初北海道4日目 1989年7月27日-⑤ 愛冠岬〜釧路
愛冠岬の超絶景に満たされた僕は再び車上の人になった。厚岸大橋を渡りR44号線に戻り釧路方面に向かう。模範運転を励行する大型タンクローリーを先頭にした車列に加わってしまい、ゆっくりゆっくりと西に進む。まあ急ぐ旅でもないので周りの景色を楽しみながらのんびりと走る。
1時間ほど走ると初日に曲がっていったR 272号線との分岐の交差点を通過した。そしてすぐに、あの日ジュースを買った別保駅前の自動販売機を発見。思わず車を停めた。
あの時、自分の目の前を走り去っていくツーリングバイクのグループを見て、仲間がいていいなって感じた場所だ。
たった3日前なのに、なんだかもうずっと前の出来事のように感じる。
そして今、あの時には寂しさを感じていた一人旅を、心の底から思う存分楽しんでいる自分がいる。
ずいぶんたくさん走ったよなあ。
そして、明日で終わっちゃうんだなあ。
やっぱり絶対にここに戻って来なきゃなあ。
そんな感じに少しセンチメンタルになりながら3日前と同じように車に寄りかかりながら炭酸飲料を飲んで、僕は再び西に向かい走り始めた。
遠くに高い煙突が見え始めた。
釧路の街は、近い。
高校時代、長野に夏合宿に行った時、八王子インターに戻ると帰ってきたなあって思った。
大会で大井埠頭に行った時は、小平駅に戻ると帰ってきたなあって思った。
そして今日、僕は釧路の工場と煙突を見ると帰ってきたぜ!!って感じた。
全然、自分の街じゃないのに(笑)
夕方5時過ぎの釧路の街は、なんだか自分の住む町のようにやわらかい雰囲気で僕を迎えてくれた。
道路沿いの電話ボックスを見つけ、今日の宿を探す。4つ目にかけたホテルで北海道最後の夜の部屋を確保、市の中心部にあるそのビジネスホテルにチェックインした。
北海道ひとり旅最後の夜。釧路。今なら間違いなく美味しい魚介類を食べに街に繰り出しているけど、当時の僕はそんなことに全く興味がなく、釧路駅ビルにミスタードーナツを見つけそこでアメリカンなディナー(笑)。明日ようやく行くことのできる待ちに待った念願の釧路湿原について調べるべく、テーブルの上に地図を広げドーナツにかぶりついた。