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ディヴィッド・ダーリング『「この世でいちばん」を科学する 惑星から音、温度、臭い、生物まで』原書房

科学で限界とされるもの、極端なものを取り上げたものが、本書である。科学的根拠を持って、限界の世界を探究したものである。

いつまでも残る音
残響時間とは、屋内空間で音源が停止してから音が消えるまでの時間のことで、一般には音量が60デシベル小さくなるまでの時間のことらしい。1941年に完成した英国ロスシャー地方インヴァーゴードン地下の巨大石油タンク群の5基あるメインタンクの大きさは、それぞれ奥行き237メートル、幅9メートル、天井高13.5メートルある。

サルフォード大学音響工学教授のトレヴァー・コックスは、BBCの番組でこの施設を知り、2014年、タンクのひとつの内部で拳銃の空砲を撃ち、その音を記録した。そのときの残響時間112秒が、史上最長とされる。

残響は、反響と関連してはいるが同じものではない。残響は反射波が何度も生じた結果であり、その音は脳で処理され、連続した複雑な音となる。

一方、反響は、音が何かの表面に当たって跳ね返って、まったく同じ音が静かになっているがはっきり聞こえる。最初の音と跳ね返った音との時間差が50秒以上あると、ふたつの音は別々に発せられたものと認識される。反射面が少なくとも17メートル離れていないと反響は聞こえない。

宇宙最大
これまで確認されている宇宙構造体のなかで最大なものは、ヘラクレス座・かんむり座グレートウォールとされている。その長さは100億光年を超える。

しかし、その存在は天文学者にとって頭痛の種となっている。宇宙全体は比較的滑らかなものとされているが、その存在は見るからにでこぼこしている。どうしてそのようなことになるか説明する仕事を抱えてしまった。

くっせ~
嗅覚は人間の五感のなかで最も古い。太古の昔、バクテリアのような原始生物は、身のまわりにある化学物質に反応できた。嗅覚情報は、視床下部を通らずそのままダイレクトに脳内の臭球に伝えられる。このため言葉にすることが難しいとされている。

世界で最も広く好まれているものは、ヴァニラの香りだとされ、桃とラヴェンダーの香りを構成する物質がそれに続く。悪臭は腐った食べ物の臭いなどで、多くの場合、健康や命に悪影響を与える。

万人が避けるべきとする植物は、タイタン・アラム(ショクダイオオコンニャク)、ラフレシア・アルノルディイ(死体ユリ)である。果物ではドリアンである。一般食品では、リンブルガーまたはランブールと呼ばれるチーズで、足裏ににおいを連想させる。

動物ではスカンク、コアリクイで、悪臭スプレーにチオールという有機硫黄化合物が含まれている。最悪に臭い化学物質のチオアセトンも有機硫黄化合物であるが、水で希釈するとさらにひどくなる。

1967年、オックスフォードシャー州のアビンドンのエッソ研究所で、チオアセトンを入れた容器の栓が緩んで、180メートル先の建物で吐き気や気分の悪さを訴える人が続出した。

本書は、以上を含め45項目にわたり、奇妙なもの風変わりなもの、そして極端なもの挙げている。科学は、極端なものを探究し続けていく。すなわち、ヒトは極端なもの探究し続ける動物であると言える。

宇宙の中、世界の中で、科学的に何が1番なのかを知りたいのであれば、本書を読んでみるとよい。自らの蘊蓄を広げることもできる。


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