「ひなたホリスティックチーム」の発起人である、山﨑結花さんと私が出会ったのは、2021年の夏。
同じ発起人のAcoさんに誘われ、初めてAcoさんの「ホリスティックサロン&スペース風香」を訪ねたときのことだ。
玄関先を箒で丁寧に履く結花さんの姿を見て、「ちゃんとしてそうな方だ!」という第一印象を抱いた。そして、とても痩せていらっしゃるな、と思った。
やがて私も少しずつ知ることになるのだが、その頃の結花さんは、かなり症状の重いがんを患った後で、治癒の真っ只中にいたのだった。
あれから3年。
今では、アイドルの推し活を生き生きと語る結花さんがいる。
その健やかな姿に、人の身体の、人の心の、不思議さを思う。
『natural green』の
丁寧なお手当
結花さんは、びわ温灸やアロマオイルを使ったケアサロン『natural green』を宮崎市内にある自宅の一室で営んでいる。
問診票を使ったカウンセリングの後、「びわ温灸」のお手当てをしてもらった。
「びわ温灸」とは、専用器の温熱器を使って、びわの葉のエキスを身体に浸透させるもの。
温熱器を地肌に当てて、熱い!と感じる一歩手前で離す……というのを、足の先から頭まで施していく。
結花さんのつるつるとした滑らかな手が、私の身体をそっと優しく、丁寧に触れていく。
タオルを身体にかける時は、ゆっくり柔らかく、風が起きないように。
こんなふうに自分を丁寧に扱ってなかったな、たまには自分を丁寧に扱ってあげなくちゃ、と思った。
施術を受けた日はとても寒い日だった。
60分ほどの施術が終わった後は、身体が温まり循環が良くなったのだろうか、すぐにトイレに駆け込んだ。
施術後は、結花さんお手製の野草茶をいただきながら、しばしお話を。
結花さんの話し方は、穏やかで優しい。けれど、とても的確で整理されている。
きっと、相手が求めていることの全体像を察することができて、言語感覚にも優れているのだろう。
こちらがたずねたいことを、終始わかりやすい言葉で段取りよく伝えてくれた。
アロマがくれた
癒やしと希望
結花さんが『natural green』を始めたのは20年以上前、40代前半の頃。
きっかけは、アロマオイルとの出会いだと言う。
アロマは、悩んでいた次男の喘息にも効果を発揮し、結花さんはアロマの魅力に魅せられ、のめり込んでいく。
結花さんは35歳で結婚し、立て続けに3人の子を妊娠出産した。
幼い子どもたちの育児に追われながら、自宅マンションでアロマのワークショップなどを始めたという。
想像しただけでも、目が回りそうだ。
サロンを始めて数年後、結花さん45歳の時に乳がんが発覚する。
育児中は、大量の予期せぬTO DOがのしかかる。
こなしてもこなしても次から次へとやることが追いかけてくる無限ループの中で、ようやく見つけた自分だけの喜び。
その喜びを味わうためなら、どんな無理だってするし、無理を無理とも思わなくなったのだろう。
結花さんの予感は的中し、故郷・鹿児島の専門病院で手術をすることに。
手術中にがんが転移していることもわかり、リンパ節を摘出。
結果的に、ステージ2の乳がんと診断された。
自然をそのままに。
びわ温灸の知恵
鬱々とした気持ちと、術後の体力低下、自由に動かない腕を抱えたまま、結花さんは忙しい日常に戻っていった。
主治医からは化学療法を勧められたが、拒んだという。
温熱療法や食事療法など様々な療法を調べていく中で、結花さんは、末期の子宮がんを自然療法で克服し出産した女性が、宮崎で「びわ温灸」をしていることを知る。
びわ温灸は、自分だけでなく、家族にも大いに役立った。
アロマでも収まらない次男の喘息の発作、長男の捻挫の腫れ、夫の尿管結石の痛みも鎮めた。
びわの葉はからだにいい、というのは私も耳にしたことがある。
でも、なんとなく「“おばあちゃんの知恵袋”程度の話」、という気がしていた。
悪くはないだろうけど、効果はさほど実感できないんじゃないのかな、と。
私は日頃から、人体の秘密に迫るテレビ番組をよく見ているのだが、見続けるほどに、“人体ってすごい!” “生命ってすごい!”と思わされる。
例えば、人間にとって悪い印象のある「がん細胞」の遺伝子も、生命誕生の瞬間や成長にとても大きな役割を担っている。
人体の組織に限らず、人と植物も、そしてあらゆる存在が絶妙なバランスでお互いを支えあって存在しているようなのだ。
友が教えてくれた
自ら引き寄せる力
「神様」という表現をした結花さんだが、特定の宗教を信仰しているわけではない。
幼い頃から、神様のような“見えないもの”を信じていたかというと、そうでもないという。
子どもの頃は体が弱かったが、OL時代は旅行会社に勤務し、バブルを謳歌しバリバリ働いては、しっかり遊んでいたという。
サロンの部屋の本棚には『第十の予言』などスピリチュアルな本がいくつか並んでいる。
『第十の予言』を含む『聖なる予言』シリーズは、共時性の感覚や霊的成長の大切さを、冒険小説を読むような感覚で伝えてくれる作品。
90年代後半に、アメリカや日本でベストセラーとなった。
イケイケOLだった結花さんが、いつから、そういう世界へ関心を持つようになったのだろうか。
人との出会いが、結花さんに新しい気づきを与えてきた。
命に向き合う人たちのインタビューを掲載している雑誌『Messenger』を発行する杉浦貴之さんもその1人だ。
杉浦さんは、28歳の時に特殊な腎臓がんになった。
医師から余命宣告をされながらも、両親の愛情に支えられ、やがて、がんを克服した方達へのインタビューをまとめた雑誌を制作するように。
結花さんは自分ががんになる前、たまたま杉浦さんと出会い、『Messenger』の購読という形で彼の活動を応援し続けてきたという。
結花さんの乳がんが再発したのは2020年のコロナ禍。
今回は、拒んでいた抗がん剤も受け入れた。
しかし、状態はひどくなる一方で、食事は喉を通らなくなり、筋肉も落ち、車椅子を必要とするほどに。骨や肺にも転移していたという。
抗がん剤の効果はなく、ホスピスを勧められた。
一時帰宅をした際に、自宅にいると痛みが引くことを感じた結花さんは、病院に戻らず、自宅看護を受けることを選択。
そして、民間療法を取り入れながら、少しずつ少しずつ状態が良くなっていった。
身体のケアの次に結花さんが意識したのは、自分が好きなことを自分にさせてあげることだった。
身体が元気になるのを待つのではなく、自分が少しでも楽しいと感じられることをやってみる。
そうすればやがて、元気=本来の状態になっていく。
望む未来に意識を向けていれば、現実は自ずとそちらに向かっていく。
それは、友人のオバンや『第十の予言』が伝えていたことと同じだった。
自分が自分を創り出す
着物を着て遊びに出かける「きもの部」を皮切りに、結花さんとAcoさんの周囲で、大人の部活動が同時多発的に始まった。
薬草茶を作ったり野山を散策したり、海辺で砂浴をしたりする「薬草部」。
畑や田んぼで作物を作り、収穫物をいただく「はたけ部」。
味噌などの発酵食品を作る「発酵部」など。
そんな流れの中で誕生したのが、「ひなたホリスティックチーム」だ。
私は、重い病気にかかったことはないが、子どもの頃からたびたび皮膚疾患に悩まされてきた。
関東から宮崎に引っ越して半年近く、蕁麻疹が止まらなかった。
いくつか病院をあたったが、医師や薬の力で蕁麻疹は治らなかった。
ものすごい痒みに苛立つだけでなく、何も解決してくれない医療にも苛立った。
そして何よりも、訳のわからぬ身体を持つ自分に腹が立った。
それから7〜8年が経って。
皮膚疾患で自分を表現していたんだな、内側に秘めた怒りを蕁麻疹にして伝えていたんだな、と気がついた。
私の場合、西洋占星術を学ぶことをきっかけに、自分自身と向き合う機会を得た。
ホロスコープにあらわれる自分の特性を見つめながら、「ああ、だからか」と自分を理解し、「そうかそうか、そりゃ仕方ないね」と自分を受け入れた。
自分を理解し受容するほどに、自分への憤りのようなものも徐々に薄れていったように思う。
結花さんは自身の経験をいかし、おもに病気療養中の方に向けて、「養生リトリート」という名の滞在型ケアをAcoさんと一緒に提供している。
Acoさんのサロンに宿泊してもらいながら、その人に合ったお手当や食事を提供し、ゆっくり心身と向き合ってもらう時間を作っている。
「好き」を力に、楽しい毎日を
この頃は、「好きなことしかしない」をモットーにしている結花さん。
仲間と楽しんでいる部活動も、決して無理はしない。
みんなが行くからとか、申し訳ないからというような気遣いから、参加したりはしない。
本当に行きたい!と思った時だけ参加することにしている。
要は、自分に素直に、だ。
今回、話をうかがいなから、結花さんはとても素直な人だな、と感じた。
結花さん自身も語っていたのだが、どこか子供っぽいというか、純真でストレートで、ねじれていないのだ。
2度のがんを経て、生まれたままの自分、元気な自分に原点回帰しているのだろうな、と思った。
インタビューさせてもらったのは、東京ドームで開催された「Number_i」のコンサートから帰ってきた翌日だった。
とても楽しそうに話す結花さん。
恐怖と苦しみの日々から抜け出して本当に良かった、と思う。
そして何より、自分自身を心からエンジョイできるようになって良かったな、と思う。
そんな結花さんの楽しむ姿は周囲を巻き込み、にわかにNumber_iのファンを増やしているそうだ。
最後に、『natural green』に来てくれる方に伝えたいことは?と聞いてみた。
山﨑結花さんのサロン
natural green
宮崎市大王町
女性専用 要予約
アロマトリートメント 4,000円~
びわ温熱療法 3,300円
(2024年4月現在)