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【ポケカ】剣盾3年目の読解進捗3例 混乱無効/トラッシュの炎エネルギー/ゴーストタイプにとってのエネルギー

はじめに

こんにちは(パルデア地方の挨拶の一つ)。

CL愛知、クリーチャーズ井上さんの「フレーバー」「非エク」といったイレギュラーな発言が多くてアツかったですね。フレーバーは公式用語。

一方で完全新規カードの紹介がほとんどなかったため、ザクロ公開時の「ボルダリングで戻ってくる」のような収穫はありませんでした。やっぱり公式という神の声がないと、どれだけフレーバー豊かそうなカードが存在しようと解釈が確定しないんですよね。これは言語習得におけるガヴァガイ問題と類似した状況と言えます。

ガヴァガイ問題とは、「知らない言語を喋る人がウサギを指して『ガヴァガイ』と述べたとき、その言葉の意味が『ウサギ』なのか『白い』なのか『跳ねる』なのか『ペットのガヴァガイちゃん』なのか、それともそれ以外なのか区別できない」というものであり、ゆる言語学ラジオ(おもしろいのでおすすめです)の受け売りにつき深くは説明できないため、用語集と該当回のリンクを貼ってお茶を濁しておきます。

サムネの圧が強すぎる。「でも初めて言語を習得する赤ちゃんはガヴァガイ問題に立ち向かっている」という文脈で登場していて、シリーズを通してものすごい説得力で赤ちゃんが褒め称えられており迫力があります。赤ちゃんってスゴイ。改めてそう思った。

母語公式の言語創造秘話(そんなものはない)や母語話者有志によるWiki(赤ちゃんは読めない)無しに母語を習得してしまう赤ちゃんの力は素晴らしいものですが、残念ながら私たちは赤ちゃんを引退してしまっているため、赤ちゃんの言語習得のようにハイスピード(自分の番に、手札からこのカードを出して進化させたとき、1回使える。自分の山札を3枚引く。)でポケカを理解することができません。しかし私には赤ちゃんよりもやや高い思考力があります。この思考力によって剣盾3年目のカードを元に

  • 混乱無効

  • トラッシュの炎エネルギー

  • ゴーストタイプにとってのエネルギー

について、「用例があっても意味を絞れない」神の声無きガヴァガイ問題的状況の中、面白い解釈が得られたので、ご紹介します。概ねTwitterに書き散らしたものを整えた感じです。

混乱無効

みなさん、混乱したことはあるでしょうか。
混乱まではしたことがあっても、混乱した状態で行動しようと思ったら自分を攻撃してしまった……という経験がある方は、「毒や火傷でHPが減った」「足が痺れて1ターン動けなかった」「眠った」という経験がある方と比較して少ないと思います。これはつまり我々は混乱にあまり縁がない……混乱させる効果には身近な概念から名前をつけづらいということであり、ましてや名指しで混乱を防ぐ効果というのは命名が極めて難しいことになります。精神の混乱を防げて、ポケモンの世界にあっても違和感のないもの……果たしてあるのでしょうか?

フォルムチェンジ先がデッキ内に存在しないデオキシスexを看板にした構築済みに収録されたブーピッグ。対となるレックウザデッキにはこんらんにするカードが存在しない。つまりデオキシスvsレックウザで戦った場合、デオキシス側の特性はダーテングの「かぜのうちわ」以外、実に2/3が意味をなさない。特性の2/3が意味をなさないことないだろ

『マイペース』は本編由来の、最もそれらしい混乱無効です。なるほどマイペースであれば精神が混乱することは少ないでしょう。DP時代に本編由来であるということ以上にフレーバーを掘る意義の薄い「キーのみ」を挟んで、XY時代に登場した混乱無効が、

ヘビーボール風の意匠がお洒落…いやお洒落ではないか。
フレーバー的には被ダメージを軽減しそうですが、面白くない状況を招かないようにHP上昇にしておくというのはよくあるパターンです

……重い靴です。????????
このカードの理解には当時の状況についての知識が必要でしょう。ちょうどXY時代、マーイーカからカラマネロへの3DSをひっくり返す進化方法をポケカで再現するため、混乱をカードを上下逆さにして示すルールを利用した『さかさましんか』マーイーカという傑作が生まれました。つまり逆立ちを混乱として表現する前例が間近に存在していたわけです。ヘビーボール対応の重いポケモンしか履けないような重い靴を履けば逆立ちできませんから、混乱が無効化されるわけですね。ちなみにマーイーカはこの後も『はいごをねらう』で「通常向きのポケモンは前を向いてるんだから上下を逆さにしたら後ろ向いてるんだろ」と混乱の解釈に混乱をもたらしています。お前が混乱=逆立ちの元祖だろ!フラフラするな!(フラフラダンスを受けたので混乱する)

逆立ちなのか後ろ向きなのかはっきりしろ

なお「特殊状態について、カードの向きというシステム面に立ち戻って新しい解釈をする」例としては『たそがれのひらめき』のヤドランが挙げられるかと思います。『ぐるぐるタックル』によってお互いが眠り状態になる理屈がさっぱり分かりません……つまりこれはタックルによって自分も相手もごろごろ倒れている、という状況を、カードをぐるぐる回すねむりによって表現しているのでしょう。

普通、タックルを受けることで入眠することってないですからね。
一見そう見える場合は……脳挫傷の疑いがある!(ギュッ)

さて、カオスタワー(どくとこんらんを防ぐ側と、ねむりとマヒを防ぐ側のある向きつきスタジアム。これが収録された「めざめる超王」の時点で二つの世界は融合しているため、特殊状態を防ぐという特徴が二つにただ分配されただけであり、その分け方に意味はない、と自分は考えているので飛ばします)を除いた次なる混乱無効は、

海の囁き、さらに4年遅れて癒しの木陰です。な、なるほど……?
つまり海の音を聞いていたり、草エネルギーが重ねられていて=木の葉の陰にいて癒されていたりすれば、精神が乱されることはない、と?しかしこれでは、ガヴァガイ問題は避けられません。海の囁きは混乱無効だ、癒しの木陰は混乱無効だと散発的に言われただけで、もっと何か別の要素を指して「混乱無効」という効果(=「ポケモンカードのテキスト」という言語における構成要素)を使っている可能性は小さくないわけです。やっぱり「精神の癒し=混乱無効」だ!とはっきり示してくれる用例がないと断言できないよ〜!「精神の癒し=混乱無効」だ!とはっきり示してくれる用例があればな〜〜!

誰もがマイペースでいられる場所。

ありました。
足掛け3年、剣盾シリーズをフルに使って、ある公園に集まったポケモンたちをイラストにしたカードを各パックに1枚ずつ封入するというあまりにも遠大な計画の締めくくりとして登場した『やすらぎの公園』は、「やすらげる公園では、ポケモンは混乱しない」という強力な楔をポケカ解釈の世界に打ち込みました。プロモゆえ実用性を度外視した、あまりに限定的なテキストには解釈の余地となる余計な要素が一切存在せず、かくして「やすらぎ」と「混乱無効」は固く接続されることとなりました。何気にかつて混乱を防いでいた水と緑がイラストに映っているのが無駄に美しいですね。そうだよな、公園って水と緑があって安らげるもんな…………。今後『うみのささやき』『いやしのこかげ』は精神の安らぎによって混乱を防ぐのだと解釈されるのでしょうし、新しく登場する混乱無効もまた、精神の安らぎというフレーバーを真っ先に検討されるのでしょう。混乱無効の未来に幸あれ。次に来るの何年後だよ。

トラッシュの炎エネルギー

トラッシュにあるエネルギーを用いて何かをするのはすっかり炎タイプの十八番となった感がありますが、元祖は水タイプのオーダイルです。チャンピオンロードでリメイクもされましたね。オーダイルの初出ということで明らかに第一弾カメックスを意識しており、つまりは「『あまごい』の結果」(=「雨」)とは水が空から下へ移動する現象であり、水エネルギーが手札から場へ降下する現象であるとしたカメックスから解釈を一歩進め、水エネルギーが手札から場よりも低い所であり脱出が難しい領域であるトラッシュへと移動することは即ち『どしゃぶり』、そんなトラッシュから山札へと水エネルギーが、水の終着点たる海から山であり全ての源である場所へと移動することは即ち『ぎゃくりゅう』であるとした、(私などにとって)現代における水エネルギーのフレーバーの礎となっている一枚です。

ここからは怪しい感覚の話になってくるのですが、水エネルギーのトラッシュを要求する水タイプのポケモンは鋼弱点(氷タイプ)が多いです。白馬バドレックスやキュレムがそうですね。最近はここにパオジアンがセグレイブという「水エネルギーを冷気として扱う氷タイプ」仲間を引き連れて加わりました。雷/草弱点(つまりは原作で水タイプ)な水タイプはベンチ狙撃の際のデメリットとしてトラッシュを行うぐらい(最近だと技ではかがやくゲッコウガ、特性では無限にあるシューター系とか)で、どちらかというとエネバウンスの方が多い印象なんですよね。さらに眉唾なんですが、水タイプのエネ加速などエネルギーの移動が多くトラッシュが少ないという特徴には、現実の水の性質が何重かの引用を経て反映されているのではないか……と考えています。高速で移動することで破壊に関わっても、相変化を経ても、水であり続ける水に、私たちは不変性を見出してきました。炎のようには消えず、精神力のようには消費されず、岩のようには砕けない、絶えず流れ続ける水。そのイメージが、トラッシュ以外への移動に長けた水エネルギーの姿と重なるんですよね。何度も言うように確証のない話なんですけど。

蒸発をトラッシュで表すこともある。そういうこともある

そういうわけで、『ぎゃくりゅう』は水タイプにぴったりな技でした。トラッシュのエネルギーを攻撃に使うには、攻撃に使用してトラッシュしたエネルギーの実体が残っている必要がありますから(ひのこを使った後に火は消えるし、でんきショックを使った後に電気は離散するが、みずでっぽうを使っても水が消えるわけではない、という理屈です)(水タイプの水エネトラッシュの少なさに水の不変性を見出した=この時点ではエネルギートラッシュを不可逆の消費と捉えているのに、トラッシュの水エネルギーを再利用することも水の不変性の表現だと主張するのはやや食い違っているようにも思えますが、「通常は消費とみなされる、トラッシュという現象がそもそも起こらない」「通常は消費とみなされる現象が起こっても、それが消費とみなされない」の2つに分けてそれぞれ納得していただきたいです)。
しかしエネルギートラッシュの本場は炎タイプ。おそらくはボトムアップ(ゲーム上の働きを優先して後からコンセプトを決める。対義語はトップダウン)的発想によりトラッシュのエネルギーを利用することになった炎タイプには、残念ながら、そうするために有効なフレーバーがありませんでした。燃料を消費し、炎を相手に向けて吐き出す、豪快な炎タイプの攻撃の中でトラッシュされるエネルギーは、まさに消滅しています。まかり間違っても炎をトラッシュというどこかの場所に移動することで攻撃しているんじゃありません。消えてしまった炎を、消費されてしまったエネルギーを表現するために、トラッシュという場所を利用しているだけなんです。『かえんほうしゃ』『ほのおのうず』あたりは相手の方向に炎を移動させることを炎エネのトラッシュで表現しているとしても、技を放った後もその炎が燃え続けているとはイメージしづらいですよね。結局はトラッシュの炎エネルギーとは、「誰かが炎を放った」という履歴としての意味しか持っていないのです。

誰かが炎を放った履歴で攻撃する者たち

『だいえんじょう』『さかまくほのお』……秀逸なネーミングです。炎「上」の名の通りに山札へと、上へと炎を立ち上がらせるのでしょう。『インフィニティ』……これも青天井の大火力に相応しい技名ですね。『アフターバーナーGX』……こちらは山札に戻しませんが、なるほどトラッシュの炎エネの枚数だけの火力で相手を焼くと。なるほどなるほど?炎はもう消えているのに?

そんな状況を変えたのがバオッキーVSTARです。「誰かが炎を放った」という履歴で、どうやって攻撃するか?そう、「燃えさし(エンバー)を再燃させる」のです。

ネタにしろと言わんばかりの突然の抜擢を受けたバオッキーVの、これまた突然の強化パーツであったり、SARがナガノ先生だったり、SARが技名に引っかけたサタデーナイトフィーバー+くいしんぼうなのかセジュンのパチリスのネットミームなのか不明だったり(私は断然前者を支持しています)と話題に事欠かないバオッキーVSTARですが、『エンバースター』によって「消える炎の表現としてエネルギーをトラッシュするのに、トラッシュのエネルギーを使って攻撃しなければならない」という炎タイプ16年来の矛盾にメスを入れた画期的なカードでもあるのです。

ゴーストタイプにとってのエネルギー

突然なんですけど、私はずっと両バドレックスVMAXのフレーバーについて厳しい評価を下していたんですよね。Vはよく特徴を捉えているし、白馬の『エンペラーライド』は威厳ある/人を操る/馬を支配するエンペラーポケモンであるバドレックスらしい相手のベンチポケモンを参照する効果なのに、主力技である『ダイランス』『ダイガイスト』の名称と、0~2エネをトラッシュしたり場のエネを参照したりする効果に関連が見られない……と。これなんですが、こくばバドレックスVMAXについては撤回する必要が出てきました。

エネ加速・エネトラッシュを行う氷タイプの隆盛により「冷気としての水エネルギー」が一般化した今、白馬についてもいよいよ和解の時が来た

が、こくばバドレックスVMAXが出た時点でそう評価したことを後悔してはいません。これはバドレックス達の登場から1年ほどが経過した、剣盾3年目の2枚のカードを前提としているからです。
その2枚とは……ヒスイ バクフーン、ヒスイ イダイトウです。

この2枚とこくばバドレックスVMAXの関連を見る前に、まずはヒスイ イダイトウの『みたまのぼり』のフレーバーを、このカードがチラ見せされた際に行われたテキストの予測を見ながら考えていきましょう。

何かを山札に戻しながら枚数に応じて火力を出すワザなんだな、というのは公開された部分だけでほぼ確定しており、「何を戻すのか」が焦点となりました。それまでギャラドスがトラッシュのコイキングを(最近ではヘイラッシャがトラッシュのシャリタツを)参照しても山札に戻してはいなかったため、順当に考えればエネルギーでした(丁度よくタイプも先述の通り、炎タイプの次にトラッシュから山札へエネルギーを逆流させるのに長けた水タイプでしたしね)。しかし「ヒスイバスラオを戻すのでは?」という説にも無視できない魅力があり、その根拠の一つが、

フレーバーテキストが無く図鑑しか載せられないなら、図鑑にフレーバーテキストと同じ機能を担わせればいい…クレバーですね。元々図鑑が本編におけるフレーバーテキストという話でもある。
セグレイブの『きょくていおん』も図鑑説明に合わせた命名になっています

「遡上の途中で倒れていった者たちの魂を纏う」というイダイトウの設定でした。
水タイプにとってトラッシュから山札へのエネルギーの移動は「ぎゃくりゅう」ですから、倒れていったヒスイバスラオを山札に戻したら……それはもうバスラオたちの魂を川上に持っていく行為であり、イダイトウの表現としてこの上ない完璧なものになるのでは!!!????!!?!??

……結果はご存知の通り、戻すのはエネルギーでした。何もかも終わり……

……にするにはワザ名の『みたまのぼり』が不自然なんですよね。水タイプがトラッシュから山札にエネルギーを持っていくわけですから、『ぎゃくりゅう』じゃないにしろ水の流れをイメージさせる名前がつくのが普通です。いくらエネルギーの種類を水エネルギーに限定していないにしろ、『みたまのぼり』だなんて、まるでエネルギーがバスラオの御霊みたまを表しているかのような……

……。

霊って……玉なのか!?


結論を述べます。一般にエネルギーはその形状からたまと呼称されることが少なからずあり、ゴーストタイプのポケモンはたまたまのダブルミーニングによってエネルギーを人魂、魂として扱うことがあると考えられます。例が少ないので信憑性は低いですが、そうでもなければただエネルギーを、百歩譲ってただの「玉」を山札に運ぶ技が、『みたまのぼり』と称されている理由が説明できないのです。

このことを念頭に置いて見るこくばバドレックスVMAXの姿は、もはや以前とは全く異なるものとなります。もう、「『めいかいのとびら』で加速した超エネルギーで『ダイガイスト』のダメージを上げる」だけのカードではありません。「冥界の扉を開いて場という現世に霊をいくつも呼び出し、『ダイガイスト』で一斉に襲いかからせる」カードでもあるのです。そう、そのシーケンスは、ちょうど本編のバドレックスがアストラルビットを放つ際、魂を5つ呼び出し、自らの周囲に浮遊させ、一気に相手に向けて放つ様子とよく似ています。Vとは異なる形でアストラルビットを再現した奥深いデザインに真面目に向き合えなかった自分の思慮の浅さに恥じ入るばかりですし、「この読み方が想定通りだろうとそうじゃなかろうと読解が難しすぎるだろ」とキレるばかりです。

おわりに

こういう話って公式側からの供給が本当に厳しく絞られているようなので、「公式側としては自分がしたような『気づき』に、想定通りだろうとそうでなかろうと価値を見出してるのかなぁ」「じゃあこうやって非公式な解釈を撒き散らす行為って公式はどう捉えてるんだろう」と不安になることもある(傲慢!)(さりとて「ネタバレ注意」を掲げるほど傲慢でもない)んですが、基本的にはデスバーンへの進化方法みたいなものだと理解しています。ただ黙っているだけでも、直截に述べるだけでも得られないものってありますよね(いや、ガヴァガイ問題について言及した以上「まあ本当の意味で『直截に述べる』ことなんてできないんですが……」とかなり無意味な注釈を入れた方がベターなんだろうか)(ガヴァガイ問題と意識の伝達不可能性を切り分けるべきかどうかが分かってないところがニワカなんだよな)(何にせよ今してるのは公式が何か言ったらそれを真理と見なせるレベルの話だから……)。ウダウダ言いましたが別にこういう記事は書き続けます。自分がメチャクチャ楽しいので……。それでは。

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