松野探偵事務所 (3)

「誰から聞きます?」
「大家さんか隣の部屋の人か、どっちかだな。」
「じゃあ、大家さんにしましょう。」
このアパートの大家の部屋は一階の角部屋。
インターホンを押したところで小川田は疑問に思った。
「そういえば、探偵って刑事みたいな聞き込み調査するんですか?」
「聞き込み調査じゃないよ、ただ話を聞くだけだよ。」
松野は少し呆れた様に答えた。
「話を聞くぐらい何も問題ないだろう?」

大家は二人を部屋に入れ話をした。
「ええ、隣の部屋がうるさいってお話がありましたよ。」
「その話があったのはいつですか?」
「えーっと、二、三週間前ですかね。」
「なるほど。そういえば、騒音がする部屋の方に会ったんですがね、あの方だいぶ気が立ってました。」
「あの人はここに来てから今まで問題なんて起こした事無いような、どこにでもいるごく普通の人だと思ってました。」
「そうなんですね、お仕事は何されていたか分かりますか?」
「いえ、そこまでは。個人情報ですから…。」
大家にも男の事は分からないようだ。
「お忙しいところありがとうございました。」
「いえいえ。あっ、そういえば、ずっと気になってたんですが、無口な方のスカートの中に…」
「い、いや何もありませんよ!」
「あぁ、そうですか…。」
大家は不思議そうに小川田のスカートを見つめた。
小川田のスカートの中で”何か”が動いた。

アパートからの帰り道、松野が小川田に聞いた。
「なぁ、そろそろ教えてくれないか?スカートの事。」
「嫌です。」
「もう四年も一緒に暮らしているというのに。」
「それとこれとは別です。そんな事より…」
「私は探偵だぞ。常に一緒にいる者の事が分からなくてどうする⁉」
「今はそんな事より依頼の方が大事です!」
「だったら、この事件を早く終わらせようじゃないか。それでいいんだろう?」
「…はい。」

事務所に戻り松野は興奮気味に話し出す。
「この事件、あの男が会社のストレスによって狂い、騒音を出した。」
「それで?」
「以上だ。これで事件解決。これで君の事が調べられる。」
「ちょっと待ってくださいよ!せめて、原因くらい調べましょうよ!」
「そうやって君は…まあいい、流石にこの推理は雑すぎた。今日はもういい。」
ソファーで横になる松野を不安そうに見つめる小川田は冷や汗をかいていた。

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