恋のスケッチ〜応答せよ1988〜 強い女ラ・ミラン
※ネタバレ多め
母は強しという言葉、私は大嫌いだ。
母は強くなくてはならない、子どものために強くあるべきだ。
強いんだから、甘えて構わない、迷惑かけても平気だろうと、夫や家族にとって都合の良い存在になれと言われているようで、なかなか悲しくなる。
自分の思うがまま動いてくれないと困る、急に泣いたり体調悪くなられては困る。だって母親なんでしょう?という、社会からの圧力。しんどい。無理。
私は、弱い人が弱いまま描かれている作品が大好きだ。
みんな弱いまま生きれば良い。だってみんな、絶対弱いんだもん。人間は考えていても、所詮一本の葦なんだから!
弱さが大好きな私だけれど、あえて強い女と評したくなる素敵な女性に出会えた。
ラ・ミラン。韓流ドラマ「恋のスケッチ〜応答せよ1988〜」に登場する、双門洞の横丁に住む主婦だ。
夫と長男次男との4人暮らしをしている。
ミラン一家、長男ジョンボンは心臓が弱く、その上本当に本当に貧乏だった。
けれど、そのジョンボンが宝くじで大金を当て、いきなり億万長者になる。
その貧乏時代の様子はちょっとしか描かれていないのだけど、悲劇のヒロイン的でないのが良い。貧乏だけど、健気に頑張る一家!という感じじゃないのが良い。
普通に貧乏を悲しみ、普通に「しんど…。」と思っている。だから、宝くじが当たった時の喜びようったら!
近所の人も、本当に本当に大変だったことを知っているから、本当に本当に良かったね!!という感じでほっこりする。
というか、この横丁に住む人はみんなそれぞれ訳アリなので、誰が当たっても同じように喜んだだろう。
いきなり裕福になったミラン一家は、近所の人の生活水準よりもいい暮らしができるようになった。
だけど、ミランもミラン夫も淡々としている。それは、お金があるのは自分たちがすごいわけではなく、たまたまラッキーだったという事を忘れていないからだ。
近所の人がお金に困っていたら、「お金ならあるわ。」と、すんなり貸し、
朝ごはんの席に、いつの間にか息子の友だちたちが勢ぞろいしていても、普通に「食べなー!」という感じ。
おおらかで、愛に溢れている。
心臓が弱い長男ジョンボンだが、なんと大学受験に失敗し続け、六浪している。
ジョンボンは結構チャランポランなので、勉強もロクにせずゲームセンターに通ったり、ラジオに投書しまくったり。
そんな長男を、ミランは信じて見守っている。
ミラン夫婦は結婚式を挙げていない。玄関に飾ってある結婚式の写真は、なんと合成だ。だけど、それは恥ずかしい事だと思っているので、子ども達にはナイショにしている。80年代の合成なのでバレバレなのだけど。
そんな両親のために息子たちはサプライズ結婚式を企画する。
私はこの、大円団シーンが大好き。あんなに愛に溢れている時間は他にないよ。
ミランが、ミランが泣いたぞ!!って感じで号泣する。ミランは絶対ああ泣くぞ!っていうふうに。
私はこの泣いた姿を見て、ミランは貧乏な時も裕福な時も、ちゃんと家族やまわりの人たちを信じていたんだな、と気付いた。
信じているから優しくする。信じているから、強くいられる。
自分や家族や周囲の人を、未来に対する漠然とした希望を、ずっと信じていられたから、あんなに素晴らしい結婚式となったのだ。
健やかなる時も病めるときも、愛する事を誓いますか、というお決まりのフレーズ。
みんなやすやすと「誓います。」と答えるけれど、その誓いを信じ続ける事ができる人って、どのくらいいるのだろう。
ミランはずっと信じていた。わざわざ誓わなくても、当たり前に彼女の胸の中にあった。
その信頼が、ミランを強くさせたのだ。