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【ボツ原稿公開】『ジョジョの奇妙な実存哲学入門』
※これは、没になった原稿です。せっかくなので、noteで公開しつつ、完成させたいと思っています。なお当時、ジョジョは「7部(STEEL BALL RUN)」まで連載されており、「1~7部」までの知識で書いています。
■はじめに
『ジョジョの奇妙な冒険』。
我々はこの漫画を知っている! その面白さと偉大さを知っている!
1987年に連載が始まり、現在もなお連載が続いているというグレートな作品――それが『ジョジョの奇妙な冒険』だ。
では、その『ジョジョの奇妙な冒険』の魅力とは一体何なのか? なぜ、これほど長きにわたり、多くの人々を惹きつけ続けているのか?
すぐに思いつく理由としては、「知的な特殊能力バトル」が挙げられるだろう。波紋、スタンド、そして様々な個性を持つキャラクターたちが、ただの肉弾戦ではなく、知恵と工夫を駆使して戦う――これこそが、ジョジョにおける最大の魅力のひとつである。
■ 革命を起こした「特殊能力バトル」
かつての少年漫画におけるバトルは、基本的に「強敵が現れる⇒主人公が修行して強くなる⇒倒す」という単純な構造だった。しかし、この方式には大きな問題がある。敵が強くなればなるほど、主人公も強くならなければならず、戦いのインフレが止まらなくなるのだ。地球を破壊できるほどの敵を倒した後に、さらに強い敵が出てくると、もはやなんだかわけがわからなくなる。
しかし、特殊能力バトルならば話は別だ。
強さの基準が単純なパワーではなく、能力の相性や戦略に依存するため、どれほど強大な敵であっても、頭脳と工夫次第で勝機が見いだせる。その結果、戦いがインフレ化せず、常に緊張感を保ったバトルが展開できるのだ。ジョジョは、この手法を極限まで洗練させた作品だと言える。
しかし、今や特殊能力バトルはジョジョの専売特許ではなくなった。 ジョジョ以降、多くの作品がこの方式を採用し、特殊能力バトルは少年漫画の定番となっている。したがって、「特殊能力バトル」だけが(長く連載が続く)ジョジョの最大の魅力とは言い切れないだろう。
また、ジョジョの物語の展開は、ある意味ではワンパターンとも言える。
① 不可思議で不条理な現象が起きる
②「新手のスタンド使いか!?」
③ バトルが発生
④ 勝利する(To Be Continued...)→ 最初に戻る
基本的にこのループを繰り返すことで、物語は進行していく。
普通なら、こんな単調な構成では読者が飽きてもおかしくない。だが、不思議なことに、ジョジョファンはこのワンパターンをむしろ楽しんでいる。それはなぜか? なぜジョジョはワンパターンにもかかわらず、これほどまでに我々ジョジョファンを魅了し続けられるのか?
その要素とはいったい何なのだろうか?
■ ジョジョの魅力とは「人間賛歌」である
ジョジョファンならば、ジョジョの魅力やテーマを問われたとき、間違いなくこう答えるだろう。
「ジョジョとは、人間賛歌である!」
この言葉は、作者・荒木飛呂彦先生が作品のテーマについて尋ねられた際に語った、あまりにも有名なフレーズだ。
では、「人間賛歌」とは一体何を意味するのか?
一般に「人間賛歌」と言えば、人間の素晴らしさを称えることを指す。ジョジョでは、この「人間賛歌」を、単なる特殊能力バトルの枠を超えて、極限状況に立ち向かう人間の意志や勇気を描く物語として表現している。
しかし、ここではもう一歩踏み込んでみよう。
私が本書で主張したいのは、
「ジョジョ=人間賛歌=実存哲学」
という図式である。
そう、ジョジョのテーマである「人間賛歌」とは、
実存哲学のことだったのだ!
ジョジョという作品は、「実存主義」に溢れており、いや、むしろ実存主義の哲学を完璧に体現した作品だからこそ、そして、そのような核を持っているからこそ、普遍的な支持を得ているのである!
繰り返すが、本書は「ジョジョとは実存哲学である」ということを訴えかけるために書かれたものである。この主張を理解するためには、まず実存主義の哲学について深く知る必要がある。そこで第一章ではその基本的な内容を解説し、続く章では、実存哲学とジョジョがいかに整合するかを明らかにしていきたい。
本書を読み終えたとき、「なるほど、実存哲学とはこういうものだったのか!」という理解と、「なるほど、たしかにジョジョは実存哲学だ!」という納得を同時に得られれば幸いである。
という感じで「はじめに」のあいさつは、こんなもんで、
あぁ~イイッすかねェェェェェ~~、と。
担当編集「やってしまったよ」
(To Be Continued...)