好きなジュール・ヴェルヌ作品3選【SF読書感想文詰め合わせ】
大型連休も後半戦が始まろうとしていますね。そんなお休みのお供におすすめしたい、ジュール・ヴェルヌのSF小説を3冊ご紹介します。
月世界へ行く
私がこの本を読んだきっかけは、実の父が子どもの頃に読んだ本の一冊に挙げていたから。曰く、「男三人が大砲に乗って月を目指すとかいう馬鹿げた話だが、今ほど潜水艦も宇宙飛行も身近に感じられなかった時代には、とにかくロマンのある話だと思った」。
父が言った通りの内容で、凸凹トリオがとっても大きな大砲に乗って月を目指す話。ある意味で密室劇とも言える。彼らのやり取り、窓の外から見える景色の描写……。これを読んで心が躍るのは、子どもだけではないはず。人間の想像力、ジュール・ヴェルヌの表現力。技術の進歩は必ずしも人間の進化だとは言い切れない。
それにしても、約15ページを計算式の説明に使ったり、延々と月の表面の描写を書き連ねたりと、”紙の本”のスピード感は本当にいい。もしこれがweb小説だったら、退屈ですと一蹴されてしまいそう。
そう言えば、映画『月世界旅行』を題材にしたドキュメンタリー映画もあったとか。カラーで見るのはなんだか不思議な心地がする。
また、ディズニーランドパリのStar Wars Hyperspace Mountainも、元々はこの『月世界へ行く』を題材としたアトラクションだったらしい。
建屋のレトロフューチャーな雰囲気は、今も健在と聞いてホッとした。私はスターウォーズも大好きだけれど、ジュール・ヴェルヌ時代も見られるものなら見てみたかった。
八十日間世界一周
偏屈貴族のフォッグが賭けをして、世界一周の旅に出るお話。こういう上司の下で働く人は大変だ……と思うけれど、従者のパスパルトゥーもなんやかんやで楽しんでいる感がある。それがいい。
今でこそ、ネットで飛行機を調べて乗り継ぎの便がいいのを予約して、宿はAirbnbで云々……みたいなことが出来るけれど、物語の舞台は1872年。それでもフォッグの持ち前の細かさや土壇場での胆力、偶然の出会いなどでぐいぐいと旅が続いていく。
私は本作を、日本がロックダウンだなんだと騒いでいた外出自粛ムード全開の時期に読んだので、一緒に旅をしている気分でだいぶ心が救われた。
既に映像化もされているこのお話、最新ではイギリスのデイヴィッド・テナント(ドクター・フーやハリー・ポッター、グッド・オーメンズで知られる)主演で全8話のドラマになって放送された。2021年12月にベルギーやイギリスで放送、season2も予定されているとか。
私はデイヴィッド・テナントのファンでもあるので、ぜひ日本でも見られたらいいなと思う。
地底旅行
ひたすら地底へ向かって徒歩で降りていく話。それに尽きる。それに尽きるのにめちゃめちゃドキドキする。『月世界へ行く』とは真逆に、延々と続く闇の世界、殺風景なはずの洞窟の中……。それなのに心がときめく。私は確かに鉱物や地層が好きなので、そういう点から多少好感度が上がりやすいのかもしれないけれど。
偏屈な教授と少し弱虫な甥っ子(子どもではない)、無口なガイドの3人旅。読み終わった時、「あー、面白い旅が終わっちゃったよ!」と名残惜しさを覚えた。
ジュール・ヴェルヌの作品は、旅に出るまでのわちゃわちゃも面白いし、道中の登場人物たちの関係性もいい。そこへ世界観の細やかな描写があるのだから、もう何もかもがいい。本作は、地底という地味な(に思える)舞台であるからこそ、その良さが引き立っているなと感じた。
本作は日本のディズニーシーでお馴染み「センターオブジアース」のモチーフ。ジェットコースター大好きな私には、欠かせないアトラクションだ。
アトラクションの方は、恐らく色んな物語の組み合わせで出来ている。『地底旅行』には、「センターオブジアース」に出て来るネモ船長はいない。彼は『海底二万海里』(こちらもジュール・ヴェルヌ作品)の登場人物。”ネモ船長の研究成果一式”といった感じで世界観を構築しているのだろう。
読むと乗りたくなり、乗ると読みたくなる。心が、ディズニーシーと小説の間で行ったり来たりしてしまう。
やっぱり、SFはよいものですね。旅に出にくい状況だとしても、まだ知らない場所へ連れ出してくれますから。
noteにログイン中の方はもちろん、ログインしていなくてもこの記事に「スキ(♡)」を送れます。「スキ」を押して頂くと、あなたにおすすめの音楽が表示されますので、お気軽にクリックしてみて下さいね。
他の読書感想文は、こちらのマガジンからどうぞ。
許可なくコンテンツまたはその一部を転載することを禁じます。(オリジナル版、翻訳版共に)
Reproducing all or any part of the contents is prohibited without the author's permission. (Both original ed. and translated ed.)
© 2022 Aki Yamukai