【ユーロ2020決勝】イタリアVSイングランド 勝負を分けるのはチェルシー対決か
ついに決勝 順当に勝ち上がったイタリア&イングランド
1カ月に及ぶ世界トップレベルの戦いもついにクライマックス。クラブチームのような高い完成度を誇るイタリア。高いインテンシティと守備力でスキのない戦いで勝ち上がってきたイングランド。波乱もあった決勝トーナメントだったが優勝を争うのは順当とも言える2チームとなった。激戦が予想される決勝戦の展開を予想してみたい。
システムがガチガチに噛み合う試合 勝負を分けるのは個のクオリティー
イタリアは大会を通して4-3-3のシステム。中盤の構成を見るとジョルジーニョが引いた位置からゲームをコントロール、ヴェラッティが左サイド寄りで攻撃的な左SBと左WGインシーニェとのコンビネーションを見せ、バレッラがトップ下、やや右サイドで大外に張るキエーザ(またはヴェラルディ)に絡みハーフスペースから裏を狙う動きも。4-1-2-3に近い形だ。
一方イングランドはドイツ戦やデンマーク戦の延長で3バックを敷いたものの、基本は4-3-3。こちらの中盤はライス&フィリップスの2CMFの前にマウントを置いた4-2-1-3で来る可能性が高い。そうなった場合システムは見事に合致。両チームの守備力を考えると試合はサイドと中盤での攻防が多くなり0-0で進むだろう。
こういった完全なミラーゲームの場合、勝負を分けるのは個のクオリティーになることが多い。1対1の局面でマークを剥がし数的優位を作り出したとき決定機が訪れる。全体的な個のレベルではイングランドが一歩リードか。セリエAファンには悪いが、現在のイタリアのリーグレベルは決して高くはない。それはCLやELの結果を見ても明らかだ。イタリア代表の主力で昨シーズン国際舞台で活躍した選手はチェルシーのジョルジーニョとパリ・サンジェルマンのヴェラッティくらい。しかもスクデッドを取ったインテルからはCMFのバレッラのみ。代表のほとんどがセリエAの選手であるのにも関わらずこれは少し寂しい。
一方イングランド・プレミアリーグは現在世界最高峰のレベルを誇っている。CL・ELの決勝には3チームが残っている。ディフェンスラインに並ぶのはリーグ優勝とCL準優勝のシティからウォーカー&ストーンズ、EL準優勝のユナイテッドからマグワイア&ショー。世界最高峰のリーグの中でもトップレベルの守備陣。FKの1失点のみで勝ち上がってきたのも頷ける。そしてストライカーとして君臨するのは得点王&アシスト王のケインだ。国内選手がこの結果を残しているのは代表にとって非常に心強い。
グループリーグでは常に試合を支配してきたイアリア代表が決勝トーナメントでは苦戦を強いられ、準決勝のスペイン戦では完全に主導権を握られた。やはりプレミアと共にレベルの高いリーガの選手たちは局面においてイタリアの選手を上回っていた。セリエA屈指のストライカー・インモービレがスペインの若手DFの前で完全に沈黙していたのはイタリア国民にとってショックであったに違いない。ここまでMVP級の活躍をしてきた左SBスピナッツォーラの離脱も大きい。彼の推進力はきっとイングランド守備陣をも脅かしたであろう。
個々の能力ではイングランドが上回る。が、決勝の舞台ではそう簡単に違いを生み出せるわけではない。ファウル覚悟の激しい競り合いが予想される。今大会絶好調のスターリングがサイドの仕掛けで抜け出す場面はあるだろうが、イタリアゴール前にはキエッリーニ&ボヌッチの老練CBと今大会屈指のGKドンナルンマが立ちはだかる。万能ストライカーケインを擁するイングランド攻撃陣も簡単にゴールは奪えないだろう。
注目はチェルシーの2人のマッチアップ
そんな中、注目するのはチェルシーの2人のマッチアップだ。イタリアの中盤をコントロールするジョルジーニョ。そしてイングランドの攻撃にアクセントを加えるマウント。どちらがより目立った働きができるかが結果を左右すると見る。
スペインの中盤はきっちりマンマークでイタリアの組み立てを封じ、ゲームを支配した。イングランドも当然中盤の守備には気を使うだろう。ライス、フィリップスの守備力の高さから考えてヴェラッティとバレッラの封じ込めは成功しそうだ。そこでマウントである。
スペインではペドリが精力的に動きジョルジーニョの攻撃参加を封じた。しかし攻撃面で言えばあまりにペドリへの負担は大きい。そこでルイス・エンリケはストライカーのモラタを外しゼロトップを採用した。ダニ・オルモが中盤に下りて数的優位を作ることによりペドリの負担は減り配給に専念することができた。
しかしサウスゲート監督がケインを外してくることはないだろう。従来のシステムでスタメンを組んだ場合マウントはペドリとダニ・オルモの役割両方をこなさなければならない。ゼロトップのスペインがゲームを支配しながらも結局モラタを投入するまで得点を奪えなかった事を考えると、イタリアに勝ち切るためにはリスクをとらなければならない。どちらかというマウントはサイドに流れたり裏を狙ったりと攻撃面で力を発揮する選手。守備面でもきっちりと役目を果たせるのか、少し不安は残る。
またイタリア側から見ればいかにジョルジーニョがボールに絡みゲームを組み立てられるかが重要だ。スペイン戦のようにCBからのロングパスやカウンターのみの攻撃ではイングランドDFを攻略するのは難しい。逆に守備時はマウントを抑えなければならない。スペイン戦ではモラタとダニ・オルモのコンビネーションで中央を突破されたが、決勝ではケインとマウントがより高いクオリティで中央のスペースを使ってくるだろう。守備に奔走してディフェンスラインに吸収されるような展開になるとイングランドに押し込まれ攻撃に転じるのが難しくなる。
イタリアがシステムで個を凌駕するならゼロトップ
ここまで従来のシステムでの戦いを前提に予想してきたが、当然決勝でこれまでの戦い方から変更を加える可能性はある。
イタリアが採ってくる対策としては、スペイン戦の後半で見せたようにインモービレを外しインシーニェをセンター、左にキエーザ、右にベラルディという3トップが考えられる。インシーニェが中盤に降りてインテンシティの高いイングランドCMFに対して数的優位を作ってポゼッションを高める。スペインに苦しめられたゼロトップをイングランドに対して採用してきたらそれはそれで面白い展開になりそうだ。対スペイン以上にイングランドCBに対しワントップのインモービレは分が悪い。またデンマークの”ワンダーボーイ”・デムスゴーがウォーカーのスピードに抑えられたことを考えると、左サイドはインシーニェよりもスピード勝負ができるキエーザの方が可能性を感じる。
イングランドのオプションは3バック 右サイドはダブルSBで支配
イングランドがシステム変更を採るとすれば右CBにウォーカー、右のWBにトリッピアーを置く3-4-3か。スピナッツォーラが離脱したもののイタリアは左SBがワイドレーンを上がり内に絞ったインシーニェとサイドで数的優位を作り崩すのが攻撃パターン。スペイン戦でも何度かサイドを攻略した。イングランドがこれを封じるためにはドイツ戦で見せたようなウォーカーとトリッピアーのダブルSBが有効だろう。トリッピアーが高い位置を取ることでイタリアの右SBをピン止めできればサイドの脅威はなくなるだろう。またウォーカーは時にサイドを攻め上がり、時に中盤のつなぎに参加したりとイタリアにとって厄介な存在となる。
しかし3-4-3になった場合はトップ下のマウントを外すことになる。イタリアの3人の中盤に対しイングランドは2CMFの数的不利。ジョルジーニョやヴェラッティに自由を与えれば当然試合は支配される。可能性は低いがケインとスターリングの2トップ、トップ下にマウントを据えた3-5-2なら局面で優位に立てそうだ。
また4バックはそのままに中盤の構成を変えてくる可能性もなくはない。ジョーダン・ヘンダーソンを中盤の底に、4-1-2-3。これはこれで手堅い試合になりそうだ。
ホームの声援を受け、個の力で上回るイングランド優位と見るが、試合はフタを開けてみないと分からない。まずはスタメン発表から注目の一戦。歴史に残る名勝負を期待したい。
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