やなぎーの履歴書
現在:性の健康イニシアティブを主宰
2021年に立ち上がった民間団体「性の健康イニシアティブ」は、
自分の生まれついた在り方が生きづらさの理由になるのではなく、誰もが自分は自分に生まれてよかったと思える世界
をビジョン(実現したい世界像)に掲げています。
その実現のために
どこに行っても性の健康を享受できるように社会環境をアップデートする
をミッション(ビジョン実現のために果たす使命)に、様々な事業に取り組んでいます。
現在おこなっているのは、
1)対人援助職向けの「性の話題を扱うためのアティチュード講座」の開催
対人援助職のみなさまが、お仕事の現場で性に関する事柄に遭遇した際にどういう心構えや態度で対応すればいいのかについて学べる機会を作っています。
2)性の健康について理解を深めるためのWEBメディア「Sexual Health NAVI」の運営
のふたつの活動です。
これからも「自分の生まれついた在り方が生きづらさの理由になるのではなく、誰もが自分は自分に生まれてよかったと思える世界」を実現するために、「どこに行っても性の健康を享受できるように社会環境をアップデートする」ことを目指して、さらなる活動をおこなっていく予定です。
この記事では、性の健康イニシアティブを主宰しているやなぎーが、どのようにここまでたどり着いたのかを振り返ってみたいと思います。
19歳:若者委員会U-COMの事務局長に
大学生になった春。大学生が同世代向けに性教育をやる団体に入りました。設立3年目のインカレ団体でした。
日本家族計画協会(母子手帳や妊婦体験ジャケットなどの製作や、保健師さん向けの研修などを事業にしている)という団体にサポートを受けているU-COMという名前の団体でした。
世界エイズデー(12月1日)の時期に渋谷区保健所と協働でハチ公前でコンドームを配る活動をしたり、ライブハウスを借り切ってイベントをやったりと、様々な企画を実施しました。この団体では通算で4年間、事務局長としてお世話になりました。
この活動を通じて「ユースフレンドリー」という態度を叩きこまれました。ユースフレンドリーとは「ユース(若者)にとって親しみやすい」というような意味で、性教育や相談活動の対象になる人(若者)に馴染みやすい言葉遣い、見た目、態度、眼差しを大事にしようね、という教えです。
21歳:初めての海外はICPD+10
人生初めての海外渡航はロンドンに行きました。U-COMの活動の一環で、国際会議に日本のユース代表として参加しました。その国際会議というのは、ICPD+10。1994年に開催された「国際人口開発会議」(通称:カイロ会議)から10年を記念するもので、1994年に採択された「行動計画」の実施状況や次の10年を議論する機会でした。この会議の中にユースの声を聴こうというセッションが用意され、世界中から集まったユースの人々とともに様々なワークショップやセッションに参加しました。
23歳:一般企業で会社員に
大学を卒業たあとは、普通に企業で働きましたが、会社員として働いている期間にも、学生時代の友人から「学生の頃、性に関する相談やってたよね?ちょっと相談があるんだけど...」といって相談が寄せられることが時々ありました。
いい歳の大人でも性のことを迷ったり悩んだりする。中高生や大学生ならもっと悩むよね。
と思ったりしていた覚えがあります。
26歳:相談と検査ができる街の保健室の事務局長に
あるNPOの事業事務局長として、渋谷の街の中に、相談と検査ができる街の保健室を出店しました。当時はこのサービスのことを「ドロップインセンター」と呼んでいましたが、今日的なセンスでいうと「ユースクリニック」ということになるでしょうか。
夏休みの7月20日頃から60日間、空き店舗を借りて営業しました。大学生のボランティアスタッフや、看護師の資格を持つ専門職スタッフなど、多くのメンバーが事業を支えてくれました。500円という安い価格で、保険証無しで性感染症の検査を受けられる場所とあって、60日間で延べ300人近い人たちが利用してくれる拠点になりました。
ボランティアさんたちの相談のためのスキルアップトレーニングにもそれなりに時間をかけましたが、相談のためのスキルやマインドの習得は簡単ではないということを肌身で感じていました。
26歳(同じ年の秋):Link-Rを創業
街の保健室は最初から2か月間で閉めることが決まっていたのですが、自分でも何かできることがあればと思い、同じ年の秋に「若者世代にリプロヘルスサービスを届ける会Link-R」という組織を立ち上げました。「性の健康イニシアティブ」の前身となる組織です。
中高生、大学生やその保護者、学校の先生や地域の大人に性教育的な講演やワークショップをしていました。
また、街の保健室の経験もあったので、家でも学校でもない第3の居場所(ザ・サードプレイス)を作ることを大きなテーマとして、放課後の居場所づくりの活動にもトライしてきました。
こうした動きの中でも、多くの人の相談に対応してきました。
29歳:性の健康世界学会(WAS)との出会い
色々なご縁があって、WAS(性の健康世界学会)という国際研究者組織の活動に参加することになりました。WASは「性」に関する世界最大の研究者組織で、日本を含む世界中にネットワークがあります。
WASの公式委員会であるYOUTH INITIATIVE(若者委員会)の日本人初のメンバーに就いたり(2019年に36歳で退任するまで7年間続けました)、
YOUTH INITIATIVEの企画として「若者円卓会議」のファシリテーターをやったり、
世界性の健康デー(9月4日)前後に世界各国で開催される記念イベントの東京大会の運営に携わったり、しました(現在は東京大会の開催責任者を務めています)。
30歳:両親学級を開始
思春期保健をずっとやってきましたが、30歳の時に、産婦人科の病院などで、もうすぐ子どもが生まれて来る夫婦に向けて、夫婦のコミュニケーションのワークショップをするという事業も始めました。
思春期世代の相談を聞いていて、「小さいころから受け続ける親からの影響の力は計り知れない。思春期の問題を考える時、親子の関係性に関する話を抜きにはできない」と思っていました。
そこで、もうすぐ子どもが生まれてくるタイミングにいるご夫婦に向けて、夫婦のコミュニケーションについて考えることが子どもへの影響+子どもの未来への影響を考えることにもつながるということを伝えたいと思い、両親学級を始めました。
この活動は5年間続け、延べ1000組以上の夫婦と一緒に、夫婦のコミュニケーションについて考える時間を作りました。
36歳:セクシュアル・プレジャー宣言との出会い
WASの世界大会で新しい国際文書である「セクシュアル・プレジャー宣言」が採択されました。「性の健康」と「性の権利」の両翼で語られていた事柄に第3の軸である「セクシュアル・プレジャー」が加わり、これら3つを三角形の関係で理解するように今後はなっていくと思われます。またこの時、同宣言の公式邦訳チームにも名を連ねました。
37歳:性の健康イニシアティブを立ち上げ
26歳の年から11年間続けてきた思春期保健団体「若者世代にリプロヘルスサービスを届ける会Link-R」を組織変更して、「性の健康イニシアティブ」を立ち上げました。
思春期保健の活動に幕を下ろし、それまでに培った経験や知見を次の活動に活かそうという、そんな転機となりました。
思春期保健に目を向け続けたワケ
思春期という年代に注目してきました。大人に向けた発信の機会や大人の相談を聴く機会もありましたが、何らかの形で必ず思春期の人に寄与するように考えてそういった活動をしてきました。
それは、思春期(10歳から19歳)という時期が、人生の中でとても大事な時期だと思っているからです。
10歳は小学4年生くらい。身体が大人になるための変化(第二次性徴)を始め、心も体も大人になるための準備がだいたい19歳くらいまで続くとされています。この時期に身に着けたものはよくも悪くも一生モノになります。
生まれてから10年間のことを整理して、未来への力に変えていくための思春期という時期。もし、生まれてからそれまでに何か負の経験をしていればそれをきちんとケアして未来への準備をするのもこの時期です。
そういうわけで、思春期の10年間はものすごく大事な10年間だと思っていましたし、今も思っています。それが思春期に目を向け続けたワケ、です。
性の健康イニシアティブへの組織変更
そこまでの想いが思春期にありましたが、それでも思春期保健の活動に幕を下ろし、性の健康イニシアティブを立ち上げました。
ここ数年、性教育という活動が注目され、追い風が吹いています。性教育をしたいという人が増えています。前身団体である「若者世代にリプロヘルスサービスを届ける会Link-R」を始めたころは、性の話をしていると奇異の目で見られ、「うちの子に性の話なんてしてくれるな」という時代でした。その頃から見ると隔世の感があります。
性教育をしたい人の数が増えて、自分が頑張る必要がなくなったという実感がありました。その分、それまで培ってきた経験を次の世代に伝えたり、日本ではほとんど注目されていない「性科学」や「性の健康」といったものを推進する活動をしたいと思ったのです。
性の健康イニシアティブは始まったばかり
冒頭にも書いた通り、
ビジョン(実現したい世界像):
自分の生まれついた在り方が生きづらさの理由になるのではなく、誰もが自分は自分に生まれてよかったと思える世界
ミッション(ビジョン実現のために果たす使命):
どこに行っても性の健康を享受できるように社会環境をアップデートする
を掲げ活動している性の健康イニシアティブは現在、
1)対人援助職向けの「性の話題を扱うためのアティチュード講座」の開催
2)性の健康について理解を深めるためのWEBメディア「Sexual Health NAVI」の運営
のふたつの活動をしています。
活動(事業)は、ミッション達成のための具体的なアクションであると捉えています。対人援助職向けの講座開催とWEBメディア運営だけではミッション達成が難しいことは明白です。性の健康イニシアティブはまだまだ生まれたばかりの組織ですが、明確なるビジョン(実現したい世界像)とミッション(ビジョン達成のために果たすべき使命)のもと、ひとつひとつ新しい活動を繰り出し、ミッション達成を図っていきます。
自分の生まれついた在り方が生きづらさの理由になるのではなく、誰もが「自分は自分に生まれてよかった」と思える世界をビジョン(実現したい世界像)に掲げる「性の健康イニシアティブ」の立ち上げ人/代表です。ビジョンに共感してくださる方はリアクションお願いします。