インド・カシミールの歴史 (ラージャタランギニー)#1-7
182. ニーラ(ナーガ)は、蛇の主として、この地を守ってきたので、カシャパ仙の子孫である、月の上様(candradeva)という再生族が、彼のために、苦行に身を焦がした。
183. すると、彼の目の前に、現れたニーラが、破滅的な雪を消し去って、自分のプラーナにある儀式を、再び行うように告げた。
184. いにしえにいた、月の上様(candradeva)は、ヤクシャ(夜叉)の増長を鎮めて、二人目であるこの者は、この国で、耐えきれなくなった、仏陀の乞食者ムニたちの増長を鎮めた。
185. 王である、三代目の牛の喜び(gonanda)は、この時期に王位を得たので、ナーガたちへの巡礼や進物などを、元の状態へと戻した。
186. この王が、ニーラの昔話にある儀式を、元に戻したことで、ムニたちへの雪による被害も、いたるところで、鎮まっていった。
187. その時代その時代に、下々の者たちの功徳によって、地上を愉しむ者たちが姿を現し、この盆地の絶望的に破壊された状況を、立て直していく。
188. 臣下の搾取しか知らない王たちは、その一族とともに滅びていくが、破滅を立て直そうとする王たちは、その栄光を、竹節(vaṃśa)がつながる者たちに残す。
189. こうして、この国に起こった出来事の結末にある、特徴を見ていけば、大地の守護者たちの将来を見分けることができ、その、運と不運、繁栄と没落を知ることができる。
190. この国を新しく生き返らせたのち、彼の竹節に続く者たちは、この地において、最も優れた軍を持つ者(pravarasena)などによって、善政を施し、長い間、愉しみを得た。
191. 牛の喜び(gonanda)は、王朝となる一族の最初で、それはラグ(ラーマ)がラグ王朝の始祖であったようで、この人の主は、カシャパ仙の地を、三十五年間、治めた。
192. 六十年に、六か月と六年を残したところ(53年6か月)まで、戦慄(vibhīṣaṇa)という名前の、牛の喜び(gonanda)の喜びである息子が、地上を守護した。
193. インドラに勝つ者(indrajit)とラーヴァナに二人が、父と実の子として、順番に人の守護となり、それぞれ、三十五年(35年)と、半分の年と三十年(30年6か月)が過ぎていった。
194. その表面に浮かぶ点線と、色合いを見れば、将来起こることを予言するという、バンヤンの木の主シヴァ(vaṭeśvara)のリンガが、このラーヴァナの祝祭のために、つくられ輝いている。
195. 四方に広間を持つ学舎の中で、この大地を愉しむ者は、バンヤンの木の主シヴァ(vaṭeśvara)のリンガの色合いを見て、カシミール盆地のあらゆる予言を受け取ろうとした。
196. 三十五年の間、地上の暮らしを愉しんだ、地上を愉しむ者である、二代目の戦慄(vibhīṣaṇa)は、この地を抱く者ラーヴァナの子息であり、さらに半年を暮らした(35年6か月)。
197. その後、天界の住人という、もう一つの名前を持ち、天界の者たちがその勇敢さを歌にしたのは、戦慄(vibhīṣaṇa)の息子で、人(nara)という名前の者が、人の主となった。
198. 彼は、徳を備えた人の守護であったが、家臣の功徳による幸運が、反転したことで、官能の過ちから王国に闇をもたらし、大きな不幸が、次から次へともたらされた。
199. 天界の住人(kiṃnara)の荘園に住んでいる、寺院の住人の一人が、そのヨーガの力を使って、行者の最愛の妻をさらってしまったことがあった。
200. このことに怒った王は、幾千もの寺院を焼き払い、その荘園を、学舎に寄宿しようとする再生族たちに与えた。
201. 幾筋もの街道を、豊富な品物を並べた市場が立ち、燃えるように美しい渓谷を下る深い川を船が行き交い、花と果物に満ちた王宮の庭は、天界の庭の中にいるように言われた。
202. 四方位で勝ちを修め、勝ち取った莫大な富で、莫大な富を持つクベーラの町にも勝てるような、ヴィタスターの砂洲に、自分の都を全きに建設した。