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メディアの話 昆虫と料理とキャラクタービジネスと。
先日朝に、養老孟司さんにお話を聞いて、夜、キャラクタービジネスの話を南青山でした。
で、全く関係ないこの二つが話しているうちに繋がった。
日本は、なぜ圧倒的に多種多様なキャラクターが誕生するのか。
アメリカを見るとわかるけど、この点においては、恐ろしくしょぼい。
アメコミがそうだけど、ノラクロ並に古いヒイお爺さんお婆さんを延々使い回しする。
日本は、というと、これはテレビとおもちゃメーカーが手を組んで、ウルトラマンや仮面ライダーやスーパー戦隊、ガンダムシリーズなど、シリーズ化されると毎年、ヒーローも世界も更新され、延々と新しい怪獣や怪人やキャラクターが登場し続ける。
おもちゃビジネスとセットというのはもちろんだけど、そもそもなぜあんなに無尽蔵にキャラクターを作り続けることができるのか。
ゲームもそうである。ポケモンが典型である。
それに比べると、ディズニーなどにしてもキャラの数は恐ろしく少ない。
アンパンマンなどは2300を超えている。ギネス入りだ。
で、きのう気づいた。
養老さんのところで、大量の昆虫を見て。
虫だ。
虫の数だ。
ビルの中で話しているインチキ生物多様性ごっこじゃない、マジの生物多様性。それは、日本における虫の種類と数の多さである。
で、私たちはそれが大好きなのだ。上野でモネ展を見ると、モネは執拗に水辺の柳と睡蓮と橋と空気と反射を描き続けるけど、彼の絵に、虫も魚もいない。
ところが、同時期に開催されていた田中一村の絵は、植物画の中に、鳥や昆虫が大量に紛れている。しかも雑じゃない。正確である。カケス、ルリカケス、ヤマセミ、カワセミ、アカショウビン、アキアカネ、クロアゲハ、アゲハ、ツマベニチョウ、イシガケチョウ、ウマオイ、アサギマダラ。
植物を描くと否が応でも虫や鳥が目につくのだ。
氷河に覆われていた時代の長いヨーロッパは、昆虫に関しては恐ろしく貧しい。そもそもあんまりいない。
一方、日本は虫だらけである。だから必然的に虫と子供の頃から付き合う。東京科学大学の学生の8割が昆虫採集の経験がある。そんな国、多分世界で日本だけである。
で、この虫の多さが、そのままキャラクタービジネスに直結する。
なんといっても仮面ライダーだ。
主人公は「バッタ」である。しかもトノサマバッタ、種類まで確定している。怪人も、クモやスズメバチやカマキリやカブトムシやシオマネキや・・・昆虫に加え、クモや甲殻類、魚類、軟体類など、日本の生物多様性の豊富さが、キャラクター作りに直結している。
ウルトラマンにしても、モチーフが昆虫の怪獣は数多い。筆頭はセミをアレンジしたバルタン星人。クワガタとアリジゴクを混ぜたアントラー。ゴキブリをモチーフにしたキーラなど、こちらも枚挙にいとまがない。
ハンターハンターも、キャラが多種多様になる瞬間は、キメラアント=アリンコから。
そしてポケモンである。ポケモンはそもそも開発者の田尻智さんの町田の少年時代のカブトムシクワガタムシザリガニ取りと飼育の経験が、ゲームの創立に直結している。当人がそう語っている。必然、ポケモンもまた、生き物のモチーフが延々とキャラクター数の拡大に直結している。
だから怪獣も怪人もポケモンもアンパンマンも図鑑というメディアが成立するのだ。
日本が世界で圧倒的に力のあるキャラクタービジネスの根っこは、日本の機構風土に裏打ちされた昆虫を中心とする生物多様性にあるのだった。
さらに言うと、この生き物の多様性、多神教の世界が、料理の多様性と重なると、アンパンマンワールドのキャラクターの多様性につながる。ギネスに載っている2300のキャラクターの大半は「食べ物」由来だ。
日本でなければ、2300は出てこない。和洋中インドにタイにマレーシアに。あらゆる国のあらゆる料理が私たちのソウルフード。
その節操のなさが、食の多様性につながり、それが結果として、アンパンマンのキャラクターの多様性につながる。
次の企画のイメージが固まった。
そこのあなた、企画、お持ちしますw
養老さんや田尻さんにインタビューしたい。
まずはあらゆるサブカルチャーに潜む虫を採集してみよう
あの本もこの本も例の本の書かなきゃだけどw