エコノミークラス症候群の予防、災害関連死をゼロに 2024/05/11
能登半島地震から4ヶ月が経ちましたが、現地は厳しい状況が続いています。
4月29日に輪島市旧門前町で行われたエコノミークラス症候群の予防検診の様子を視察してきました。
地震などの災害により避難生活を余儀なくされると、身体の活動が不活性となり足に血栓ができ、肺塞栓症(血栓が肺の血管を塞ぎ、死に至らせる病気)の発症のリスクを抱えることになります。特に避難所で簡易ベット(段ボールベット)を使用しない雑魚寝や、また、狭い車のなかでの睡眠が、身体の不活性、血栓の発生を誘発することが分かっています。
災害関連死を防ぐためには、被災時の生活環境の整備、体を動かすようにすること共に、予防のためのエコー検査の実施が重要です。
能登半島地震の被災地はいまだ危険な状況
能登半島地震の現場では1⽉8⽇から4⽉29⽇まで計18回、穴水町、旧⾨前町(輪島市)、輪島市、能登町、珠洲市で、エコー検査によるエコノミークラス症候群予防検診が、全国から駆けつけた医師、地元の臨床衛生検査技師の皆さんにより実施されてきました。その結果、1548⼈中136⼈(8.8%)に、下肢深部静脈に⾎栓が⾒つかりました。そのうち、一人は⾎液検査でDダイマー値が異常⾼値で、専⾨病院に搬送したところ、重症の肺塞栓症が⾒つかり、⼊院となりました。
また、4⽉24⽇には旧⾨前町の避難所から肺塞栓症で⽳⽔総合病院に救急搬送された患者が救急⾞内で⼼停⽌となり、亡くなられています。
災害関連死につながるエコノミークラス症候群
今回の震災で血栓が見つかった方の比率8.8%は通常1~2%という出現率と比較して極めて高い状況にあるといえます。血栓が見つかった場合、早期に治療すれば、血栓を消滅させることができますが、それでも約1割の方については血栓が消えず、その後も注意が必要な状況となります(そもそも血栓ができる事態を回避するために簡易ベッドの利用が必須です)。
私が参加した 4⽉28⽇、29⽇の⽳⽔町、旧⾨前町(輪島市)で行われた、エコノミークラス症候群予防検診でも、257⼈中21⼈(8.1%)に⾎栓が⾒つかっており、⾎栓が⾒つかった⼈の中には、Dダイマー値が高く、治療しないと、肺塞栓症が発症して危険な⽅もいらっしゃいました。以上から、いまだ能登半島地震被災地では、下肢深部静脈に⾎栓がある⼈が多いと考えられ、災害関連死予防のために検診の継続が必要です。
必要なエコー検査を実施する体制構築が急務
今回の検診活動は、3月末までは⽇本医師会の災害医療(JMAT)として行われたため、予算がありましたが、4⽉以降は予算がありません。今後も検診を続ける必要性は高く、厚生労働省に対して予算措置を依頼したり、内閣府防災にはこうした検診が災害対応のメニューから抜け落ちていることを指摘したり、また、検診の実施のための権限、組織、予算を制度化するよう、5月10日内閣委員会にて要望いたしました。災害は、全国共通の課題です。横浜もいつなんどき襲うかもしれない大震災に備え、災害関連死ゼロを目指し、減災の取り組みを今後も提案してまいります。
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