年金は繰り上げは絶対にダメですか?
年金の支給開始年齢は、現在、65歳となっています。65歳より前から支給される特別支給の厚生年金がありますが、老齢基礎年金は65歳が支給開始年齢です。しかし、年金の繰り上げ制度と、年金の繰り下げ制度があり、60歳から75歳(昭和27年4月2日以降生れの場合)までの間で選択できることとなっています。
これにより、それぞれの受給者の生活実態により、柔軟に選択できます。年金の繰り上げをすれば年金の支給額が減り、年金の繰り下げをすれば年金の支給額が増えることとなるため、年金開始年齢による年金支給額の増減について、よく検討することが必要となります。
年金相談員の立場から言えば、年金の繰り上げについては、そのデメリットについて十分過ぎるくらいの説明をすることとなります。年金を繰り上げても、早くにお亡くなりになった人は後悔する暇がありませんが、長生きされた人は繰り上げ請求について後悔なさる時間が十分あるからです。少しでも苦情とならないようにとの気持ちが働いてしまいます。
実際に繰り上げ請求する場合、老齢年金の「年金請求書」に加えて「支給繰上げ請求書」および「老齢年金の繰上げ請求のご確認」という書類の提出も求められます。特に、「ご確認」には、繰り上げ請求のデメリットがしっかりと記載されており、その内容について理解してもらうこととなります。
しかし、繰り上げ請求をした方が得だと主張する意見もあり、週刊誌などに記事も掲載されることがあります。それは、年金収入が増えて非課税世帯から課税世帯に変更となると、税金面だけでなく各種の負担が増えるというのものがおおよその内容と思われます。
そのためか、かなり所得があるので、年金により課税所得を増やしても意味がないと考える人や、まれですが早くもらって投資した方が得と考える人もいます。これらをかたく信じている人の場合は、その人の意思を尊重することとなります。そうは言っても、あえて非課税世帯にしたいがために繰り上げ請求をするという考え方はあまり賛成できません。
一方、60歳以降、収入がなくなる人、収入が大幅に減る人の場合は、年金の繰り上げ請求を行わないと生活ができない場合があります。しかし、その場合でも、多少なりとも収入のあてがあるのであれば、できる限り繰り上げ請求の時期を遅らせることをお勧めしています。また、ローンの返済が60歳以降も残っており、この返済のため繰り上げ請求を考慮しなければならない場合も、同じように考える必要があります。
ところで、昭和37年4月2日以降生れの人は、繰り上げ減額率が0.4%に引き下がるよう改正されることになりました。現在は1ヵ月当たり0.5%の減額ですが、改正が該当する人は1ヵ月当たり0.4%の減額で済みます。やむを得ず繰り上げ請求しないといけない人にとっては朗報です。しかし、あくまで昭和37年4月2日以降生れが対象なので、それ以前の生れの人は現在の減額率0.5%のままです。
年金の繰り上げ請求は、後から取り消すことはできません。障害基礎年金の請求ができなくなるというデメリットもあります。そして、繰り上げ請求は65歳になるまで、いつでもできます。絶対にダメではありませんが、後悔しないよう慎重に検討することがよいと思われます。