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愛を込めて室内楽を〜カルテット留学のその先〜

10月1日。成田からアムステルダム経由でプラハへ。
空港にも機内にも人はまばら。皆マスクで顔を包み、心なしか表情は暗い。
異様なタイミングでの留学が始まった。

Hector Quartet

私達エクトルカルテットは、この10月よりプラハ芸術アカデミーに入学。師事するのはパノハ弦楽四重奏団。私の中の彼らの思い出はここにある。雑誌サラサーテで留学体験記『ないしょの手紙』を連載するが漏れてしまう細かい雑記をここに残そうと思う。


プラハ、現在

コロナ禍の中での留学には常に困難が付いて回った。ビザの発行が一時止まっていたり、飛行機の便はいつキャンセルになってもおかしくなかった。私達は5月にプラハへ下見、兼空気を味わうために渡航予定だったがそれも不可能に。留学が奇跡的に実現されたのでなんとか10月にはプラハに来ることができた。

入国して数日。様々な手続きをする為にプラハ市内を行ったり来たり。すれ違う人々はほとんどマスクをしていない。
どうやら建物や公共交通機関に入る時だけマスクをするようだった。大丈夫なのかなぁと思っていたら10月12日からロックダウンに。ノーコメントである、、、。

大変思わしくない状況の中自分たちの振る舞い方を考えなければならない。

魅力溢れる何か

今、プラハに来て1週間。もちろんコロナの影響で変動するだろうが、だいたいの予定が決まって来ると思う。
私達はミーハーなので、1週間の予定を師匠の師匠、つまりスメタナ弦楽四重奏団から拝借した。週の6日カルテットに身を捧げ、1日オフにするというものだ。私はこの文をそのオフ日に書いている。ゆっくり起きて、練習して…結局やることは全てカルテットに関しているのだけど。
スメタナQ曰くこのオフにデートをすること、とある。チェロのアントニー・コホートの著作に記載されていた文だ。誰かが実行に移したらここにやんわりと書き込もうと思う。怒られませんように。

合わせというのは、グループごとに“これだ”と思うものが違うと思う。
私達は幸運なことに、ほぼ毎日合わせができる環境に身を置いた。良い音楽を得るために、“これだ”を4人で探している。

魅力溢れる音楽を生み出すためには、魅力ある人柄が必要だと、私は確信している。そうではないと言う人ももちろんいる。技術が高い4人が集まればそれでカルテットになるのだと。
でも私はそうは思わない。師匠、パノハQは素晴らしいお手本だ。4人でいる時、彼らはとても気を許しあっていて、一人一人が根に素晴らしい人間性を持っている事を常に感じさせる。レッスンの時、彼らの内誰かがパッセージを弾くと言うのだ。『そう!あのように弾いてみて』。

魅力溢れる音楽のために必要なことは、もしかしたらお互いに魅力を感じていることなのかも知れない。
私は常にメンバーに敬意を感じる。特に合わせの時に。
詳しく書くと長くなるので次回にしようと思うが、パノハQのあの暖かい音の裏には、素晴らしい関係性があるのだと、自分達を通して感じた1週間だった。

魅力というのは、案外自分達の中に眠っているのかも知れない。


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Kana Yamaguchi
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