コラム:仕様書を仕様書だと思わないことがとても大切なんです。
最近、知人のゲームセンターからご相談を請けました。
「その時の話を記事にしていいですか?」と確認したところ快くOKをもらったので記事にしています。
(店舗の詳細は伏せさせていただきます)
<登場人物>
わたくし:コムと申します。
とある店舗のオーナーさん:Oさん
私が紹介した納入業者:Nさん
Oさん
コムさんに紹介してもらったNさんのところで買ったジャグラー(北斗ver)中身が、Nさんからもらった仕様書と、コムさんから聞いた話とで違っているんだけど、同じverだって言ってたよね。どっちが本当なんですかね?
コム
はい。それは結論から申し上げますと僕の話の方が本当です。でもNさんは騙そうと思ったわけじゃないってことだけまずご理解頂きたいんです。
そして、その仕様書は元々僕が作ったモノだということを謝らせてください。
Oさん
え。この基盤はコムさんが作ったの!?
コム
違います違います!!どっかの誰かです。今日、お話したかったのはそこなんです。
仕様書って実は仕様書って言えるレベルに意図的に達させていないんですよ。もっというと購入者が見れる仕様書なんてモノは本来ないんです。特にゲームセンターで使われるようなアミューズモノってそうなんです。
Oさんが手にしているのは仕様書っていうタイトルの説明書です。
Oさん
ん・・・?どういうことだ・・?
コム
仕様書って要は仕様が書いてあるはずなんですけど、、例えばなんか北斗の裏モノがあるとします。メイン基板1枚にサブ基盤1枚。演出用基盤があってハーネスがあります。これらがそれぞれ何をしているか。どういう役割を持っているか。これらのことを全て日本語で説明するべきなのが本来の仕様書だと思うんですけど、、そんな情報どこも出してないんですよ。
タウンページくらいの情報量になっちゃうんじゃないですかね。ただ、Oさんの手元にあるのは、タウンページどころか多くて10ページくらいの下手したら4Pくらいの仕様書ですよね。
Oさん
モノによっては2Pとかだよ。
コム
それに書いてある機械割とかなんて、合ってるけど適当です。参考値です。下手したら計算してないです。ドラクエの説明書にもベギラマの仕様はグループ攻撃である事くらいしか書いてないじゃないですか。
Oさん
ベギラマは敵1グループを強力な炎で攻撃するって書いてあるね。
コム
そうなんです。説明書にはそう書いてありますけど、でも実際は属性のこととか、耐性のこととかダメージのブレ幅のアルゴリズムも書いてあって初めて仕様がわかるんですけど・・ そんな事書いたら多くの人の間違いの元になるわけですよ。それくらいでいいんですよ。
例えば、Oさんのところに置いてあるシオラーあるじゃないですか。あれって購入したとき仕様書って付いてきましたよね?
Oさん
もちろんあるよ。うちの裏モノは全て仕様書がついてきてるよ。
コム
その仕様書って、何が書いてあります?
機械割と設定変更後の挙動とモーニングの入れ方とベースとシミュレーション値しか書いてなくないですか?
Oさん
うーん、そうですね。後は小役確率が書いてあったかもしれない。
コム
そうなるとその仕様書、私がつくったやつかもしれません。それも優しい嘘が書いてあるんですよ。
シオラーって小役カウンターを搭載してるので小役確率って変動するんです。だから正しくはそこに書いてある数字じゃないんですよ。慣らしたらしたらこれくらいになるんじゃないかなって数字を適当に書いてあります。
Oさん
適当って・・・。
コム
仕様を全て書いても、お店さんが理解できないんですよ。小役低確率状態と高確率状態があるーーとかってOさんでもきっとわからないですよね。もっというと売ってる人間も全員が理解してるわけじゃないです。
偉そうに講釈垂れてる私も、そもそもあのシオラーの仕様を全て理解しているわけじゃないんです。ロムを作った人は理解していたんでしょうけど、そんな細かい仕様のログをわざわざ残してないんです。
裏モノ作る人って、パチスロメーカーみたいに大きな会社でチームで作って、上司に承認をとって保通協に検定を通して営業補助チームが販促資料を作って営業マンが売るわけでもないですし、設置時に警察に許可をとってから納品するわけでもないんですよね。
なんならあの人たちノリで作ってますよ。追加ロッドをちょっといじったりも平気でしますし、古のカバン屋さんなんて、ネタを仕込むなんて当然だったって話もよく聞きますし。全ての仕様をお客に伝えるなんてまずあり得ないんです。
私の場合、ROMを複製して解析をして、たまたま参考になる数字とかが見つかればそのまま使える事はあるんですけど、、それも正直運みたいなところがありまして。解析をしたらその台のことが全部絶対にわかるってわけでもないんです。そんなの漫画の話です。
だから、開発者が作った全ての機能を理解できているかは常に怪しいです。例えば(2024年)になって今更モーニングの入れ方がわかった4号機の台だってあります。
Oさん
そういうものなのかー。
コム
はい。販売業者はそうは言わないとは思いますけどね。
台や基盤を購入した店に全部伝える必要がない!っていうのがカバン屋のモットーですし、私が納入業者(転売業者ともいう)に依頼されて仕様書をつくる際も、全て伝える意味がないんです。
ノーマルだってそうですよ。有名なのはEMAのいみそーれやペガッパのSPモードですね。あんなの販社は知らないですし、店もほとんど知らなかったんじゃないですかね。営業マンが知ってたかも怪しい。適当な説明書を渡しておけば大体の場合、それでいいんですよ。
例えば・・ジャグラー北斗verなんて、INが4444枚になると設定がいくつだろうと、どういう裏設定をしていても天井に到達するんです。これは仕様なんです。
ただ、裏設定の弄り方を購入業者が教えていなかったり、そもそも知らない業者の方も多いんです。Nさんは裏設定というかカスタマイズが出来ることを知っていたわけですが、納入するときの仕様書に知ってる全てを書いていないんです。僕が書かないことを進めた上で仕様書を作りました。
だから私は「Oさんには、一応こういうこともできるよ・・!」という意味でこの前のお話をしました。「裏設定がある」ってなると、台のPAYOUTが本当に無茶苦茶になってしまったりするんです。クレーム出ても嫌なんで、だったら教えなきゃいいや って考えもあったりするのも事実なんです。
Oさん
でも持ってる情報は全部教えてほしいって思っちゃうけどな。
コム
お気持ちはわかるんですが、実はそれって危ないんですよ。
口頭でオーナーにだけ伝えるってのは有りだと思ってるんです。
モーニングを簡単に入れれる方法とかが仮にあったとして、それを仮に仕様書に書いたとするじゃないですか。オーナーは店員がそれを見てしまって、常連に打たせてキックバックもらってたら気がつかないですよね。
設定師だってその仕様書を見たら、他のお店で同じことをするかもしれない。
Oさん
確かに・・・。
コム
もっというと、詳細な仕様書ってのは台より価値が遥かに高いんです。私も知ってる事全てをNさんにも全て教えてるわけじゃないですし。そこらへんの業者は自分のところが扱ってる台の詳細なバージョンわかってないこともザラにありますし。Nさんはかなり真面目な方ですよ、すごく勉強してらっしゃる。この業界、クズみたいな業者は多いですから。
何をお客さんに伝えるべきで、何を伝えない方がいいかもよくわかってると思います。
Oさん
いや、話が聞けて良かったです。
・・・こんな感じの話をしたんです。先日。
それで本日とある方が「その台の仕様書見たことあるよー大体のこと知ってるよ!」的なことを言っていたんですが
「大事なのは、その仕様書は誰が誰に向けて書いたものであるか」なんです。って思い返してこの話をここでさせていただきました。
個人による改造基盤等ならまだともかく、中古パチスロ台ってのは、常に誰かから誰かの手に渡るモノでその中で、仕様書という名の説明書がなくなって適当な素人が作った説明書になることなんてのは世の常でございます。
人の手を渡るごとに、台よりも情報の方が劣化のスピードが早いことをお忘れなきように・・!