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うんちく4:アングルとポジションの混同

撮影の時、カメラを低い位置に構えることを「ローポジション」と呼びますが、「ローアングル」と言っている場面をよく目に耳にします。
しかし、これは正確ではありません。

カメラアングルとは、構えたカメラの「向き」を指します。
カメラを水平に構えていることを便宜上、「水平アングル」とします。

※「水平アングル」はあくまで便宜上です。実際の撮影現場では使いません。

そして、レンズを上に向ける(見上げる、あおる)ことを「ローアングル」。

下に向ける(見下ろす、俯瞰の)ことを「ハイアングル」と言います。

つまり、カメラアングルは単にカメラの「向き」のことであり、カメラをどの「高さ」に構えるかは関係ありません。

一方、カメラポジションは、カメラをどの高さに構えているかを指します。カメラマンが立ってカメラを構えている高さを「アイレベル」といいます。
それより下は「ローポジション」、上は「ハイポジション」と言います。

カメラを低い位置に構えつつもレンズが水平になっている場合、それは「ローポジション+水平アングル」となります。
反対に、高い位置にカメラを構えつつもレンズが水平になっている場合は「ハイポジション+水平アングル」となります。

混同するのはここからです。
ローポジションにカメラを構えて、レンズを上に向ける(下からあおる)と、「ローポジション+ローアングル」になります。
ハイポジションにカメラを構えて、レンズを下に向ける(上から見下ろす)と、「ハイポジション+ハイアングル」になります。

こういう構図で撮影をする場面が多いので、アングルとポジションを混同してしまうのです。

ちなみに、映画史を語るときに、小津安二郎監督の特徴は「ローアングル」と言われることがありますが、それは完全な間違いです。
正しくは「ローポジション」、さらに厳密に言えば「ローポジション+水平アングル」になります。

『東京物語』より

小津作品はカメラを低い位置に構えているものの、レンズは目線と水平になっています。下から見上げてもいませんし、上から見下ろしてもいません。

以上のように、アングルとポジションは異なる概念であり、正確な用語を使い分けることが重要です。

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