採血で「気分が悪く」なった話
このところずっと、何をするにもやる気が起きなかった。
もともと貧血気味で通院していた身であったことから、馴染みの婦人科に血液検査をしてもらいに行った。
これまで幾度と無く血液を採取されてきた私であるが、今回初めて「採血中に気分が悪くなった」ので、その一部始終をまとめてみた。
気分が悪くなるとはどういうことなのか、またそうなるとその後どうなるのかについて、健康な方と体験を共有できたらと思う。
ここからはイラスト形式で順を追って解説していく。
指定された部屋に入ると看護婦さんがいた。
可愛らしくはつらつとした顔立ちをされている女性の看護師さんで、おめめを大きくした蒼井優ちゃんのようなお顔だった。
血液を採取する際は、腕を縛って血管を浮き上がらせ、針を注射する。
今回もそれにもれず、ピンク色のゴムで腕を縛った。
針を肉体に刺す時、その様子を見るも見ないも患者の自由であるが、
私は見ないようにしている。
それは、痛さが増すと言う理由よりも、肉体に先端の尖ったものを指す行為がどのように行われているかを見るとそれを実際に自分がしてしまうかもしれないということが怖い、というのが本音である。
針を刺すと、すぐに手先のしびれがないか聞かれた。
正直、開始から5秒もしたところで第2関節程度までしびれていたので、不安は大きかったが、何度も針を刺し直されてはたまらないので、業務の妨害にならないようそれとなくそのヤバさを聞いてみる。
美容院で行う染色の時も、施術の途中で痛みがあるなどといっても、我慢しないと髪は染まらないので多少の痛みやかゆみなどは、言わない方が圧倒的にスムーズに物事が進む。
危なくないなら、なるべく波風を立てたくない。
意味がわからない。
神経に触ってたらと思うとゾッとした。
無知は本当に怖い。
それに罪だ。
私は毎日この肉体を使いながら修理については何も知らない。
ピンク色のゴムを外してもらうと、手先のしびれはものの10秒ですーっと消えていった。
神経じゃなくて本当によかった。
看護師の国家資格をこれほどまで疑ったことは今まであっただろうか。
そのまま安静にしておくこと約20秒、
ずっと頭のモヤモヤが強まり、体の浮遊を感じた。
とっさの反応でつかんだベッドにお世話になるとは誰が想像しただろうか。
この時、私は看護婦さんに心の中で謝っていた。
か弱い女アピしてしまって申し訳ない。
お前の目の前にいるのは多めに見積もって数分ぐらいだろうから、少し多めに見て欲しい。
と、視界のピクセルに真っ黒がランダムに現れ始めた。
ここら辺は立ちくらみと同じような症状である。
しかし、座っているためか、重力に逆らうような慢性的な頭痛はあまり感じなかった。
日常でもよくある症状なので、看護婦さんに迷惑をかけてはいけないと、
ここは何も考えず耐えることを選んだ。
ここまでくると、もう目を開けている意味は無いので目をつむることになる。
目を瞑ると、自分の症状が悪いものなのかそうでもないものなのか判別をすることが難しくなる。
目をつぶってから自分の声で起きるまでは意識がなかったようにも思う。
採血なので、それほど長い間気を失っていたとは考えにくい。
自分が沈黙を保っていた時間の長さなど、恥ずかしくて聞けていないので、真相は看護師さんのみぞ知る。
とりあえず、真っ暗な中ひたすら終わるのを耐えていたように思う。
看護婦さんが試験管のような瓶を2本持っていっていたのを覚えているが、その交換が行われた場面などは一切見ていない。
うっすらした記憶であるが、まず勝手に体が深呼吸を始めたように思う。
その後、奇声まではいかないが、何か音を発していたように思う。
よくよく聞いてみると、それずるの音は、悲しそうに発されていた。
ここからしっかりした記憶がある。
「ンー!泣」「ンー!泣」と喚く私に、
看護婦さんが「もうちょっとで終わるからね〜」と、声をかけていた記憶がある。
このぼんやりした記憶の戻り方には見覚えがある。
夜驚症だ。
夜突然起きてきて、泣きながら何かを懸命に訴える。
途中からぼんやり周りが見えはじめる本人は、我に帰るまで自分のやっていたことを思い出せない。
小学生の頃、親との諍いがあった夜に発症していたと聞いているが、我の取り戻し方が酷似している。
自分に余裕ができ始めると、周りの声も聞こえてきた。
院長先生が来てくれているのが分かった。
医療ミスなのかなと思った。
寝かされて1分もすると視界から黒色が消えていた。
看護師さんとお話しする。
何がびっくりしたのかわからなかった。
それは、体なのか、体の異変に気づいた私のことなのか。
馬鹿みたいに謝るしかなかった。
悶え狂うブスを処置させられた看護婦さんがかわいそうで仕方なかった。
終わりに
制御できなくなったとき、ひとは、まるで人ではなくなったかのように言葉が使えず、周りの人を混乱に導きます。
これがもし、老化とともに増えていくのだとしたら周りの反応も、家族の反応もとても気にしてしまうだろうなと思います。
だからこそ、ぼける前にボケ始めたかのように振る舞うお年寄りの方の気持ちもわからなくもありません。
肉体と精神の未来が不安になった出来事でした。
拙い文章ではありましたが、参考になれば幸いです。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。