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6月のヨンダ

もう8月もお盆過ぎました•••なのに😔老後の楽しみの毎月の読書日記さえも書けないって、どんだけ根性ナシなんだ?と思う今日この頃、w

オリンピックのアスリートのみなさまを見ても、ああ、続けるって、もうそれだけですごいんだと思います。昔からダメなんだー。

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さて、6月の読書は ↑こちら。6月ですってよ。

とにかく『祖国』に尽きました。2016年にスペインで刊行され、スペインだけで120万部超の大ベストセラーになり、本国のみならず欧州でもさまざ文学賞を受賞した小説。世界32か国で翻訳され、2020年には、あのHBOでドラマ化も。

タイトルの祖国とは、スペインのバスク地方のこと。作者はフェルナンド・アラムブル氏で、1959年バスク州サンセバスティアン生まれ。

バスクと言ったら、なにを思い浮かべますか?美食?バルのホッピング?きれいな砂浜と街並み?バスチー?そう、それってほんとに今はそうなんだと思います。

が、私にはどうしても、ETAなんです。バスクの独立を目指していた『ETA エタバスク祖国と自由』。スペインやフランスのバスク人居住地域を分離させ、独立国家とすることを目標としていた民族組織。

かれこれ25年ほど前でしょうかー。私は仕事で、2年間、平日は毎朝、スペイン国営放送(TVE)のニュースを見ていました。もちろん、日本語の翻訳付きです。

その頃、トップ3項目には、ほぼ毎日、ETAが入っていました。なんならETA一色なことも。彼らが、苛烈なテロを繰り返していたから。20代の私はバスクがどこかもよくわかっていなかったけれど、毎日流れる IRA(※1)とETAのニュースに震えあがっていました。

先進国でしょ、欧州でしょ?車がバスが、まるっと爆破されたり、ごみ箱に仕掛けられた爆弾が爆発したり、普通の市民(だとしか思えない人)が、いきなり銃で襲撃されたり、要人が誘拐される、なんてことが、日常的に起きている(BBCもよく取り上げていて、容赦なく血だらけの人も写される!)・・バスク地方だけでなくマドリッドでもバルセロナでも、武装し、テロ行為を繰り返している。いったいバスクって?ETAって?怖すぎる・・と思っていました。どこなの?どんな歴史が?とはじめて地図を見る気になり、サンセバスティアンの名も、フランコ独裁政権と戦ったことも、そこで初めて知りました。

しかしその仕事を離れて、もう忘れかけていた時、たしか、10年くらい前からでしょうか?バスクに、おいしいものを食べに行く、なんて話を聞いて、ぶっ飛びました。え?バスクって、あのバスクですか???危なくないの?怖くないの?と。

聞けば、ETAは停戦合意し、武装をやめ、事実上の解散へ。バスクは国境の町や山間を訪ねても安心なほど平和に。そう、スペインを代表する観光地になるくらいに。(※2)

『祖国』には、その停戦、解散に至る前の、苛烈な闘争時代を、さまざまなバスク人がどう生きたか?が、小さな二つの、向かいあって住む仲良し家族を通して描かれています。

なぜ息子はETAの戦闘員になったのか?なぜそれを否定した息子はバスクを離れなければならなかったか?バスクを愛し誇りに思っていたバスク人の夫が、なぜETAにより殺されなければならなかったのか?もしかして、手を下したのは子供の頃から知る親友の息子なのか?一緒に教会に通っていたあの家族が?さらには、バスク人と親戚になったバスク人ではない人々は、何をどう見ていたか?

名もなき人々の視点から綴られる現代史。

ETA=悪、テロリスト集団、とスペインニュース目線でしか見ていなかったけれど、市井の側から丹念に見れば、翻弄される彼らのなんと切ないことか。

中でもETAに人生を捧げた〝息子〟が、収監され監獄で生きることになり、人生を振り返り、謝罪に至るまでの姿には、共感はできないけど、泣けました。崇高な思想にかられたわけでもなく、自分の生きる場所をETAに見いだしただけ、それなのに?恋なんて甘い記憶もないまま、ずっと童貞でね..。そう、40を過ぎて監獄で童貞のテロリスト。陳腐な表現だけど、青春も人生も捧げたもの、それは一体なんだったのか?

あるいは、家族を幸せにするために必死に働き、その結果ささやかな成功をした愛する夫を、ある日、ETAの戦闘員に殺された妻。しかし、ETAに狙われる=バスク民族全体の幸せを最優先にしていない資本家 という理不尽な構図で、夫の命はもとより、名誉さえ回復できない。彼女は老いゆく中で、そんな歪な祖国の姿に凛として立ち向かう、彼女自身が絶望しないために。

愛国心とか誇国心ってなにか?といった大きなテーマがあるのでしょう。しかしその前に、繰り返されるだけに見える退屈な日常と、狭く小さな世界で、どうにも希望が見つけられないとき、人はどうするのか?なにを喜びに生きていくのか?と、考えさせられました。早々に絶望しないために、深く考える間もなく、大義らしいものに導かれることもあるのかもしれません。

今のアフガニスタン、タリバンのニュースの奥にも、さまざまなドラマがあるのでしょうねー。

きっとその場所、スペインで渦中を生きてきた人は、事情を知り、考え、身につまされ、自らの経験と重ね、あの時代を振り返ったと思うんです。カタルーニャの独立問題もあったわけですし。だからこその120万部なのでしょう。

それにしても、です。上下巻のボリューム、時系列が錯綜し、語り手が次々に変わり、かなりな集中力を要する本。まず名前とキャラを把握するのがたいへんな翻訳本あるある以上に、スタートからの半分は、がまん!な、読み難い本です(言っちゃいました)。スペイン語に加え、原書では効果的に使われているであろうバスク語があり、翻訳もかなり苦心されたかと思います。民族独立と言ってもピンと来ない日本では、軽々に進め難い本だとも。

でも、歪なナショナリズムへの回帰やレイシスト礼賛な空気もある中だからこそ、すすめたいと思います。小さな人間の愚かさも、賢さも、愛しさも、この本には描かれています。ちょいと本気だして、読んでみませぬか?

私も、バスクへは、食べに!出かけました。食での地域おこしに大成功したエリアだと思うし、何よりも美しい町でした。サンセバスチャンのガストロノミカに参加し、いくつかのセッションを受講し感激しました。すてきなシェフもたくさん。でもつい最近まで?と知ればまた見えてくるものがあるのかなと思い、再訪したくなりました。(サンセバが戦闘下にあったとかではないですよ。)

さて、そのほか。

くどうれいん(工藤玲音)さんはこれが初読。今年の芥川賞の候補にも。書き続ける自分について、端々に出てくるけど、ほんとに書いて書いて書いているのだなーと。何も起きていないように見える日常を、書く、彼女の目線で書く、その力よ、と唸ります。言われてみれば、私たちの毎日には、いつも何かが起きているから。Youtubeで見たインタビューで「誰もが知っている言葉で、まだ誰も書いていないことを書きたい」と、いいわー。ただいま2冊目を読んでいます。

『血も涙も』は、主人公が料理研究家ってことで手にしました。いろいろつっこみたいところはありますが、w、すぐドラマにできそう。主役はともかく、夫は高橋一世で、ぜひ!

一方、ジェーンスーさんの『生きるとか、死ぬとか、父親とか』はドラマにしにくそうなのに、ドラマに。読んだら、かなり原作に忠実だったんだな、と。状況も場所も時代もちがいますが、大人になってから家が斜陽する姿を見た私としては静かに共感するところがいくつもありました。

さ、7月へGo(やっと。待ってて未来のおばあちゃん(私!))


※1 IRAはアイルランド共和軍。北アイルランドの英国からの分離独立(全アイルランド統一)を目指していた武装組織(その後、分離とかいろいろあるのでググってください)。

※2 2010年ETAはビデオで声明を出し武装闘争の停止を決めた、とBBCや地元メディアが伝えた。しかし、スパイン政府はこれを鵜吞みにも、認めもせず。その後、2017年に書簡で完全武装解除を表明。武器を隠している場所のリストをフランス警察に渡し武器の引き渡しを行う。2018年5月に書簡で、「4月に全てを解体し、過去からの連鎖を止める」という解散声明を出し、5月に当時のETA指導者ジョス・テルネーラ のETA解散宣言が公開された。(完全解散は割と最近だ!)スペイン政府は過去にさかのぼってテロ事件の犯人は収監しているそう。









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