【東京2020サッカー男子】日本VSメキシコ~うまく時計を進めることのできない森保ジャパンの危うさ~

優勝候補と目されるメキシコ相手に高い強度の守備と素早い縦への突破力で2点を先制した。前半は完全に日本の試合だった。前線は林大地を中心によくプレッシャーをかけ、先発起用された左の相馬も攻守にスプリントを繰り返した。久保、堂安のテクニカルなプレーも見られ、守備陣はハードにメキシコの攻撃を抑えた。

が、後半のトーンダウン。ナイトゲームとはいえ気温の高い中での中2日での試合。前半からあれだけ走れば後半に当然体力は切れる。2点リードとはいえ、ポテンシャルの高いメキシコを相手にプレッシャーがかからなくなれば押し込まれる。パスコースを作れなくなり、ミスも増えるから攻撃時もボールを保持できない。さらに押し込まれる。

全く持って想定内の展開だ。

相手が勢いに乗る前に選手交代のカードを切ってプレスの強度を保ち、マイボールになったらしっかりボールを回しゲームを落ち着かせ相手の体力を奪う。それが日本の取るべき当然の戦略だった。

しかし日本にはそれができない。森保監督の交代は5~10分ずつ遅かったように思う。最初に動いたのは65分。相馬に代えて前田大然。相馬の運動量を考えたら当然の交代だが、前線で体を張り続けた林もかなりの運動量だったはず。ここは2枚替えすべきだっただろう。

しかも直後の68分にはメキシコが退場者を出している。2点リードで1人多い状況なら多少クオリティーが下がっても走れる選手を入れてボールを回せば楽に逃げ切れる条件だ。

だが森保監督が次のカードを切ったのは79分。しかも堂安と林の2枚のみ。体力切れで終盤消えていた久保はそのまま。5人の交代枠で最終的に3枚切ったのみで終わった。

ここにきて森安監督の悪いクセが出たように思う。ハードスケジュールのオリンピックでは固定メンバーで勝ち上がることは難しい。そのためにテストマッチでは前後半で極端にメンバーを入れ替えて戦い、総力戦で挑む構えで準備してきたはずだ。にも関わらず本番で全く生かされていない。カードを切る勇気と自信がないのだろう。

イエローカードをもらっている選手も多数いるが、次も同じスタメンなのだろうか。それでフランスに勝ち切ったとして、おそらく1人、2人は出場停止が出てくる。準々決勝で初出場の選手がいきなりスタメンとかやめてほしい。そこまで計算して交代策を練らなければとてもメダルには届かないだろう。

しかも終盤入れたメンバーにはどんな指示を送っていたのか。残り10分にもなればうまく時計の針を進めて逃げ切るという共通意識でプレーすべきだが、上田や三笘は突破を試みていた。またゴール前での不用意なファールは絶対に避けるべきだが、三笘の無理なプレスによりファールを与え10人のメキシコに1点差に詰め寄られる。

なんて試合運びの下手なチームなのだろう。

ロストフの悲劇で日本は何を学んだのか。格上のベルギー相手に2点リードしたにも関わらず無策なまま時間を過ごし、2-2に追いつかれるまで交代カードを切れなかったあの試合。リードした時どうやってうまく時計の針を進めて逃げ切るのか、それがこの4年間の課題だったんじゃないのか。

ワールドカップ予選ではアマチュアレベルのモンゴルやミャンマー相手に10点取って喜んでいるが、あのレベルのチームを相手に試合が決まってからも貪欲にゴールを狙い続ける必要がどこにあるのか。試合を落ち着かせボールを保持して相手を走らせて体力を奪いつつ時計を進める”大人のサッカー”を目指すべきだ。どうも森保ジャパンは攻めるしか能のない頭の悪いチームに思えて仕方がなかったが、今回のメキシコ戦を観て確信した。何も学んでいないのだと。

1試合、2試合戦うだけなら強豪にも負けないクオリティーを持っているが、メダルを目指すには残り3~4試合を勝ち切らなけらばならない。残念ながら2戦目で90分をコントロールできなかったチームがこの先この大会を乗り切れるとは思えない。

予想を裏切る事を願う。


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