頼光の中の人、震える
軽井沢錬成会でした。
初参加の昨年は、ふたつきほど前から乗車練習と歩行練習をして挑みましたが、1年経つとそれなり回復は進んでいることを確認できてよかったです。しかし昨年よりさらに難しい部位の回復に取り組んでいることも、相対的に実感しました。腰回りや股関節の筋肉痛がひどいですが、どうせ潰れるからと回復日を当てこんどいてよかったなと思う今日です。
9月に「今井瓢月会」にお邪魔して観世能楽堂で発表をさせていただくことになったのが春の終わり。言ってみれば錬成会は折り返し地点で予行練習。現在地を把握して、さらに練り上げてゆく。
出番の一つ前の発表の時に、お舞台の袖に集まって、先生や仲間とご挨拶。自分たち以外のお役の人とお会いするのも、久しぶりか初めて。能は事前の合同練習はあまりなくて、申し合わせで合わせると言いますが、すごいことですよね。
静かに出番を待っていたとき、おシテのお姉さんとぱっと目が合ったら、なぜか急に緊張してきてしまったので「緊張してきちゃいました」と言ったら、先生がポンっと肩を叩いてくださる。もうそれだけでどういう意味かわかるよね…(笑)。ありがたいことです。
しかし、終わってみればなぜあの時急に緊張が走ったのかはわかります。
出番となって、皆そろりそろりと(私はよっこらしょと)舞台に上り、着座して謡が始まろうかという時、今更ながら自分の座り位置をお舞台のセンターだと把握して、ああ久しぶりにど真ん中から見る景色だなと思いました。
自分の謡いはじめの少し前に、他のお役の人が順番をフライングするミスがあったのですが、受けるお役の人の戸惑いが、ことばを通じてはっきり伝わってきました。しかしなんだか私はコミカルに感じてしまい、おかしくてお舞台の上で口を押さえて笑ってしまい、後で先生に怒られるかな〜なんて思ったものの、緊張がほぐれて助かった、と感じました。
緩んだ場を、自分が引き取って締めないといけないなとも思い、ひとつ、深呼吸をしました。「ソファーにどっぷり座ってい」た声を、部屋全体に通すぞ、という気持ちを持つ。
意識がカチッと切り替わるのを感じました。
こーこーにーきえ かーしーこーにむすぶ
みずのあわのおーぉおー
不思議なことに、意識が清明になってゆくのを感じます。
うきよにめーぐーる
みにこそ ありけれえーぇーえ
感覚が開いてゆき、「何か」とのシンクロを感じます。
げーにーや ひーとーしーれぬ
こーこーろーは おーもーきーさよおー ごーおろものー
少し不安だった箇所をノーミスで謡えてからは、焦りはなくなり、自分がするべきことを全て、丁寧にしようと思った記憶があります。
うらみんかたもなきそでをー かたしきわぶるー
おーもーいぃー かあーぁーなー
”此処に消え彼処(かしこ)に結ぶ水の泡の。
浮世に廻(めぐ)る身にこそありけれ。
げにや人知れぬ心は重き小夜衣(さよごろも)の。
恨みん方もなき袖を。
片敷き侘(わ)ぶる思いかな。”※1
よし、次のお役にバトンタッチできたぞ、と安心して、さらに掛け合ってゆく。
ここから、場が、感じているものがどんどん大きく膨らんでいくように感じ、加速してゆく感覚がありました。
右側のお役ふたりがはっきり感じられる。
左側のお役ふたりもはっきり感じられる。
後ろで支えてくれている地謡の人たちも感じられる。
地謡の中にいる先生の声を選り分けて聞く。
なんとなく思ったのです。
あっ、今、ノれたな、と。
流れを止めない、ここから絶対に降りないと決めました。
途中で感じたのです。
お舞台、楽しい!!!
まじかー
こんな感覚、初めてだー
とか思っていました(笑)。
聴いてくれている人の視線が自分たちに向いているのがはっきり見える。
真剣に聴いてくれているのがわかる。
自分だけではなく、周りもどんどんノって行くのがわかりました。
すると、今度は身体が震えだしました。
どこをどう謡っても、小さくずっと震えているのです。
やべー
震えが止まらないな、なんだこれ
でも、まあいいか
いいんかい(笑)!!!
これ終わってもしばらく震え止まらないやつだな、と思っていました。
謡が終わり、袖でまたありがとうございましたとご挨拶をして、やっぱり震えが止まらないので。
お姉さんたちとお昼ご飯に行くことにしました(笑)。
しっかりと雑談をしながら、しっかりと美味しいご飯を食べて。
ようやくこの世界に戻ってきた感じです。
この世界?
そう、ちょっと普段とは違う意識レベルにいたなと感じていたのです。いわゆる「ゾーン」に入ったように思うのですが、なんかゾーンという言葉では不足がある感じがあるのですよ。しばらくしてから、あっと気づきました。
あれ、武者震いだわ。
感じられる感覚領域が急に拡張している感じがあります。
古い自分を脱ぎ捨てて、「病後の人生のビジョン」にアジャストしようとしているのがわかりました。
そういう時に武者震いって起きるのか。
そりゃあ、震えるわ。
これまで思い描いていた「病後の人生」はもっと暗くて、凡庸だったのです。まったく逆の、非常にエキサイティングなものでした。
9月の発表会まで、お稽古は3回。
もしかしたら、追加のお稽古増えるかも、ですが…
それでも、表現されるものの質と自主稽古の回数は比例していることが、お稽古を始めてからの1年半ではっきりわかったので、自主稽古を積んで頑張りたいと思います。
アメブロの担当日とかでは全くないのですが、アウトプットした方がいいと思って、文章化しました。オチも特にありませんが、前回のアメブロ※2の後日談です。
帰着した頃を見計らったかのように、先生からお電話をいただきました。会場でも、とても褒めてくださったのですが、私の体調へもお気遣いいただき、改めてベタ褒めに褒めてくださり本当に嬉しかったです。
《参考文献》
※1 観世左近(令和二年)『大成版 観世流初心謡本 上』「土蜘蛛」檜書店より引用。ふりがな、新字体、新仮名遣い、注釈は筆者によるもの。
《筆者注》
※2 2024年7月12日「謡え、謡え、謡え」https://ameblo.jp/love-counseling/entry-12859561382.html
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