インド・カシミールの歴史 (ラージャタランギニー)#2-1
第2河
1. 片や羊、片や牛の二本の角の端で、弓を生み出すように、片や人、片や額の光る象の体を半分ずつ、合体して、ガネーシャを生み出すように、好ましい二つのものを巧みに合わせ、豊かさに相応しい、あまねく勝利を得るシヴァは、美しい女性と、男性の体を、二つ合体させている。
2. 再び、王位に復位しようという努力を、大地を愉しむ者が、捨て去ったのは、老いた年に加え、慰めの言葉が、耳の根元にまで届いたからだった。
3. 次第に、育ちの良い寛容な王は、自ら政治を執った王位への熱を失い、自らを制御して、正確な五つの感覚を保つことさえ、その意欲を失っていった。
4. あるいは、王位を目指して、滅びない城塞(durgāgalikā)に攻め入ったものの、味方の大臣たちによって、包囲され、しばらくの間、捕縛されていたという者ものもある。
5. そして、熱を放つアディティ(pratāpāditya)という者を、大臣たちはよその国から呼び、大地を抱く者、勇猛のアディティ(vikramāditya)と近親である彼は、そこで、灌頂を受け、王位に就いた。
6. この勇猛のアディティ(vikramāditya)を、シャカ族の敵として名高い王と、勘違いして、書かれたほかの書物を頼りにした者たちは、混乱を生じ、誤っているので避けるべきである。
7. 内部の分裂で弱っているところに、歓喜(harṣa)王など、豊かな地を愉しむ王たちが、この地を襲い、愉しみを得ていくことが、これ以降、長きに亘って、この盆地で続いた。
8. 前例のないことだが、王はこの大地を、前例となる、地上を愉しむ者と同じように、この地を愛し、まるで、恥じらう花嫁の心のうちを知った花婿が、これを愛するかのようだった。
9. 愉しんでいるうちに、三十二年の月日が経ち、この王が天に昇ると、その息子で、二代目の、水の者(jalaukas)が、大地を照らす飾りとなって、その地位を継いだ。
10. 父王と同じだけの期間、繁栄をもたらしたことで、彼はこの地を照らした。大ソーマ祭の中日(viṣuvat)、冴え冴えとした光を照らす満月が、寒さを知らぬ太陽の炎と、同じくらいに照らすように。
11. そして、言葉の豊かさ(vākpuṣṭā)という伴侶、神々しい力を持つ皇后を得て、その力を愉しむように、叩く者(tuñjīna)が王位に立って、付き従う者たちを喜びで染めた。
12. この王妃と王が、二人で、この肥沃な土地を美しく飾ったのは、まるで、激しく流れるガンジス川と、鹿を刻んだ三日月の、二つが、髪を垂らしたシヴァの頭に乗って、結った髪を飾るようであった。
13. 盆地に道を伸ばして、繁栄をもたらし、二人は、さまざまな色合い(階級)の人々を本心から喜ばせた。それは、百の色で構成される稲妻と、水を運ぶ雨雲の二つで、大インドラの弓である虹をかけたようだった。
14. また、幸運が高く際立つ二人は、大地を照らす飾りとして、立ち回り、高い者の主シヴァ(tuṅgeśvara)の寺院を、シヴァの住む山に、尾根(katikā)という名前の町とともにつくった。
15. 南部マダヴァの国の中では、激しい暑さで燃えるような土地があり、その力で、たわわに実る木々が、瞬く間に育っていった。
16. その舞踏劇をすべての人々が見たという、優れた詩を書いた詩人で、半島生まれのヴィヤーサ仙から詩才を受け継いだ、小月(candaka)が、その頃、活躍していた。