天岩戸　神楽　　（樹）

誰が何をしたか？

それは後世からすれば、推し量るしかありませんね

特に私のしたことなど、殿方からすれば好気の思いでしょう

まあそれは構いませぬ

まず、なぜ後世まで名前が残ったか？

そこを考えてみればよろしいかと

芝居にせよ踊りにせよ、「良い」とならなければ、舞台に上がることなど叶いませぬ

まずは見た目でございますね、神々は言うまでもなく、殿方の目に叶わなければ、王の御前で舞うことなど許されませぬ

私は大きく豊かでございました

身の丈も高く、乳も尻も、人並み外れて豊かでございました

離れた場所、高い舞台で舞うのですから、見栄えが大事なのです

わかりやすう、言いますならば、私の舞は殿方を、男神を楽しませるためのものです

よろしゅうございますか？現代の舞にはそういう見方、視点が欠けております

奉納とは、差し出し楽しんでいただくためのもの

まずは第一に、その奉納する神が男神か女神か？

そのどちらかによって、舞の質、衣装、そしてそれを舞う舞姫を選ばなければならないのです

「どうすれば喜んでいただけるか」

まずはそれ、そこです

今の巫女舞とやらで、日々戦いや狩りに明け暮れている戦士や男神が喜ぶと思われますか？

あれは男を知らぬ生娘の舞いです

天岩戸で男神たちが歓声を上げたのは、私の舞が美しく妖艶であったからです

だから、岩戸が開いた

何も肌を出せと申しておるのではありません

男神が相手なら、大人の女としての自分を出しなさいと申しているのです

女神であれば、凛とした自分の立ち姿で舞えばよろしい

見ていただける相手により、舞を変える、当然のことです

よろしゅうございますか？

（アメノウズメ）（樹）