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我が家に一度だけ来たサンタクロースのはなし
「うちは仏教だから、クリスマスなんてないんだよ」
そう言われて育ってきた私でも、小さいころに一度だけ、
サンタクロースに出会ったことがあります。
今日は、そんなサンタクロースのお話。
* * * * * *
私が出会ったサンタクロースは、
仕事に子育てに忙しい女性でした。
ある日私は、そんな忙しいサンタクロースから「ラッピング用紙買ってきて」と頼まれます(当時、小学校低学年)。
時期的なこともあって、「こんなお願いをしてくるなんて…今年はもしかすると、もしかするかもしれない…!!」と期待に胸ふくらましながら、ラッピング用紙を急いで買いに行ったのを覚えています。
急いで帰り、それを渡した次の瞬間、私は耳を疑います。
「プレゼント包むの、手伝って!」
「えっ!?」
あ、うん!と思わず返事しましたが、どう考えてもおかしい。
(いま考えても絶対におかしい)
そして、妹たちに見つからないように。
隠れてこそこそと、その作業は行われます。
すでに準備されていた茶色の紙袋をひっくり返すと、
ワクワクするような文房具がたくさん入っていて。
サンタは手際よく、3姉妹のプレゼントを仕分けていきます。
これは誰々、これは誰々、これは誰々。
ちゃんとそれぞれが欲しいものを買ってくれているなぁ~
なんて思いながら、それをじっと見つめる私。
当日のお楽しみ、なんてものはない。
長女とは得てしてこういうものだ。
幼心にそう思いました。(ほんとに)
* * * * * *
そうして迎えたクリスマスの朝。
見慣れたラッピング用紙に包まれたプレゼントが、並んで寝ている3姉妹のそばにそれぞれ置いてありました。
そして私はというと。
この特別な朝がこんなにも嬉しいことに、自分でも驚いていました。
いまその理由を考えてみると、
私にだけはっきり見えたからだと思います。
我が子を喜ばせようとしたお母さんの愛情と、
無邪気に喜んでいる妹たちの姿、その両方が。
お母さんも妹たちも、みんなが嬉しそうなことが
きっと、何より嬉しかったんだと思います。
よっぽど嬉しかったんでしょうね。
それから毎年毎年、結婚してもなお、クリスマスの朝に枕元を確認してしまう悲しい癖は、なかなか抜けませんでした(そして当然何もないんだけれど)。
それでも毎年クリスマスが近づくと、妹たちに隠れてお母さんと一緒にプレゼントをせっせと包んだ、あの日のことを思い出して、なんだか「ふふっ」と笑ってしまいます。
あの日の母はたしかに、私にとってサンタクロースでした。
そしてこのサンタとの内緒の思い出も、私にだけ特別に贈られた、
素敵なクリスマスプレゼントとなりましたとさ。
2022年12月、あとがき。
最近この話を家族でしてみました。
母はこのクリスマスのこと全然覚えてなかったし、
妹たちは母と私がプレゼントの準備をしているのを、
こっそり見ていたらしいです。
ちゃんちゃん。笑
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