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それぞれがそれぞれの砂糖でありミルク
2月26日。心をほっこりさせるために宇奈月のセレネ美術館へ。大好きな水の都楽団さんのライブに出かけた。
今年最後の雪がチラチラ。もう終わったと思っていた雪景色が、宇奈月にはまだ残っていた。
開始ぎりぎりに会場に滑り込んだため、なんと最前列センター席に通された。いつもメガネの私がコンタクトを付けて行ったため、メンバーの皆さん含め、たまたまいらっしゃった知り合いの方々にも、私だと全く気づかれなかった。(Pさんは一瞬で気づいていた。さすが川に浸かりながらもシャッターを切る女)
前半は、春が楽しみになるような選曲。雨に打たれても、いつかは晴れるよといったメッセージを(勝手に)感じて、私はボロボロ泣いてしまった。春はすぐそこ。今は一番最後の名残雪。あとちょっとの辛抱だ。負けるな、私。
音楽は旅だ。同じ音楽を聞いていても、受け取る側の受け取り方でどのような旅路にもなる。今日の旅は、楽曲の素晴らしさ、水の都楽団さんの素晴らしさに、ひたすら励まされました。みなさん輝いていたよ。かぐや姫を迎えに来た月の使者たちは、こんな感じだったんじゃないかなと思ってしまった。天国。極楽。まるで温泉。
ギターの地主直之さんがいらっしゃるライブは初めてでした。いやあ、かっこよかったです。必要なタイミング、必要な強さを外さない。力強くかきならし、時にはそっと背中を押してくれるような、見守られている安心感。まるで最高の部活の顧問。スラムダンクの安西先生みたいに、それぞれの音を引き出しているような気がする。
お互いがお互いに拍手を送る、水の都楽団のフレンドシップが大好きだ。
コーヒーには砂糖とミルクがなくちゃ!という曲がとても印象に残っているのだけど、きっと、メンバーそれぞれがそれぞれの砂糖でありミルク。自分の人生はこうじゃなくちゃ!という一部分を、音楽を通して担いあっている。苦いコーヒーもまったりと甘くなる。甘く、優しく、あったかいのが良い。温泉のように、やわらかさで包まれている信頼関係がある。
後半は一気に恋愛モードへ。ジャズはダメな男や、ダメな男に引っかかってしまう女の歌が多いらしい。もう浮気はせずに君だけを愛するよ、という曲が面白かったなあ。浮気された挙句こんな曲を作られたら、たまったもんじゃないですよ。だって曲になってしまったら、なんだって面白いじゃんね。
ボーカルの史さんがMCでもおっしゃっていたように、恋愛であれ推し活であれ、心がポッポしている状態は良い。芸術に触れて、感性をポッポさせるのも良い。せっかくあったかくなってきたのだし、春もやってくるし、飛び始めたスギ花粉が付着する隙を与えない位、つやつやピカピカでありたいよ。なにより、今日のみなさんは最高にポッポと光っていた。光っている人を見ていると、自分もピカピカになれる気がする。
生活は苦い。まるで安っぽいインスタントコーヒーを、無理矢理すすらされている気分になることもある。砂糖とミルクが足りない時は、水の都楽団のライブへすっ飛んでいく。苦みしかない生活が、いつの間にやら甘くまろやかに変化していく。
そのまろやかさが膜となり、最後の雪をそおっと受け止める。「まだ降るんかい!!」とブチギレつつも、それは確かに、ついさっきとは比べ物にならないほど、美しいものへと変わっていた。
春は確かに、すぐそこまで来ているよ。