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逃げて待つ正義
夜な夜なワンピースを見ているので、寝るのがついつい遅くなってしまう。
寝不足気味なので朝はギリギリまで寝たいものの、除雪車の音で目が覚める。
クッ!辛い…と思う。
眠たいのに叩き起こされた、という絶望と、外は雪が積もっているという事実。
両方わかってしまうからだ。
それでも昨夜のルフィに降りかかった不条理に比べれば、全然マシだ…と奮い立たたせて布団から這い出る。
なんせルフィは兄エースを亡くし、心が完全に折れたばかり。
白ひげも死に、黒ひげの悪党っぷりに拍車がかかり、世の中“勝ったほうが正義”なんだぞ!という不条理にぶち当たる。(頂上決戦編をみてます)
勝ったほうが正義だなんて、マジで最悪だ。
白ひげは家族が欲しかっただけなのに……、エースまじなんも悪いことしとらんやんけ…と、思い出しただけで心はボロボロに。
あんなに壮絶な闘いを見た後、ただ雪が降っただけで、絶望してはいられないのだ。
意味わからんと思うけど、わが家は扉が無い家なので、雪が降るとどんなに暖房をつけてもめちゃめちゃ寒い。
富山に来て10年目に突入する。
広島育ちの私。これでも寒さにはずいぶん強くなったと思う。
それでも富山県民の寒さへの耐性(というより、身体そのものの強さ)には日々驚くばかり。
遺伝子レベルの生き残る力に驚嘆している。
タフな富山県民の中にも、特に寒さに強い人たちがいるという事に、ここ数年で気がついた。
そんな人たちの事を、私は心の中でこっそり「発熱タイプ」と呼んでいる。
発熱タイプは見た目でわかる。
まず、身体の輪郭が“ぽってり”としている。太っているというわけではなくハリがある感じ。痩せても痩せすぎることはなく筋肉質で、逆に太ってもある一定の身体のラインからはみ出ない。
そして、奴らは薄着である。
吹雪の中、半そでで雪かきをしているタイプだ。
発熱タイプの知人によると、冷え込んだ夜、キンキンに冷えた布団に潜り込んでも、「ひんやりして気持ちいい〜」と、そのままぐっすり眠れるらしい。
私は湯たんぽがあっても、布団があたたまるまではとても寝付けない。
驚くべきことに、寒がりの私から産まれた息子は発熱タイプなのだ。きっと“ネツネツの実”でも食べたに違いない。
今日も「風呂が暑すぎてシャワーが浴びれない!」と、身体も洗わず飛び出していった。私は息子が「暑すぎる!」と言った風呂に、45分も浸かっていた。
富山県民のタフさを持ってすれば、きっとルフィと一緒に旅に出られるはず。
腕っぷしが強くても頭が良くても、身体がタフじゃないとまず船上生活が無理だ。
特に“発熱タイプ”は無双するだろう。
天気予報をみる度に、この先2週間の寒波に絶望する。
私がくたばる前に春はやって来てくれる?こんなに寒いのに?
雪国の春はまだまだ遠い。悪魔の実を食べて体質を変えられないのなら、私は大人しく、コタツに潜るしかない。
寒さに勝とうとしなくても、春が来るまで待てば良い。
発熱タイプは正義かもしれないが、それなら私は“逃げて待つ正義”でいくよ。勝てない闘いはしないほうが良い。
逃げることも待つことも、正義だと言いたい。
春が来るのを楽しみに待とう。発熱タイプにはなれなくても、コタツでミカンを食べながら見るワンピースは面白い。