夏の日の午後の幽霊

うだるような暑さ。
今年の夏は去年に増して暑かった。
昼過ぎに出先から帰ってくると、もわぁ~っとした室内にゲンナリ。
エアコンをフル稼働させ、テレビを付け、「ながら見」をしながらしばしの我慢タイム。
すると、驚くことにテレビの「音」が暴走しだした!

正常なテレビ音 ⇒ 無音 ⇒ 正常なテレビ音 ⇒ ノイズ(砂嵐的な) ⇒ 無音 ⇒ ノイズ・・・。

ランダムに繰り返される「音」暴走に、ついに夏の暑さで機械もバグったかと、突然のことに恐れおののきながら思った。
別の日。
妻が恐怖の顔を浮かべながら話してきた。

「ねぇ、今日の昼にテレビの音が切れたり入ったりしたんだけど!!」

あー、またか・・・。
「そうそう、おれもこの前それあったんだよね!」

しかし、それだけではなかった。

「しかもね、急にカセットプレーヤーが動き出したんだよ!モクモク村のけんちゃんがいきなり始まったんだよ!どういうことッ!?」

どうやら本当に何か正体のわからないものの仕業だと考え、本気で怖がっているかのようだった。
ちなみに「モクモク村のけんちゃん」とは、わたしが子供の時にお世話になっていた、ブリタニカの児童向け教材(英語学習のための紙芝居)だ。
それのカセットをずっとプレーヤーに入れたままでいて、それがどうやら勝手に再生されたのだ。
勝手に再生されたのが、「モクモク村のけんちゃん」のどのシーンかによってはかなり怖いだろうなと思った。
やはり家電たちは暑さで狂ってしまったのだろうか・・・。
狂った結果、図らずも人間を怖がらせるような現象を起こしてしまったのだろうか。

まるで幽霊のように。

いやいや、なんのことはない。
暑さなどでバグったわけではなく、ただただ機械たちは劣化してきただけなのだった。
自宅ではヤフオクで落札した中古(90年代製)のプリメインアンプに、新品で購入したアクティブスピーカーを繋げている。
チャンネルは、テレビのほか、レコードプレーヤー、CD/DVDプレーヤー(中古)、VHSプレーヤー(中古)、カセットプレーヤー(中古)だ。
謎解きをすると、このプリメインアンプのチャンネルのつまみが劣化して(ホコリが入り込んで接触不良?)、勝手につまみが動くという現象が起きていただけなのだった。
それと同じく、ヤフオクで落札した中古のカセットプレーヤーも劣化により勝手に再生ボタンが動いたのだろう。

わたしは幽霊などを見たり感じたりできる素質がなく、にもかかわらずそれらの存在を信じている。
なぜなら、そう思っていた方が人生楽しいと思うからだ。
そのため、妻にはこう言った。

「この部屋・・・、いるんだろうね。なんかイタズラが好きなんじゃない?」

イタズラ好きのグレムリンのように。

#私だけかもしれないレア体験

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