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初北海道2日目 1989年7月25日-③ 知床五湖〜知床大橋

知床林道に入った。本格的なダートの林道を走るのはこれが初めてだ。万が一のために急ブレーキや急ハンドルの時に車がどんな動きをするのかを知っておきたかったので、前後に車がいないことを確認して何回か練習をしながら進んだ。

左側に生い茂る木々の合間からオホーツク海のブルーが時折顔をのぞかせる。確かガイドブックには「知床林道は整備が行き届いており走りやすい」と書かれていた事を思い出し、これが走りやすい林道なのかと苦笑いする。徐々に運転に慣れてきた頃、路肩に停まる車がチラホラと見え始めるとそこはカムイワッカの滝だった。

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手前の空いているスペースに車を停める。空気の動きが止まり暑さが全身にまとわりつく。北海道の夏を甘くみていた。暑い。

カムイワッカの滝は滝の上部が天然の温泉になっている知床の名所だ。そこを目指し滝登りをしている人が大勢いる。目の前に展開するのはまさに雑誌で見たままの光景だ。残念ながらお風呂セットを持ってきていなかった僕は滝登りには加わらず、知床林道をさらに車で先に進んだ。

ほどなくカムイワッカ展望地と呼ばれる場所に着いた。特に駐車場があるわけでもなく、見たい人は路肩に車を停めて見るスタイルだ。もちろん僕は見たい人だったので車を降りる。そこから視界全体に広がるオホーツクは空よりも断然青く、波もなく穏やかな水面が遠くまで広がっていた。その青さを見ながら、ここが冬には一面流氷で覆われてしまうんだよなあと、その光景を想像する。やっぱりココには冬に絶対に来ないとダメだ。

知床林道はまだ続く。2〜3分走っただろうか。大きな赤い知床大橋を過ぎすぐに左にカーブすると前方に鎖のゲートが見えた。そこからそれ以上先には進むことができないようになっていた。そしてそこが知床林道の終点だった。ひとまず一般の人が自由に到達できる知床半島の最終地点までやってきた。僕の他に誰も人はいなかった。

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知床とはアイヌ語のシリエトク、「地の涯て」という意味だ。

僕は今、地の涯てにいる。暑い日差しを受けながら目の前で閉ざされたゲートを見て、暫し感慨深い時を過ごした。

※現在では知床林道は自然保護のため一般車両は通行できない。今となってはあの時思い切ってハンドルを切って林道に向かった自分を褒めたいと思う。


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