理論的に動く確率が高いし実際正しく動いてるからOK!で動いてるスマホちゃんと量子力学
1. 半導体
エネルギーバンド理論:
物質中の電子は、原子核の周りを回るだけでなく、物質全体を動き回ることができます。しかし、電子のエネルギーは任意の値を取ることができず、量子力学的な制約により、特定のエネルギー帯(エネルギーバンド)に制限されます。
エネルギーバンドには、電子で満たされた価電子帯と、空の伝導帯があります。
半導体では、価電子帯と伝導帯の間のエネルギーギャップ(バンドギャップ)が小さく、熱や光などのエネルギーによって価電子帯の電子が伝導帯に励起され、電流が流れます。
このバンドギャップの大きさを制御することで、半導体の電気伝導性を調整し、ダイオードやトランジスタなどの電子部品を作ることができます。
トンネル効果:
古典力学では、粒子がポテンシャル障壁を乗り越えるには、障壁の高さ以上のエネルギーが必要です。しかし、量子力学では、粒子が障壁を「すり抜ける」現象が起こりえます。これがトンネル効果です。
トンネル効果は、フラッシュメモリに利用されています。フラッシュメモリでは、絶縁体で隔てられた電極間に電子を出し入れすることでデータを記憶します。電子は絶縁体をトンネル効果で通過し、電極に蓄積されます。
2. ディスプレイ
液晶ディスプレイ:
液晶は、液体と結晶の中間的な性質を持つ物質です。液晶分子は棒状の形をしており、電圧をかけることで向きが変化します。
液晶ディスプレイでは、液晶分子の向きを制御することで光の偏光を変化させ、画面の表示を制御しています。
液晶分子の配向は、量子力学的な相互作用によって決定されます。
有機ELディスプレイ:
有機ELディスプレイは、有機化合物に電圧をかけることで発光する現象を利用しています。
有機化合物中の電子は、電圧によって励起状態になり、基底状態に戻る際に光を放出します。
この発光過程は、量子力学における電子のエネルギー準位遷移によって説明されます。
3. 通信
光通信:
光ファイバー中を伝搬する光は、量子力学では光子と呼ばれる粒子として振る舞います。
光ファイバーは、全反射という現象を利用して光を閉じ込め、長距離伝送を可能にしています。全反射は、光の波としての性質と、ファイバーとの境界条件によって説明されます。
無線通信:
電波は、量子力学では光子と同じように、電磁場の量子化された状態として記述されます。
スマートフォンは、アンテナを用いて電波を送受信します。アンテナの設計には、電磁波の量子力学的な性質を考慮する必要があります。
4. その他
GPS:
GPS衛星は、原子時計を搭載しており、高精度な時刻情報を送信しています。原子時計は、原子の量子力学的なエネルギー準位遷移を利用して、正確な時間を刻みます。
カメラ:
スマートフォンのカメラは、イメージセンサーと呼ばれる半導体素子で光を電気信号に変換します。
イメージセンサーでは、光電効果と呼ばれる現象を利用して光を電子に変換します。光電効果は、アインシュタインが量子力学の黎明期に解明した現象です。
このように、スマートフォンは様々な形で量子力学の恩恵を受けています。量子力学は、現代社会を支える基盤技術の一つと言えるでしょう。