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湘南ベルマーレの問題点を考える。サガン鳥栖戦レビュー

1.失速の部分

サガン鳥栖は前半30分以降からショートパスでのビルドアップをせず、湘南の右サイドの裏にロングボールを放り込むようになります。湘南はこの試合、ハイプレスを仕掛け、縦にコンパクトな守備陣形を組んでいたので、ディフェンスラインの裏にはスペースがあります。また、湘南の右サイドは173cmの舘選手が守るサイドなので、ロングボールを放り込まれると簡単に跳ね返すことができません。鳥栖はショートパスで前進するよりも、単純にロングボールを使ったほうが前進できると考えたのでしょう。対して、湘南はこのロングボールの処理に苦慮します。放り込まれたボールを回収したとしても、今度は鳥栖のハイプレスが襲いかかり、簡単にマイボールに出来なかったからです。

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両チームがハイプレスを仕掛けた結果はスタッツにも如実に現れています。両チームとも走行距離120kmを超え、攻守においてインテンシティの高い試合だったと言えます。さて少し話を戻し、鳥栖が湘南にハイプレスを仕掛けた結果について話していこうと思います。まず、鳥栖がロングボールを放り込みハイプレスを仕掛けたことに対して、湘南は上手くビルドアップできなくなりました。前節の横浜FM戦や前々節の川崎戦であれば、回収したボールをなるべくショートパスでつなぎ、自分たちの時間を作ろうとしていたように思えますが、今回はそのような兆しがなく、回収したらウェリントン選手に、もしくはGKの谷選手に戻してウェリントン選手にロングボールを放り込みます。そのロングボールはことごとく相手が回収し、自分たちの時間を全く作れなくなりました。これが湘南の失速の部分であり、問題点と言えるでしょう。

2.ボール回収後のビルドアップ

選手コメント MF28 平岡 大陽
(後半の戦いについては?)
後半の序盤は守りつつもカウンター的な感じで攻めることもできたんですけど、でも時間が経つにつれてしんどくなってきて、一方的にロングボールを蹴られてロングボールを返すという感じになってしまった。最近そういうことが多いので、そういう時に中盤とか前が怖がらずに出てボールを持つ時間を増やさなければいけないと思っています。
失点はああいう感じでしたけど、偶然ではなく必然というか、ずっと押し込まれてしまったのでああいうチャンスを相手に与えてしまうということを感じました。
選手コメント DF3 石原 広教
前半は前からアグレッシブにいっていて、ボールを奪ってカウンターをしてというところがチームとしてハマる感じだったので、前からいくところはよかったと思います。ただ、ゲームを90分通して見ると、90分それを続けられるかということは中で意識していかないと、90分すべてハイプレスでいくのはおそらく難しい。前半45分はほぼそれでいってマイボールにできていましたけど、やっぱり後半に体力がなくなってから、もしくは交代して合わせる時間もなくというところから徐々にマイボールにする時間がなくなり、奪ってからも距離感があまりよくなかった。
いい形で攻撃に繋げることが少なくなってしまった。ゲームの流れを汲んで、戦い方を後ろから考えなければいけなかったかなと思います。

選手のコメントを読んでも、「ロングボール回収後、マイボールにする時間の少なさが失速につながった」という認識を選手たちが持っていることがわかります。
そこでロングボール回収後にビルドアップがうまく出来なかったシーンを用意したので御覧ください。

観て分かる通り、相手ディフェンスに対しての湘南のプレスは機能しています。そして、その後のロングボールに対して舘選手が対応し、古林選手に繋げます。ここからが問題なのですが、古林選手は田中聡選手が良い距離でサポートしているのにも関わらず、ボールを外に出してしまいます。実はこの後、相手スローインから逆サイドに展開されて、失点につながってしまうのです。もし、古林選手がボールを外に出さず、田中聡選手に繋ぎ、自分たちの時間を作っていれば、失点をしなかったかもしれません。勿論、味方選手が周りにいなければ、外に出すという選択は正解なのですが、フリーでいる味方に繋げられないのは問題でしょう。
では、この問題をもう少し深堀りしていきましょう。
もし古林選手が田中聡選手の位置を認知していて、外に出すという選択をした場合、これは意識の問題となります。古林選手は田中聡選手へのパスがカットされ、相手選手に渡るよりも、外に出してしまったほうが良いと考えた可能性があります。それは古林選手が交代して入った選手で、ベンチから残りの時間を守りきれという指示を受けており、安全策を取ったから外に出すという選択をしたと推察できるからです。このあたりは憶測でしか議論できないので不毛なのですが、この推察はすこし考えづらいかなと私は思います。選手のコメントでもある通り、自分たちの時間を作らなければ、やられてしまいます。なので、押し込まれている時こそ、マイボールにする意識を持たなければなりません。そして、この意識を古林選手は持って、ピッチに入ったと私は思うのです。というのも、川崎戦後の選手コメントで舘選手がマイボールの大切さに言及していました。チームとして自分たちの時間を作らなければやられるという意識はこの試合もあったはずです。やはり意識の問題よりも、認知の問題であると私は思います。
古林選手が田中聡選手の位置がわからず(認知不足)、ボールを外に出してしまったということです。

2.交代選手の認知不足

認知不足は交代選手だけの問題ではありませんが、交代選手に如実に現れたのは事実です。それを物語っているのが失点のシーンになります。

まず逆サイドに展開されて、鳥栖の飯野選手までボールが渡るシーンです。
湘南のタリク選手は鳥栖の白崎選手についていきますが、田中聡選手に受け渡しもせず急にマークを外します。湘南の平岡選手がスライドをし、本来タリク選手のマークである鳥栖の島川選手をマークしているので、タリク選手は、白崎選手をそのままマークをするか、田中聡選手に白崎選手のマークを受け渡し、田中聡選手がいたスペースを埋めなければなりません。結局、タリク選手はなにも守備をせず、白崎選手は湘南のペナ脇に侵入していきます。
そして、ペナ脇に侵入した白崎選手にボールが渡るシーンですが、湘南の石原選手がカバーに入ったため、中の人数が湘南の2人に対して、鳥栖が3人と人数不利になってしまいます。この場面、本来であれば湘南の山田選手が最終ラインに戻らなければなりません。山田選手は直前まで鳥栖の仙頭選手をマークしていましたが、仙頭選手は攻守のバランスを取るため、低い位置にポジションを移します。この時点で、湘南のペナルティエリア内に侵入している鳥栖の選手は3人で、それをマークする湘南の選手は数的同数となっています。原則を考えると、ここで山田選手は最終ラインに加わる必要がありますが、なにもしません。
最後に右サイドで全体を見渡せる位置にいた古林選手に言及させていただきます。最初のうちは画面で見切れていますが、大外に鳥栖の酒井選手がいます。古林選手はペナルティエリア内が相手と数的同数であることをすぐに察知し、山田選手に最終ラインへ下がるようにコーチングしなければなりません。
交代で入った、タリク選手、山田選手、古林選手が相手のポジショニングを確認せず、認知不足によって自分のポジショニングと行動を間違えます。
タリク選手が間違っていなければ、白崎選手を止められたでしょうし、山田選手と古林選手が間違っていなければ、クロスに対して舘選手が正しいポジショニングを取れ、防げたかもしれません。

3.必要なのは認知力。それによりビルドアップも改善

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なぜ交代選手に認知の問題が出てしまったか、その原因については私もわかりませんが、私が推測するに、ベンチでは交代選手に対して、前からプレスに行けと指示していたように思います。その意識が交代選手に強く刷り込まれ、タリク選手は失点シーンであのようなポジションを取ったのではないでしょうか。そう考えると色々と説明がつきますが、憶測に過ぎないのでこの議論はここまでとしましょう。
認知力の改善策、改善方法は、私自身わからないので、言及できませんが、改善できれば、今からお見せするシーンが多くなり、チャンスが増えると思います。

ロングボールに対して石原選手が対応し、セカンドボールを田中聡選手が回収します。その瞬間に「フリー!」とコーチングの声が聞こえます。これにより、田中聡選手は余裕を持って全体を見渡せ、ボールを散らせます。
この一連のビルドアップはチーム全体として、優れた認知によって出来たと言えると思います。相手のハイプレスに臆することなく、周りを確認し、正しいポジションを取れば、きれいなビルドアップができる力が湘南にはあるのです。

4.ハイプレスでビルドアップが出来ない場合

ロングボールを回収後、ショートパスでのビルドアップをできれば良いのですが、ハイプレスを掛けられると簡単にはいきません。この試合だと、湘南はウェリントン選手目掛けてロングボールを放り込むのですが、ことごとく相手に回収されます。相手ディフェンダーはウェリントン選手に対して、2人いましたし、相手の守備陣は縦にコンパクトな形を保っていたため、セカンドボールも回収できていました。フィジカルに優れたウェリントン選手もしっかりと対策をされれば、どうしようもありません。湘南は頑なにウェリントン選手へのロングボールを止めませんでしたが、上手くいかないとわかったら、修正が必要です。
どのように修正をするのか、そのポイントとなるのは、相手がハイプレスで縦にコンパクトだということです。鳥栖が湘南に対して、ディフェンスの裏にロングボールを放り込んだように、湘南も鳥栖ディフェンスの裏にロングボールを放り込む必要があったと私は思います。相手の裏にボールを送り込めば、湘南のプレーエリアは回復し、相手に回収されたとしても、湘南が得意とする相手陣地内でのハイプレスが仕掛けられるわけです。もし、相手が裏を嫌がり、ディフェンスラインを下げれば、ライン間にスペースが生まれます。そうすると、湘南の中盤がボールを受けやすくなり、ビルドアップする余裕が湘南に生まれるのではないでしょうか。相手が縦にコンパクトな陣形でハイプレスを仕掛けてきた場合は、湘南のFWはポストプレーを狙うのではなく、ラインブレイクを狙ったほうが効果的と言えるでしょう。

5.問題点を修正し、横浜FC戦に活かしてほしい

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湘南ベルマーレの問題点は明らかです。故に横浜FCはそこを必ず突いてくるでしょう。
次は残留のためには絶対負けられない一戦です。それまでに問題点を修正できるのでしょうか。山口監督の手腕に期待したいと思います。

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