初北海道2日目 1989年7月25日-① 羅臼〜知床峠
夜中に一度も目を覚ますことなく6時20分に起床。窓の外に目をやると日が差していることがわかった。旅の天候はやはり晴れがいい。
荷物整理をしたり地図を眺めていると7時を過ぎたので1階の食堂に行き朝食を取る。すでに1組の家族連れが楽しそうに食事を始めていた。テーブルの上には朝から魚介類と山菜類が溢れそうな豪華な料理たちが並ぶ。空腹野郎になっていた僕はあっという間にたいらげて部屋に戻る。まとめてあった荷物を持ちフロントで支払いを済ませてジェミニに乗り込んだ。さあ2日目の旅が始まる。
駐車場を出てハンドルを右に切ると、そこはもう夢にまで見た知床横断道路だ。アクセルを踏み込み高度をどんどん上げていく。抜けるような青空と輝く緑の葉が目に痛いほど輝き、窓からは朝の汚されていない北国の新鮮な空気が車内に入り込んでくる。何という心地よさだろう。
見通しの良い直線部分で車を停めてエンジンを切る。その瞬間、聞こえてくるのは風の音とその風で木々や草が揺れる音だけになる。原始に近い人工音のない世界。前方にはR334の標識が立っているのが見える。「来たぞー!!」と思わず大声で叫んでしまった。
再び走りだし右への大きなカーブを抜けると目の前には存在感あふれる山容が姿を現した。知床半島の主峰の羅臼岳だ。旅に出る前、羅臼岳については特に期待をしていたわけではなかったけど、ひと目見た瞬間にその圧倒的なパワーにやられてしまった。運転していても視線をやらずにはいられない存在感。最高の山だ。
そして林の中には時おり白い雪の塊が見えた。真夏の太陽が照りつけるこの時期にでさえ残る雪。この土地の冬の厳しさを垣間見ることができた。と同時にますます冬の北海道への憧れが膨らんでくるのを抑えることが出来なかった。
知床横断道路のピーク、標高750Mあまりの知床峠に到着。つい20分ほど前には潮の香りのする漁港の街にいたというのがウソのようだ。すでに駐車場は観光バスや乗用車、そしてツーリングバイクで賑やかだ。峠から見える羅臼岳も恐ろしくパワフルでこちらに向かってくるような圧迫感のようなものさえ感じることができる。至福の時間、という言葉がぴったり当てはまる最高の時を過ごすことができた。
だからこの場を立ち去るのは気が引けたけど、ここから先にもまだまだそんな時を過ごすことのできる場所が待っていると考えて出発。さあ行くぞ!まだ見ぬ絶景と爽快な道を求めて!!
知床峠の駐車場を出て最初の左カーブを抜けると、右前方に海が広がっているのが見えた。初めて見るオホーツク海だった。とにかく息つく暇を与えさせてくれないほどの連続攻撃で、感動の場面が次から次へと現れる。それが知床横断道路だった。