いくつになっても。 *随筆*
最近昔のことをよく思い出す。
なんかすごい賞をとったとかじゃない、小さな小さな自慢、子供心の恥ずかしいうぬぼれ。これも今となっては、懐かしい、可愛い思い出。
田舎町の小さな展覧会で自分の作品に金紙(金賞)が貼られていたこと。
自分ではそんなに上手く描けたと思っていなかったから意外だったけれど、どこか嬉しくて恥ずかしくて、「私もしかして絵が上手なのかしら?」なんてちょっぴり浮かれた気持ち。
夏休みの宿題でやっつけで描いた作品が、「おぉ~(すごい)」ってクラスメイト達が口にして感心された時のこと。あれ?これがいいの?と、自分が思う上手に描けたというのと、他者が思う感想が異なることを意識しながらも、やっぱり恥ずかしいような嬉しいような、何とも言えない高揚感?があったのを覚えている。
書道でも絵画でも、賞状を頂けたものもあったけれど、金紙が貼られていた程度のものでも、何か評価されることは内心うれしかった。
子供の頃こと。大したことじゃない、なんの自慢にもならないことだけれど・・・小さな金紙に純粋に喜べたことが幸せだったんだな、と涙ぽろぽろ。
年をとって、辛い時代に身をおいて、いろんなことを後悔して、そんな中思い出した小さな思い出。今となっては、あれはあれで可愛らしい気持ちだったんじゃないかって思えるようになった。
競争は苦手だけれど、勝ち負けではなく「わぁ金賞だわ!」なんてはしゃぐのもいいのではないか、と思うようになった。「いい年して恥ずかしい」って思われるかもしれないけれど、今は、おばさんになっても、おばあちゃんになっても、そんな可愛らしい気持ちが持てたら、きっと楽しいだろうな、素敵だな、と思う。それがたとえ小さな町の展覧会で金紙が貼られるようなものであっても。
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