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24-25 セリエA 第6節 ローマ対ヴェネツィア
ローマにとっては、今シーズン初めてミッドウィークを戦った後に迎えたこの試合を振り返ります。
昇格組のヴェネツィアが用意してきた戦術にフォーカスします。ハイライトはこちら。
・ローマに対して攻守で対策を練ってきたヴェネツィア
監督がユリッチに交代したローマですが、ユリッチの基本的なスタイルは変わらないことがウディネーゼ戦とアスレティック戦で明らかになりました。
これを受けて元ローマで現ヴェネツィアの監督であるエウゼビオ・ディ・フランチェスコは対策を練り、ローマの本拠地であるスタディオ・オリンピコに乗り込んできました。
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◦ライン設定を下げ、ボール保持はされてもスペースは与えないブロック守備
この試合を5-3-2で挑んできたヴェネツィア。背後のスペースを一番にケアして、バイタルを埋めるため中盤も自陣では低い位置に構えます。
そのため、ローマはボール保持は容易な状況でしたが、アスレティック戦で見せた背後へのスペースを使うボールは使えず、スペースにボールが出ず人の動きも作れなくなってしまいます。
ボール保持時には若干左肩上がりの作りで、ウイングバックを押し上げシャドー2枚が内側のポジションを取る1-4-2-3のような形を作るローマですが、ボールサイドにブロックを寄せるヴェネツィアに対して窮屈になってしまいます。
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◦ダイレクトプレーでマンツーマンを剥がす動き
ユリッチ就任後のローマは、敵陣でのマンツーマンディフェンスを取り入れていますが、ヴェネツィアはダイレクトプレーでマンツーマンディフェンスの打開を目指します。
ミッドウィークに試合に臨んだこともあり、ローマのプレス強度が低いことも相まってこのダイレクトプレーが効果的に働きます。
カヴィーリアやエラートソンからの縦パスをポーヤンパロが落ちてきて受け、エラートソンやザンパーノ、オリスタニオへと落とすことでポーヤンパロのマークについてきたエンディカをひきつけローマに後ろ向きの守備をさせることに成功します。
低い強度で行うマンツーマンディフェンスは、ヴェネツィアのレイオフを使う戦術に逆用され何度もピンチを招きます。
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ヴェネツィアの用意の作戦+ローマのコンディションの悪さ で試合はヴェネツィア優位の展開に。
ヴェネツィアの前半は、ボールポゼッションは28%と少ないものの、15本のシュート(枠内6本)とローマを圧倒していました。(ローマの前半はシュート9本枠内2本)
ヴェネツィアは前半終了間際にフリーキックの流れから敵陣でもダイレクトプレーでチャンスを作り、エリア内のブシオがフリーでシュートを打ちます。このシュートはポストに当たってゴールとはならないものの、こぼれ球に反応したポーヤンパロが右足を振りぬき、ゴールネットを揺らしヴェネツィアが先制します。
後半もヴェネツィアのプランは一貫しており、後半早々にもビッグチャンスが訪れますが、これはローマの守護神スヴィラルがビッグセーブ。
完全に試合はヴェネツィア優勢で進んでいる中、ローマの監督ユリッチはこの状況を好転させるため、若武者2人に試合を託します。
・若武者の活躍
58分にユリッチはマンチーニとコネを下げ、ピジッリとバルダンツィという若い2人を投入。4-2-3-1に形を変え、逆転を狙います。
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ピジッリとバルダンツィが動いてボールを受けられる選手ということもあり、この交代以降ローマが押し込みヴェネツィアが跳ね返す展開が続きます。
この試合はピジッリとバルダンツィの動きがチームに与えた影響が大きく、引き気味のヴェネツィアに対してどんどん動きをつけアタッキングサードへの侵入を連続し攻撃の活性化に成功します。
ここからは戦術面というよりは、選手パワーで何とかしていくことを目指したローマ。
ヴェネツィアを押し込んでもしばらくは得点ができませんでしたが、75分に押し込んだことでバイタルで時間を得たクリスタンテが強烈なミドルシュートを放ちます。ブシオがブロックしますが、そのボールが軌道を変えてゴールに吸い込まれローマが同点に追いつきます。
同点に追いついた後もローマは勝ち越すべく攻撃を継続します。83分には、コーナーキックのチャンスを得たローマ。パレデスが蹴ったボールに対して、ドフビクが潰れて開けたスペースにピジッリが入り込みフリーでヘディング。これがゴールネットを揺らし、ピジッリはセリエA初ゴールを劇的な勝ち越し弾で上げることに成功します。
ピジッリのゴールを喜んだ際に故障したスーレに代えてエルモソを投入し3-4-2-1に形を戻しゲームをクローズしにかかるローマ。ピジッリの勝ち越しゴールを守り切り、セリエA2連勝で試合を終えました。
ヴェネツィア、ディ・フランチェスコにとっては、想定以上に上手くいった前半だっただけに悔しい敗戦になりました。
・各選手ひとこと評価
◦ローマ
・GK スヴィラル 7.5点
前半と後半開始直後に決定機を阻止した影のMVP。特に後半開始直後のセーブがなかったら敗戦していた可能性が濃厚だった。毎試合安定したパフォーマンスで本当に頼りになる。
・DF マンチーニ 6.0点
コンディションが万全ではなかったこともあったか、攻撃の枚数を増やすために早い時間での交代。万全ではない中、前半はヴェネツィアの鋭いカウンターに対して最大限対応した。
・DF エンディカ 6.5点
ポーヤンパロのレイオフにより何度も後ろ向きの守備をする羽目になったが、持前の対人スキルにより後ろ向きでも安定した守備を披露。チームで決めた守備設計なので後ろ向きの守備になってしまうのは彼のせいではない。
・DF アンヘリーニョ 6.0点
攻撃時は高い位置を取ることも多かったが、ヴェネツィアのライン設定や前線のポジショニングがイマイチなこともあって攻撃面での良さを出せなかった。後半のカウンターケアなど気の利いたプレーはいつも通り高パフォーマンス。
・MF チェリク 6.0点
後半途中からはローマで初めて4バックのセンターバックに入るなど、スクランブル気味の配置を無難にこなした。前半は主に幅を取る役割に終始したが、被カウンター時にサボらずスプリントして自陣に戻ってくる姿勢は素晴らしい。
・MF クリスタンテ 6.5点
前半は中央が渋滞していたこともあり、クリスタンテの位置も低く有効なパスコースをつくることができなかった。後半はスーレの立ち位置を修正したあたりから徐々にバイタルに入れるように。シュートパワーはロマンを感じるレベルで高く、コーナーキックも取れるはずなのでもっと狙ってもいいと思う。
・MF コネ 6.0点
コネの推進力は前半の数少ないポジティブ面だったが、トラップミスと前半のマンツーマンの強度が低い所が散見された。アスレティック戦から中2日で同様のパフォーマンスを求めるのも酷だが、期待値が高いだけに求める次元も高くなってしまう。
・MF エルシャーラウィ 5.5点
前半は左のウイングバック、後半途中からは右サイドバックをこなすなどポリバレント性の高さを発揮した。前半、中が詰まっているのに中央へポジションを取ることがあったのは明確な改善点。
・MF スーレ 5.0点
前半は中央渋滞の主な要因となってしまった。落ちて受ける際も相手を引き出すというよりも狙いどころにされていた印象。後半の立ち位置の修正でかなり良くなったが、ピジッリのゴールにはしゃぎすぎて怪我したのは勿体なさ過ぎる。
・MF ペッレグリーニ 6.0点
足元志向が高く、彼がディフェンスラインの背後へのアクションを加えることでアタッキングサードの崩しも増えると思う。シュートレンジが広いのは魅力。決定機は決めたかった。
・FW ドフビク 6.0点
この試合でも自身ができることは最大限やり切ってくれた。周りを使えるタイプのFWだが、コーナーキックでの潰れ役もこなすなどジェコを彷彿とさせる献身性。
・MF バルダンツィ 6.5点
裏へのアクションを彼が入れたことでヴェネツィアを押し込むことが容易になった。ライン際でコーナーキックを貰う動きなど、冷静なプレーも見られ効果的な役割を果たした。
・MF ピジッリ 7.5点
彼がこの試合の主役だったことは言うまでもない。縦へのパスと敵陣での強度の高いタックルなどこの試合では一番クオリティが高かった。何より、勝ち越し弾でセリエA初ゴールを上げたのはロマニスタ的に本当に嬉しい。相変わらずオフザボールの動きも秀逸。彼がローマの未来。
・MF パレデス 6.5点
ペッレグリーニに代わって入ったが、プレースキックの精度の高さはほれぼれする。ピジッリのセリエA初ゴールをお膳立て。その後はゲームクローズを敢行。
・DF エルモソ -点
・ユリッチ 6.0点
前半のようにパフォーマンスが低く、マンツーマンが効果的に働かないときにプランBを持つかどうか(ブロック守備にするなど)は今後の課題。試合間隔が短いことが今後もあるので選手運用などに手腕が問われる。後半のように早めの交代で何とかしにいく思い切りの良さは好感が持てる。
◦ヴェネツィア
・GK ヨロネン 6.0点
クリスタンテのミドルはアンラッキー。コーナーキックもフリーで打たれる守備に問題があるが、せめてボールに触れたかった。
・DF ザンパーノ 6.0点
前半はカウンター時に前に出るシーンもあったが、後半は押し込まれる展開で守勢に。バルダンツィには若干苦労していた印象。
・DF カンデラ 6.0点
前半は主にペッレグリーニの前でシュートコース、パスコースを消し仕事をさせなかった。後半は押し込まれながらも決定的な仕事をペッレグリーニ、ドフビクにさせなかった。
・DF スボボダ 6.5点
90分通してドフビクの対応に奮闘した。前半はライン統率で裏のスペースを消し、ローマの攻撃を停滞させた。
・DF イツェス 5.5点
デュエル勝率20%とセンターバックとしては物足りないスタッツを記録。ローマが左肩上がりで攻めてきた関係で悪目立ちしなかった。
・DF ハプス 6.0点
前半はスーレ、チェリクを相手に優秀な対応。カウンターは右サイドが担うことが多勝ったが、彼自身の役割はしっかりとこなした。
・MF エラートソン 6.0点
決定機を決めていれば金星に大きく近づいていただけに悔いが残る。パフォーマンス自体は質が高く、ポーヤンパロとの連携でカウンターチャンスを何度も創出。特に高い位置を取るアンヘリーニョの背後を効果的に利用した。
・MF ハンスニコルスィカヴィーリア 6.0点
コネの寄せが甘いときは持前の展開力を発揮。右サイド裏へのロングボールでロングカウンターの起点になった。寄せられた際のボール捌きは課題。
・MF ブシオ 6.0点
前半はエリア内で得点につながるポスト直撃のシュートを打つなど、高い位置での貢献度は高い。後半はバイタルを埋める時間が多く、アンラッキーなディフレクションも起こってしまった。
・FW ポーヤンパロ 7.0点
先制点はもちろん、得点には至らなかったが常に危険な存在だった。マンツーマンをずらすために縦パスを受けてレイオフを行いスムーズなカウンターの起点としても働いた。
・FW オリスタニオ 6.0点
前半はカウンター部隊として機能した。ゴールを脅かすシーンもあったが決め切れなかったのが痛かった。世代別代表らしくキレのある突破力を披露した。A代表に選ばれるよう頑張ってほしい。
・MF ドゥンビア 6.0点
同点に追いつかれた直後に投入された。彼自身悪くはなかったが、明確な違いをつくることはできず。
・MF チルニゴイ 6.0点
運動量が落ちたオリスタニオ、エラートソンの代えて守備強度を出すために投入された。彼が失点の起点になったわけではないが、勝ち点1を持ち帰ることはできなかった。
・MF アンデルセン 6.0点
チルニゴイとともに守備面、運動量の面から投入された。短い時間ながらキーパスを供給するなど自分の色は出せた。
・FW ギトケアー -点
・FW ライモンド -点
・エウゼビオ・ディ・フランチェスコ 6.5点
ローマの選手のコンディションがイマイチなこともあったが、前半は用意してきた対策で完璧な試合運び。前半終了間際の得点が、後半直後だったら。後半直後の決定機で得点できていれば。など惜しい展開が続いたが、これを勝ち切れるがチーム力の差なのかもしれない。若手中心のチームとしては堂々たる戦いぶり。