A氏、B氏、C氏による極めて低俗的な議論<その1>
ある冬のことである。Aはいつものように缶コーヒー(ホット)を学校の敷地内にある自販機で購入していた。Aと普段からつるんでいる二人、B、Cと連れ立ってである。
「はたして私はなぜモテないのかネ」
Aのそういった、その年齢相応の、いわゆる青春の悩みをふとボヤいたことがその議論の始まりであった。
「しかし、それは君の行動が足りないだけでしょう」
BはAに続いて彼の貴重な百円を捻出してホットココアでそのかじかんだ手を温め、グーパーグーパーとしきりに動かしている。
「そうかね、いやそれは私も行動を全くしないわけではないさ」
「例えば?」
Cが口をはさむ。彼はいわゆるコカイン中毒と自ら申告するタイプのモンスター狂いで、冬至というこの寒い日にも冷えたモンスターを買っていた。
「積極的に女性に声をかけたり、それとなく助けたりするのさ」
「それは誰かひとり、気になる人に?」
「特定の人だけということになると振られちまったときに困るだろ」
「プレイボーイ気取りか?きっと気づかれちまうよその魂胆が、でもってそれが降られる原因になるんじゃないの」
「そもそも君は自分で行動しているというけど向こうのほうでそれとわかる行動じゃないといけないんだぞ」
Bが思いついたように言った。
「向こうのほうでそれとわかる行動となると、あまり複数の人に同時にできるものじゃない、というか特定の人に絞ってなにがしか行動することがそれとわからせるわけだろう」
「もっともだね」
「なんだよ、女性陣だってある程度複数の男子を同時に並べて一番から順に試していくだろうさ。それでうまくいく相手を見定めるんだろう。こっちだってそんな悠長なこと言ってられないよ」
「ふふん、そこで速さが重要になるのさ」
「度胸のいるやり方というのを私は好まないのでね、君の三か月以内に告白するというような力業は受け入れかねるよ」
「長くて三か月さ」
「早くて一日だろ?君はいわゆるイケメンってやつだろ、前提が違うのさ」
「でもさ、行動は早いほうがいいというの事実だと思うよ。だって向こう様もある程度当て馬を用意してイケメンを狙うわけだろ、例えばが当て馬にされるとしてさ、そこでA君の行動が早ければきっとあきらめてなびくよ」
「いやはや、確かに私は基本的に当て馬要員ではあるが…」
「まあ君がどういう立場であるかなんてふたを開けてみないとわからないんだし、そんなに悲観することもないと思うけどもさ。行動というのは大事だよ、なんにしても」
「そうだぞ、むしろ俺こそがねらい目のイケメンだろうと確信して大いに恥をかけ、そしてメンタルを鍛え上げるのさ。そしたらどんどん行動にも躊躇する隙がなくなってより恋愛成就に近づけるぞ」
「また強引な」
「うぅっ、寒い、なんでまたこんな外で話すのさ」
「おう、中に入るか」
「まて、俺は飯を買ってくる、お前らは弁当なのか?」
「そうさ、また君もお金がもうないんじゃないか」
「飯代くらいは親が出してくれるさ、給料日もそう遠くないし」
「寒い寒い、はやく中に入ろうぜ」
「今日は最高気温が九度だってな、寒いはずだ」
そんなことで、彼らは校舎の中に移っていった、、、