=アジアの解放に向けて= 野伏翔(映画監督)
昨年春に全国40数館の映画館で封切られた、拉致問題を描いた映画「めぐみへの誓い」は、お陰様で順調に展開している。5月にはアマゾンプライム、グーグルプレイ、ひかりTV、JCOMオンデマンド、RAKUTENTV,ビデオマーケット他の配信がスタートし、6月からはDVDのセル及びレンタルも始まる。ネットフリックスと全国ホテルでの視聴は来年6月からの予定。上映会も全国各地で展開しているが、5月にはアメリカLAで初の海外上映。NY,シカゴからのオファーも来ている。ヨーロッパでもドイツ語とフランス語の字幕スーパーが完成してこれからが期待できる。海外での展開はMプロジェクトという海外在住の人たちのグループが積極的に推進してくれている。ここでも拉致問題解決を望む民間の力、人々の善意がこの映画を後押ししてくれている。つい最近もチベット人のペマギャルボ教授が、「弟がインドで映画のプロデューサーをしているので送ってみる」と申し出てくれた。
資金集めから製作、配給、宣伝、海外配給までの全てが民間の有志の厚志にささえられているこの映画の成功のおかげで、いろいろな映画の企画が舞い込むが、いざ映画一本をインディペンデントで作るのには相当の覚悟がいる。日本映画では直接製作費一億五千万円までを通常低予算映画と呼ぶ。東映、東宝などのメジャーで作られた皆様よくご存じの「プライド」や「俺は君のためにこそ死にに行く」は十五、六億円かかっている。私たちのような一億にも満たない製作費のゲリラがメジャーと戦うのは、ちょっと大げさに言えば決死の覚悟がいる。演劇やコンサートなら必死にチケットを売ればなんとかなるが、できてしまった映画が映画館にかからなかったら全てを失うからだ。そして危険は経済的な問題だけではない。「めぐみへの誓い」を上映した京都や大阪の映画館は嫌がらせの連絡を受けたと聞いている。
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