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謎だらけのオジイサマ

私の実家絡みのご先祖様は、亡祖父が先祖調べをしてくれたおかげでご先祖様で「全く分からない」という方はゼロに近い状態です。

しかし、夫のご先祖様はあまりにも情報が無く。
江戸末期の家業が、大まかに分かったのは2家だけでした。

情報が少ない中で、1番謎に包まれている人物がいます。
夫から見て、父の父の母の母の父に当たる方。
誰それ?と言われそうな古い方です。

この方、天保10年。1835年に志太郡で誕生しているようです。

戸籍に、生家の記載は一切無い養子さん。
良くある、妻が前戸主の娘というタイプでもなく。
妻も他家から嫁に入っているという、両養子のようです。
こういう場合、夫か妻のどちらかに養子先と血縁がある場合が多い様です。

何はともあれ、このオジイサマ・・・新兵衛さんは無事、五男三女を設け、養子入籍した家を建て直しました。

そして、55歳で息子に家督を譲り。
残りの人生を悠々自適に暮らすのかと思いきや。
59歳で、突然失踪。

10年後に死亡届けが出され、数ヶ月を経て家族の元へ死亡届けが出された旨が報告されるという摩訶不思議な状態で生涯を閉じています。

しかも、失踪場所が・・・今の静岡県焼津市。
死亡場所が、今の北海道北見市常呂。

ちょっと、距離感がバグっています。

明治期は、北海道に開拓に入る方も多く。
そんなに、北海道に移住するのは珍しくも無いと思われるかも知れませんが。家族に何も告げず、60歳近い方が失踪し北海道で労働をするというのは一般的では無いはずです。

しかも、静岡という土地は比較的温暖で気候も穏やかな土地です。
他県で先祖調べをすると、生きる為に先祖は色々な土地を点々とする事が多いらしいですが。
静岡県に先祖を持つ方は、ほぼほぼ一度の請求で終わると言われるほど恵まれており、移住も考えない土地だったりします。

何せ、静岡では昔から食べていけなくなったら乞食になれば良い
なんて、言われるくらいですから(苦笑)

高齢になって、単身北海道に乗りこんで開拓する必要なんてほぼゼロなんですよね。しかも、このお宅・・・多分、漁師です。
焼津の小川港の近く、昔はこんな場所に住む方は漁師しかいないハズなのです。だから、開墾とか基本的にされないと思うのです。

この方の失踪に関する記述が本当に不思議なのです。

明治27年4月中旬頃から居ない気がします。と、翌年の9月に役場に届け出をしているのです。ご隠居さんとは言え『4月中旬頃(推定)』とか酷すぎないですか?
1年半ほど前に失踪しているのに放置していることになります。

また、27年4月中旬に失踪後。半月ほどで妻が死亡しています。
失踪から半月で妻が亡くなっている事を考えると・・・。
夫の失踪時には、かなり衰弱していたと考えるのが妥当でしょう。

普通、常識的に考えれば長年連れ添った妻が死の床にある状態で失踪はしないと私は信じたいのです。何があったの?と謎が謎を呼びます。

余りに謎で、興味を持って調べ始めました。北海道の移民関係資料や、開拓資料を北海道から取り寄せたり。
北見市での現地調査と、現地で郷土史家さんへとお話を伺ったりしました。

その結果、新しい視点が生まれました。

当時、常呂には岐阜県からの移民が来ていたそうです。
同じ中部地方ですが、かなり地域が違うので一緒に来ることは無いでしょう。
もっと言うと、岐阜の開拓団は、濃尾地震で地元の復興が難しく。
新天地を求めて移民したというのです。

当時の北海道は鬱蒼とした原生林があり、若い男性でも大変な開拓だったとそうです。当時としては高齢な60歳くらいの男性が、単身乗りこむ事はあり得ないだろうと想像するのは容易です。

では、可能性としてどんな事が考えられるでしょうか。

郷土史家さんによれば「別の地域に、地元の開拓団として入植して流れて来た」または「当時、ニシン漁が大変お金になっていて他地域からもニシンを追って漁師が入って来ていた時期なので、その中の1人ではあるまいか?」というお話でした。

ただ、私が気になるのはニシンを追いかけて北海道に来たのなら。なぜ、地元に戻らず常呂で死亡しているのか。

郷土史家さんが言うには、同居人が死亡届をしている所を見ると「工場が幾つか有ったので、そこで働いていて社宅で亡くなったとかそういうタイプの届出だと思いますね」と言うのです。

さあ、もっと分からなくなってきました。

その後、唯一『つじつま』が合うであろう推測が出来ました。

これは、飽くまでも推測ですがこれ以上の答えは見つからない気がしています。さあ、皆さんだったらどんな推測をするでしょうか。

最後に、その推測を書いて終わりにしたいと思います。

失踪のその日、新兵衛はいつもどおり船で沖へ漁に繰り出した。
もう、年齢も年齢であることから「自分と家族が食べる分」だけの漁で構わない。小さな小舟で沖まででて、直ぐに帰るつもりだった。

そこで、突然天候が悪化。
竜巻が起きやすい地域でもあり、竜巻に襲われたのか気がついたら船の上で気を失っており。陸も見えない。既に暗闇で星明かりしか見えず。
黒潮に流されて、どこまでもどこまでも行くのだろうと彼にも何となく想像はついていた。

朝になって、また夜になって、朝になり。
もう、ダメだと思った頃。

彼は、どこかの港に漂着した。
そう、黒潮は北へ北へと流れて行くものだから。

どうやら、流れ流れて東北のどこかにたどり着いた。もしかすると、北海道の函館辺りだったかもしれない。

そこで、北海道はニシン漁で大金を稼いでいる漁師がいると小耳に挟んだ。

小さな船だが、漁師として自分も一攫千金を一生に一度くらい夢見てもいいんじゃないのか?新兵衛は思った。

結局、北海道の地で身に余る程の大金を得て、死の床にある妻に贅沢をさせてやりたいと思った。

最初は、すぐ変えるつもりだったが…。
ニシンを追いかけ、どんどん北上したが一攫千金は夢に終わった。

今更、家族に見せる顔も無い。きっと、もう妻も亡き人になっているだろう。帰る旅費も無い。

新兵衛は、船から下り。
牧場や、工場を点々として最終的に常呂まで来て寿命が尽きたのでは無いか。そういう推測しか出来なかった。

常呂で、69年の生涯を閉じたのです。
死亡届は、同居人によって出され。常呂の土地に埋葬されたのでした。

これ以外の推測が付かない、不思議な夫側のご先祖様でした。

蛇足:この方、西洋占星術で言う所の活動宮のグランドクロスをお持ちです。やぎ座の月と、みずがめ座の天王星、天秤座の土星、双子座の木星。
行動力あるし、ガツガツいけるけれど。情報を入れすぎて暴走していきそう・・・。と思ってしまったのは内緒です。

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やまゆき
大変光栄です!ありがとうございます❤️