メディアの話その147 細田守とメタバースと川と坂と。
改めて細田守さんの「竜とそばかすの姫」をみる。
劇場でも、そして動画配信でも何度も見ているのだが、現在調べている「メタバース」とリアルについて、細田作品は欠かせないのでもう一度見る。
この作品のランドスケープの主人公は、一見U=メタバースなんだけど、実は違う。
川だ。
徹底的に川のランドスケープの物語。
主人公すずの住まいは、四国の大きな川の支流の小流域の上流部。
ここから降って石橋を渡って、麓の学校へ。
学校から家に戻る日常は、大きな川沿い。そこを何度も往復する。
すずが母親を亡くしたのも、川。
同じ川が、泳ぎ達者で子供を救った母を奪う。
竜がリアルに暮らすのは多摩川沿い。多摩川園あたりの坂道の家。
この場所を見つけるのは、川にずっといるカヌー部を一人で立ち上げた同級生。
川沿いで育ち、川沿いで遊び、川に母を奪われ、引っ込み思案になった主人公が逃げ出すのは、避難所は、メタバースのU
そこでもう一人の自分ーアバターのベルになり、
そこで50億人の歌姫になる。
けれど、彼女を解放するのは、50億人のスターになったこと、じゃない。
自らを晒し、現実の多摩川に向かい、ずぶ濡れになりながら、リアルの竜を川沿いで救う。そのプロセス。
ラストシーンはいつもの川。
考えてみれば、細田守さんは、徹底的に坂道と流域地形を自覚的に描きてきた。
『時をかける少女』の舞台は、目白台と落合、神田川と妙正寺川沿いの坂の町。坂道を下ると時をかける。(カワセミのいる街です)。
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07CLP4ZD2/ref=atv_dp_cnc_2_2
『サマーウォーズ』も川沿いの河岸段丘の縁の大邸。
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07CLQLV7Y/ref=atv_dp_cnc_0_2
『おおかみこどもの雨と雪』も棚田の里。
『バケモノの子』は渋谷の谷。
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07CLJSCV6/ref=atv_dp_cnc_3_5
『未来のミライ』は横浜根岸・杉田・金沢・横須賀までの16号線。坂道の家と、トンネルと、台地と海沿い。
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07MDDKFDS/ref=atv_dp_cnc_0_
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「スタジオ地図」というのが細田さんの会社の名前。
彼の物語は、常に坂道・川・流域構造のランドスケープを自覚的に繰り返しながら描くことで、できている。
そして、世界で誰よりも早く「メタバース」を描きながら、サマーウォーズでメタバース時代、SNS時代を見事に映像で予言しながら、「もう一人の自分」ではなく、「たった一人の体を持った自分」がリアルなランドスケープに回帰する物語を綴っている。
アジールとしてのメタバースを否定せずに。
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