思い出の飴
今日、大雨で体調も悪くテンションもだだ下がりのなか、明日からの遠出のために前倒しされた母の通院の送り迎えをした。
雨の日に車を運転するのが本当に嫌いで、制限速度までしか怖くて出せない。そんな感じで、雨にビビり散らかして運転している私を哀れに思ったのか、母が帰り道にある飴屋さんに寄って買い物をしようと言ってきた。何故か私の住んでいる街には、国道ではない田舎の道の途中で、周りはほぼ田んぼと民家という場所に飴屋が建っている。
母は少しでもテンションを上げてほしいから、私にアメを与えようとしているのである。アメとムチでまさしく飴を与えられるというのはダジャレとして及第点にも届かないが、飴は好きなので買う前からちょっとテンションが上がってしまった、我が事ながらなんとちょろい事か。
さて、なぜその飴屋が私のテンションを上げるのかというと、単純に思い出の味だからとしか言いようがない。
写真のなんの変哲もない飴、見た目からつけられたのか「どんぐり飴」というのだが、昔ながらのシンブルな砂糖の飴である。何味かと言われたら、昔ながらの素朴な砂糖を煮詰めた飴の味がするとしか言えない。
このどんぐり飴、私の小学生の時、学校行事の冬のロードレース大会という長距離走のあとに毎年ご褒美として教室で二粒づつ貰えたのだ。
まさしく長距離というムチのあとに、与えられるアメの飴である。
それが小学校の6年間つづくと、なんとなく、これは特別頑張ったときにもらえる美味しいものという刷り込みが私の中でされてしまい、思い出の味としてたまに無性に食べたくなってしまうのである。
大学生のときに地元を離れたときなんて、どこにでもあるはずの味の飴なのに、この飴が食べたい!!送ってくれ!!と頼んでまで送ってもらうくらいには思い出の味で好きな食べ物なのだ。
さて、そのどんぐり飴を求めて飴屋に行ってきた。
飴屋なので、もちろん他の味の飴もたくさんある。塩飴や柚子飴は道の駅やSA、姫路の百貨店やアンテナショップでも売っているので、むしろ飴屋としては塩飴や柚子飴の方を推しているのかもしれない。
他にも普通のフルーツ味や、地元の特産を使った醤油飴やもろみ飴、酒粕飴や梅ジャム飴、柿飴や変わり種の牡蠣飴(牡蠣の風味と醤油の味らしい)なんかも売っている。まめドンという、どんぐり飴の中に豆の入った飴だったり、板状の飴を砕いた割り飴といった種類もあり、小さな飴屋だがなかなかに種類豊富である。
本来なら色んな種類に悩むのかもしれないが、私の場合はどんぐり飴一択である。かなり以前は袋にゴロゴロっと纏めて入っていたが、今回買ったものは個包装になっていて数個だけ鞄に入れて持っていけるようになっていたので大容量のものを買ってしまった。
母も、私につられてあんこ飴や割り飴を買っていたので、良い買い物が出来たと満足をして、帰りの土砂降りの雨の中の運転も多少は気が楽になった感じがした。
他にも好きなお菓子と言ったら枚挙に暇がない。チョコもケーキもクッキーも羊羹もマカロンも大福も、お菓子は何でも好きだ。思い出だってたくさんある。
ただ、お菓子の中で、嫌いな長距離を走って喉の奥が痛くて、口の中が血の味がするくらい走りきったあとに渡されたなんの変哲もない、昔ながらの飴はまた格別に思い出の味のお菓子なのである。
食べ終わったら、また買いに行こうかなぁ。