【東京2020サッカー男子】準決勝日本VSスペイン展望~弱者の戦いでメダルへ~
準々決勝のニュージーランド戦は苦しみながらもPK戦で勝利。いよいよメダルが射程圏内に入ってきたが準決勝の相手はスペイン。先のユーロ2020でベスト4まで勝ち上がったメンバーが多く選出され、非常にクオリティーの高いチームだ。ニュージーランド戦後の記事では半ば諦めの心境で「見守るしかない」と締めくくったが、ここはひとつ前向きに展望してみたい。
ドリームチーム・スペインの予想スタメン
スペインはおそらくこれまで通り4-1-2-3で来るだろう。GKはA代表のウナイ・シモン。CBもA代表、パウ・トーレスとエリック・ガルシア。守備も堅くフィード力も高い。右サイドバックはミンゲサが負傷したためコートジボワール戦で交代したパジェホか。パジェホはクラブではCBのイメージしかないが、そもそもミンゲサもバルセロナではSBの選手ではない。守備は固いが攻撃で脅威になることはないだろう。逆に左SBは攻撃的だ。コートジボワール戦ではミランダがスタメンだったがククレジャの可能性もある。昨シーズン久保のチームメイトだったククレジャの本職はサイドアタッカーだ。スペインの4バックはかなり左肩上がりの布陣になるとみられる。
中盤はアンカーにスビメンディ。大会前の日本戦でも効果的な配給をしていた。その前に2CMFが並ぶ。バルセロナの神童ペドリとミケル・メリノ。ダニ・セバージョスを使ってくる可能性もあるが、誰が出てもレベルの高いパス交換を見せてくる。ただユーロから酷使されているペドリは疲労もたまっている事だろう。
FWは左にドリブラーのダニ・オルモ、右にオーバーエージ枠・レアルマドリードのアセンシオ。トップにオヤルサバル。または調子を上げているラファ・ミルか。
と、スタメンをつらつらと書き連ねるだけでいかに充実したメンバーか分かる。さらにベンチには途中から出てくると厄介なドリブラー、ブライアン・ヒルもいる。その他の強豪国が満足なメンバーを招集できない中、これ以上ない豪華メンバーを揃えたスペインを倒すのは容易ではない。
日本のスタメンにサプライズはあるか?
日本のフォーメーションは毎度お馴染み4-2-3-1だろう。相手がどんなフォーメーションだろうが今さら森保監督にオプションがあるとは思えないが、スペインの4-1-2-3に対しては嚙み合う形となる。
GKは谷。CBは吉田と出場停止の冨安に代わり板倉。右SBに酒井、左SBに中山、CMFは遠藤と田中蒼。2列目は右に堂安、センターに久保。ここまではかなりの確率でこのメンバーだと思う。そして左のアタッカーだが、相馬が第一候補か。守備へのスプリント力、カウンターでの攻撃力を考えると、三笘、旗手の可能性は低い。交代で出すとしても前田大然が適任だろう。
ワントップは林大地と見る。上田は今大会いまいち試合に入れていない。ツートップやゼロトップみたいな奇策をとる勇気も森保監督にはないだろうから、定番のシステムに現状考えうるベストメンバーを嵌め込んでくる作業になるだろう。
カギは日本の右サイドの攻防か。
さて試合展開だが、十中八九スペインがポセッションする展開になるだろう。日本はどこからプレッシャーをかけるか。2枚がCBに当たればアンカーがフリーになるだろうし、アンカーを消しても能力の高いCBが持ち上がりビルドアップを許してしまう。低めにブロックを敷いて中盤をしっかり固めるのが得策だ。2CMF、特にペドリをしっかりマンマークで押さえて仕事をさせたくない。ペドリにつくのは遠藤になると思うが、疲労の見えるペドリを抑えることは可能だろう。
中央を押さえたとして、スペインはサイドから縦への突破を試みてくるだろう。特に左サイド、日本の右サイドの攻防がカギになってくると見る。ダニ・オルモVS酒井宏樹。ここのマッチアップは見ものだ。ただそこに左SBが絡んできて1対2を作られることは避けたい。ククレジャだったとしたらもうどっちがWGか分からないようなランニングを見せてくる。そこに堂安がしっかりついてこれるか。またボールを奪った後にいかにSBの上がったスペースに走り込めるか。原口元気ばりの上下動を見せないと簡単に押し込まれるだろう。
逆にスペインの右サイドはアセンシオが孤立する可能性が高い、というか孤立させたい。その辺りはCB板倉と左SB中山が連携して、さらにはプレスバックした左SMFと共に挟み込み自由を奪いたい。間違っても一発で当たって剥がされることがないように。またアセンシオは中盤に下りたり中央に顔を出してボールに絡んでくるのでその場合のマークもしっかり確認しておきたいところだ。今大会パフォーマンスのよくないアセンシオではあるが、ボールを触らせると危険な選手であることに変わりはない。右のアセンシオを起点に強力な左サイドに展開される事は避けたい。
あとはここまでの対戦相手ではあまり脅威を感じてこなかったミドルシュートへの警戒が必要だろう。スペインの選手はエリア外からでも正確に枠を狙ってくる。ポゼッションされてズルズルと下がってボールに当たりに行かないとロングレンジからやられる。
日本の攻撃に活路は?
テストマッチでは久保の突破から堂安のシュートで1点を先制した日本だが、準決勝では簡単にドリブル突破を許してくれないだろう。ニュージーランド戦では戦術的に劣勢を強いられ、個の技術に頼るしか可能性を見いだせなかった日本。さらに守備の時間が長くなるであろうスペイン戦で点を取るとしたらカウンターしかない。いかに割り切ってカウンターを狙えるか。ボールを奪ってこれまでのようにドリブルやショートパスで時間を使っていてはチャンスは少ない。弱者の戦い方に徹し、素早いトランジションでゴール前まで運びたい。疲労困憊の中ボールを保持され苦しい時間帯が多くなるが、攻撃時にどこまで走れるか。
まずはとにかく失点を防ぎ後半途中まで粘れたら、思い切った交代策で畳みかけたい。大一番、森保監督には是非とも勇気を持った采配を願う。
システムでスペインをはめ込むなら3-5-2。
まずないと思うが、受けに回るのではなく積極的にスペインをはめ込んでいくのなら3-5-2が得策だろう。そう、ニュージーランドが日本にやってきたのと同じ戦術だ。
2トップでCBにプレッシャーをかけ、中盤は3人でマンマーク。サイドはWBとCBが連携して抑える。
2トップは林と前田大然。トップ下に久保または堂安、2CMFは遠藤と田中。WBは右に相馬、左は適任が見つからないが可能性があるのは旗手か中山。3CBは酒井、吉田、中山(板倉)。
ここまで定番システムに固執してきた森保監督が対スペイン戦にサプライズを用意してくるとは思えないが、今後ワールドカップに向けて戦う上では相手に対応したシステムのオプションは必要だろう。
同じ戦術で戦い抜けるほど現代サッカーは甘くない。