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全固体電池

全固体電池は、従来のリチウムイオン電池の電解液を固体電解質に置き換えた、次世代の電池として注目されています。

全固体電池の構造

  • 正極: リチウムイオンを放出する材料。

  • 負極: リチウムイオンを吸収する材料。

  • 固体電解質: リチウムイオンを移動させる固体材料。

全固体電池のメリット

  1. 安全性: 従来の電解液は可燃性で、液漏れや発火のリスクがありました。固体電解質は不燃性で、これらのリスクを大幅に低減できます。

  2. エネルギー密度: 固体電解質は、電解液よりも高いイオン伝導度を持つものが開発されており、より多くのエネルギーを蓄積できます。

  3. 出力特性: 固体電解質は、電解液よりも高速な充放電が可能で、高い出力特性を実現できます。

  4. 寿命: 固体電解質は、電解液よりも劣化しにくく、長寿命化が期待できます。

  5. 作動温度範囲: 固体電解質は、電解液よりも広い温度範囲で作動可能です。

全固体電池の種類

固体電解質の種類によって、全固体電池は大きく3つに分類されます。

  1. 硫化物系:

    • 高いイオン伝導度を持つ。

    • 比較的低い温度で合成可能。

    • 水分や酸素に弱いため、製造環境に注意が必要。

  2. 酸化物系:

    • 化学的に安定している。

    • 比較的高温での焼結が必要。

    • イオン伝導度が硫化物系に比べて低い。

  3. ポリマー系:

    • 柔軟性があり、加工しやすい。

    • イオン伝導度が低い。

    • 比較的低い温度で作動可能。

全固体電池の用途

  • 電気自動車 (EV): EVの航続距離延長、充電時間短縮、安全性向上に貢献。

  • スマートフォン: 小型化、軽量化、バッテリー寿命延長に貢献。

  • ウェアラブルデバイス: 小型・軽量・高性能なウェアラブルデバイスの実現。

  • ドローン: 長時間飛行、安全性向上に貢献。

  • 蓄電システム: 再生可能エネルギーの安定供給に貢献。

全固体電池の課題

  • コスト: 固体電解質の材料や製造プロセスが高価であるため、電池のコストが高い。

  • 界面抵抗: 電極と固体電解質の界面における抵抗が大きく、電池性能を低下させる要因となる。

  • 製造技術: 全固体電池の製造には、高度な技術と設備が必要となる。

実用化成功例

全固体電池は、まだ開発途上の技術ですが、一部では実用化に成功した事例も出てきています。

1. 自動車分野

  • トヨタ自動車: 2020年に開催された東京オリンピック・パラリンピックで、全固体電池を搭載した試作車を公開しました。2027年~2028年頃を目途に、全固体電池を搭載したEVを市場投入する計画を発表しています。

  • 日産自動車: 2028年度までに全固体電池を搭載したEVを市場投入する目標を掲げています。独自の硫化物系固体電解質を用いた全固体電池を開発しており、安全性、高出力、急速充電などの特徴を持つとしています。

  • ホンダ: 全固体電池の研究開発を進めており、2024年春に実証ラインを立ち上げる予定です。2030年代前半に全固体電池を搭載したEVを市場投入することを目指しています。

2. その他の分野

  • 村田製作所: 小型で高エネルギー密度の全固体電池を開発し、ウェアラブルデバイスやIoT機器向けにサンプル出荷を開始しています。

  • TDK: IoT機器や医療機器向けに、小型・薄型・高信頼性の全固体電池を開発し、量産化を進めています。

  • 太陽誘電: 積層セラミックコンデンサの技術を応用した全固体電池を開発し、産業機器や車載機器向けにサンプル出荷を行っています。

  • シーメンス: 産業用蓄電システム向けに、安全性と長寿命に優れた全固体電池を開発し、実証実験を進めています。

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Yamato Nagata
いつも記事を読んでいただき、ありがとうございます 何かを感じたり、考えるきっかけになったりしたら、とても嬉しいです。