われた日本よりもPKで敗れたメキシコの方が精神的なダメージも少ないはずだ。
キャプテン吉田麻也も言っていたが、もうここまでくると戦術云々ではなくメンタルの状態が最も重要になってくる。いかにリフレッシュして試合に臨めるか。
ベンチにいても明るくチームを鼓舞する槙野のような存在は今の日本はいないとは思うが、苦しい状況でいかにメンタルをコントロールするかはプレッシャーのかかる大会で戦うためには非常に大切な要素だと思う。
もう一度、胸の熱くなる試合を見せてほしい。