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青春はどどめ色

羽海野チカ先生の「ハチミツとクローバー」は、登場人物全員が片思いをしている、美大生の青春を描写した漫画だ。

主人公竹本君は卒業制作で「青春の塔」を制作する。竹本君の心情ががそのまま塔に反映され、竹本君が迷えば迷うほど塔はぐにゃりと曲がっていく。年老いた教授達は、その、「かぐわしい青春の香り」に大興奮。ついつい高得点をつけてしまうというシーンがある。

「青春てね 13歳から25歳までで 汗と涙と感動と勉強と 裏切りと恋と失恋と
あと ろくなことないけど 時々はろくなこともあるらしいね」

こちらは、ちびまる子ちゃん13巻の『青春てなんだろう』の巻にて、まる子が調べた青春の定義だ。

私はこの青春の定義が大好きで、25歳になった時に、ああ、私の青春は終わったのだな…。と、しみじみとした気持ちになった。本当に、ろくなことないけど、時々はろくなこともあった、青春でした。

現在25歳の藤井風君にはまっている。青春ラストイヤーを生きている彼は、心の中で自問自答した、そのまんまの言葉で歌っている。そのまんまが、メロディーとなり溢れている感じが良い。岡山弁で「何なん」という時は、本当にあのメロディー通りの何なんwで、「もう、何じゃったあああん!」って、私も言っとる。心の中で。
それが藤井君が歌っとったら、とんでもなくかっこよく聞こえる。かっこよく、セクシーで、それでいてわざとらしくも浮ついてもいない。とんでもない才能だと思います。

そんな藤井風君ですが、「青春病」という曲がある。なんせ13~25歳は青春なので、青春真っ只中の人が作った“青春の定義”が面白い。

『青春の病に侵され
儚いものばかり求めて
いつの日か粉になって散るだけ
青春はどどめ色
青春にサヨナラを』

青春はどどめ色!?!?どどめ色って、どんな色なん!?!?

ウィキペディアによると、

どどめ色とは、その名前は知られているが正確な定義がない色。方言では桑の実、または青ざめた唇の色や、打撲などによる青アザの表現に用いられ、赤紫から青紫、黒紫を指す。
と、ある。

その名前は知られているが正確な定義がない色って、まさに、青春そのものじゃん!!

大体みんな、黒いような紫のような赤のような、なんとも言えない濁った色を想像する。だけど、どんな色とは一言では言えない。
まさに、ろくなことはないけど、たまにはろくなこともある、青春の色。

過ぎてしまえば、汗も涙も感動も勉強も、裏切りも恋も失恋も、なんとなく美しい事のように思えるのかもしれない。だけど、青春真っ只中の人間が「どどめ色」と形容しているのだから、やはり青春は苦痛を伴う混乱の時期なのだろう。

まる子の祖父、友蔵だって、

『青春ってのはのう…もっとこう…
なんていうか切なくて苦しくて… 自分はどうするべきか…く…くくく…
ハ―ッ 苦しい あーやだやだ 青春はもうこりごりた』
と、悶絶している。

おじいちゃんになっても、思い出すだけで血圧が上がってしまうようだ。やっぱり、青春って、一筋縄ではいかない。

ハチミツとクローバーに戻るが、青春を卒業したはずの人間が、「青春スーツ」を再装着するシーンがある。

器用になんでもこなし、恋愛に執着せず、デザイン会社勤務のアラサー、野宮匠。彼は「青春なんてもう卒業しましたから。」というスタンスでいたのだが、青春ギリギリライン、24~25歳になっても初恋を引きずりまくる山田あゆみにうっかり告白してしまう。「君が好きだからだよ。」という、ド直球なセリフで。

告白なんて泥臭いやり方をしなくても、恐らく上手くいくであろう流れで。山田さんが傷つく姿を想像するだけで、言わずには居られなかったのだ。

青春は卒業しても、再び戻ってくることもあるそうです。どんなに「青春なんてこりごり…」と思っていても。どんなに着たくなくても、何歳になっても、「青春スーツ」を装着してしまう時はあるらしい。

だからまるちゃん、青春は定義づけられないよ。
青春はどどめ色なのだから。

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