【中国軍事動向】バードストライクからの生還:空軍パイロットの生死を分けた37秒
中国空軍のあるパイロットが2月23日、第一線に復帰し、半年ぶりに戦闘機に搭乗し、訓練を行った。男の名は王建東、中国南部地域や南シナ海を管轄する南部戦区の空軍所属のパイロットだ。
遡ること172日。王建東がいつものようにJ-10戦闘機「635号機」を操縦し、離陸してほどなくして比較的大きな鳥がエンジンに飛び込んでしまった。操縦席のスクリーンには地上の地図画像とともに「警告」という文字が点滅し、無機質な女性の声が幾度も「警告」と繰り返した。王建東は焦る気持ちを押し殺しながら引き返すことを考えたが、機体はもはやその能力を持たなかったという。そこで住宅地を避けて人がいない機体を不時着させる場所を探した。
あいにく眼下には広い空間を見つけることは難しく、王建東は3回にわたってわずかに可能だった機首向きを換えて住宅が密集していないわずかの空間に機体を向けることができた。その間わずか37秒。後から判明した事は王建東の機体が鳥に衝突したのはわずか高度272mで機体の速度は時速545キロだった。操縦マニュアルでは操縦士は非常事態に遭った際には高度2000m以下であればパラシュートに脱出して良いということが決められていた。王はそれを遥かに下回る高度で最後まで機体を操縦し、住宅地を避けて墜落させたのだった。最終的に本人はパラシュートで脱出したが、レバーを引いた時の高度はわずか75.9mしかなかった。脱出の瞬間は気を失ったが、気を取り戻すと地面までは数メートル、コンクリート製の農家の小屋にぶつかりそうだったために体を避けたものの間に合わず、片足がぶつかり骨折した。最終的には機体は水田に墜落し、地上でも犠牲者が出ないで済んだ。37秒の間に王建東が行った動作は22回の操作、3回の方向転換は「まさに教科書の手本のような動作」と称された。南部戦区空軍の彼が所属する旅団は12月8日、王建東に「1等功」を授与した。
バードストライクは中国軍に限らず、世界の空軍、いやあらゆる航空機を運用する上で避けるべき重要な課題である。王建東のケースのように航空機のエンジンを損傷させる場合も少なくない。
戦闘機がわずか1羽の鳥に墜落させられるのは皮肉であるが、まさにこうした事故は少なくないため中国空軍では軍用飛行場に鳥対策専門のチームを設けているほどである。
王建東は現在も戦闘機を操縦して任務についている。彼の所属する旅団がどの地域なのかは不明であるが、今日この時も南シナ海を含む南部地域空域の巡視任務に就いているに違いない。
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