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クナイプが無い!!


私はバスソルトが好きだ。中でもクナイプのサンダルウッドの香りをこよなく愛している。お寺のような、神聖さのある香り。あの深い青紫色のボトルが流しの下にある。それだけで保たれる心の均衡。いつだって私の味方だ。いつもここぞという時に使うようにしていた。

ある晩私は体調が良くなかった。というか、完璧に風邪を引いていた。悪寒とダルさ、喉の痛み。こういう時は間違いなく、クナイプのサンダルウッドの出番だ。

流しの下の扉を開けて、私は絶望した。クナイプが無い!!ここぞという時に使っていたが、最近はここぞという時が多すぎたため、2、3日前に切らしていたのだ。
仕方なくバブをお湯に落とす。バブも素晴らしいのだけど、クナイプを全身全霊で求めていたので、何だか全ての事に対して絶望してしまった。お湯の中でありとあらゆる物事をマイナスに考えてしまう。全然リラックスできない。なんせ体調が悪いのが良くない。

その晩は倒れるように寝込み、朝一でどうしてもやらなきゃいけない用事をミイラのように済ませ、最後の力をふり絞りクスリのアオキへ向かう。クナイプだ!クナイプに会いたい!

ポイント何倍デーだかで激混みのアオキで、一目散に入浴剤コーナーに向かう。クナイプまであと少し。

だけど、ここにもクナイプは無かった。やたら種類が多い(日本の名湯シリーズだとかは沢山あったのに!!)入浴剤コーナーに、クナイプが無い。クナイプだけが無い!!

マスクの下で涙が静かに頬を伝う。まさか大の大人がアオキの入浴剤コーナーで泣いてしまうとは!この時、自分がクタクタに疲れ切っていることを、何ヶ月ぶりかぐらいに実感した。その位、ここぞという日々が続いていたのだ。

しかも、ちょうど私がお店を出るタイミングで自動ドアが開かなくなった。自動ドアを手で開けるなんて、笑ってしまう位不幸だ。

クスリのアオキで、泣いたり笑ったり。アオキで買ったチャーハン弁当は、それでもとっても美味しかった。(私は風邪を引くとチャーハンが食べたくなる)
仕方なく買った、別のメーカーのサンダルウッドのバスソルトは、クナイプのものとは全く違う香りがした。それはそれで、良かった。(どぎついピンク色をしている)

求めていた幸せは手に入らなかったけれど、探し求めていた時間は確かに存在する。その証として、ピンク色のバスソルトのボトルが流しの下にある。
ここぞという時だけじゃなく、これからはじゃんじゃん使おう。そして、色んな香りを試そう。

クナイプだって、こんなにあてにされたら困ることだろう。自分の機嫌を取れるアイテムは何個あっても良いはずだ。入浴剤だったり、チャーハンだったり、元気回復アイテムは沢山用意しておくのが安心だ。いざという時のために。

アオキの通路で泣かなくて良いように、これからは自分で自分を労る事にする。

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