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「居場所と出番」が大事

昔から、「居場所の大切さ」が語られ、「居場所づくり」という事業が様々な人や団体によって試みられてきました。個人的にも、渋谷の街なかに「相談と検査ができる街の保健室」を出店する事業に携わったことがあります。自分なりに居場所づくりというもの(やその重要性について)を考えてきたつもりです。居場所づくりはとても大事な事業だと思います。その話とは別に、「居場所づくり」をしてきた経験から感じた、人間にとって欠かせない「居場所と出番」について書いてみたいと思います。

人間には「居場所」だけでなく「出番」も必要

ある事業での話。複数の方々に協力を要請し仲間に引き入れたものの、あまりうまく活躍してもらえていなかったことがありました。そこで「ならば、仲間に引き入れた先生方にもっと協力してもらって、力を発揮してもらえばいいのでは?」という提案をしました。早速そういうお願いをして回ったところ、「せっかく仲間に引き入れてはもらったものの、何をやっていいのか分からず身の置き所が無くて困っていた。そういう依頼があるなら喜んでやらせてもらいたい!」と嬉しそうに語ってくれたのです。

社会的な地位もあるし、お金もそれなりに持っていて生活にも特に困っていない大人でも、やること(=出番)を見出せないと不安になるということを実感したエピソードでした。

こういう経験をいくつか積み重ねるうちに「人間には居場所だけでなく、居場所と出番の両方が必要なんだ」と感じるようになっていきました。

まずは「居場所」、次に「出番」

まずは居場所

どんな人にも「居場所」は必要です。他者とのつながりを感じることができて、自分は独りではないと感じられる、ホームベースのような場所が必要なのだと思います。社会的に地位があって活躍している人も、帰る場所、ホームベースがあるから、安心して活動・活躍ができるのではないでしょうか。

なお、「ここにいていいんだ」と本人が自然と感じられる場所がその人にとっての「居場所」であって、そういう場所を作ることが真の居場所づくりだと思いますし、「居場所」とは必ずしも物理的な場所とは限らず、誰かと一緒にいることで出来上がる安心安全な時間である場合もあるかもしれません。

いずれにしろ、人間にはまず、「ここにいていいんだ」と思える、安心安全な居場所が必要なのだと考えています。

次に出番

居場所があって、他者との繋がりの中で「ここにいていいんだ」という気持ちが満たされることは、自分自身の暮らしの足場を固めることでもあります。そうやって暮らしの足場が固まってくると、人間は少しずつ外にも目が向いていき「誰かの役に立ちたい」「人から必要と思われたい」と感じるようになるもののようです(これまでの観察の経験に基づく)。

そういった気持ちになった時に、きちんと誰かの役に立っていると実感ができる出番があると、イキイキ度合いが変わってきます。

かつて、あるイベントを企画した際、大人数のスタッフの中に、病み上がりであまり激しいことのできない人がいましたが、その人は写真を撮ることがとてもうまかったので、「ぜひみんなが頑張っている姿を記録してあげてほしい。これは誰よりもあなたが向いていると思う」というようなお願いをしたところ、パッと目を輝かせて「病み上がりで大きな協力のできない私に役目を与えてくれてありがとう」と言われたことがあります。この出番がなかったら、その人は大勢の他のメンバーがスタッフとして走り回っているところを見ながら「ここにいてもいいのかな…」と身の置き所の無さを感じていたかもしれません。

まとめ

こうした経験を通じて、人間には「ここにいていいんだ」と思える居場所と、「誰かの役に立っている」と実感できる出番の両方が必要なのだと思うに至りました。そして今は「居場所づくり」ではなく「居場所と出番づくり」が大切なんじゃないかと思っている今日この頃です。

自分の生まれついた在り方が生きづらさの理由になるのではなく、誰もが「自分は自分に生まれてよかった」と思える世界をビジョン(実現したい世界像)に掲げる「性の健康イニシアティブ」の立ち上げ人/代表です。ビジョンに共感してくださる方はリアクションお願いします。