元・修行僧が案内する「天空の聖地・高野山」大門・大伽藍 #2 最も大切なお堂「御影堂・根本大塔」
YouTubeに「元・修行僧が案内する高野山 #2 」を公開しました。
今回は前回の続き、大伽藍の中心部の御影堂・根本大塔などをご案内いたします。
西塔(さいとう)
御社と山王院を後にしますと、西塔が見えてきます。
大伽藍は中央の根本大塔をはさんで、西と東にそれぞれ塔がありますが、
この西塔は根本大塔と対になるものです。
(詳しくは根本大塔のところでお話しましょう)
1834年の再建。高野山の歴史の中では新しい建物ですが、雰囲気がありますよね。
修行時代、ある法会で初めて導師を務めさせていただいたことがありまして、ここに来るといつもその時のことを思い出します。
中は本当に静かな空間。
そこに仏さまがいらっしゃって、この世ではないような空間でした。
孔雀堂(くじゃくどう)・准胝堂(じゅんていどう)
手前にあるのが孔雀堂、その向こうが准胝堂です。
孔雀堂の御本尊様は快慶作の重要文化財・孔雀明王です。
高野山では、最も有名な仏像の一つではないでしょうか。
本物は高野山の霊宝館に収蔵されています。
従って、現在孔雀堂にお祀りされている仏さまはレプリカですが、
それでもキレイな仏さまです。
(小窓があって覗けますので、お越しになったら見てみてください)
次の准胝堂は「准胝観音」さまという仏さまがお祀りされています。
出家してお坊さんになる儀式「得度式(とくどしき)」のご本尊となる仏さまです。
儀式の前に准胝観音さまのご真言「おん しゃれいそれい そんでい そわか」をひたすら唱えます。
私が得度式を受けたのは小学生のときだったので、覚えてないのですが、
高野山にいるときによく得度式のお手伝いをしましたので、
すぐにご真言が出てきます。
御影堂(みえどう)
高野山の中でも、最も重要なお堂の一つです。
優美な屋根が特徴です。
中は三層構造になっていまして、一番奥の内々陣には弘法大師さまのお姿がお祀りされています。
弘法大師さまのお姿は、ほぼこのようなお姿です。
これは、お弟子様の真如親王という方がお書きになったもので、
そのオリジナルのお姿がこの御影堂にお祀りされています。
大伽藍のお堂の中でも完全非公開です。
お坊さんでも、高野山の上の方しか入れません。
(高野山のご住職で、上席の方は毎日輪番で中に入って拝むことが課せられます。そのときにお入りになっています。)
でも、年に一度だけ御開帳があります。
「旧正御影供御逮夜(きゅうしょうみえくおたいや)」のときです。
3月21日は弘法大師さまがご入定になった日です。
新暦と旧暦とそれぞれで法会がありますが、こちらは旧暦の3月21日(年によりますが4月下旬~5月上旬)の前日夜に御影堂で法会があり、そのときに御開帳されています。(一般の方も内拝もできます)
次の日が「旧正御影供(きゅうしょうみえく)」です。
御影堂の蔀戸(しとみど)が全て開かれて、
周りを色とりどりの花が飾ります。
私も一度だけ、この法会に出仕いたしました。
白襲(しろがさね)という袈裟も白、法衣も白という装束で、
花籠を手に持ち、御影堂をぐるぐる周ります。
花を散らし、お経を唱えます。
普段の法会では、紙の花びらを使いますが、
このときだけは生花、桜と山吹です。
寒さ厳しい高野山に、春を告げる法会です。
このときの様子を高野山の明王院というお寺の先代住職さまが、歌会始めで和歌に詠んでいらっしゃいます。
本当に美しい和歌ですよね。
ご生前、先代住職さまからこのときのお話を聞くことができたのが、
高野山での宝物の一つです。
根本大塔
さて、その隣には大きな赤い塔があります。「根本大塔」と申しまして、
高野山を象徴する建物です。
大伽藍の中では、#1でご紹介した金堂とこの根本大塔はいつでも内拝することができます。(行事のあるときはできません)
中には五体の仏像、柱にも仏さまが描かれています。
これは「立体曼荼羅」と言って、仏さまの世界を描いた仏画がありますが、
それを立体的に表現した世界となっています。
曼荼羅には、「金剛界曼荼羅」と「胎蔵界曼荼羅(大悲胎蔵生曼荼羅)」の二種類があります。
この曼荼羅が、仏像で立体的に表現されています。
特に根本大塔は、大きな仏さまで圧倒される雰囲気があります。
ご紹介できないのが残念ですが、ぜひご自身でおいでになってください。
こちらの根本大塔は金剛界、さきほど紹介した西塔は胎蔵界の曼荼羅を祀りしています。しかし、御本尊さまの大日如来は逆になっています。それは、2つの世界が一つであるという真理を示しているとされています。
続きは次回に
それでは、ここで法話収録のお時間となってしまいました。
収録終わりましたら、続きをご案内したいと思います。
次は高野山がどんなところかという話も含めまして、ご紹介いたします。
次回もお楽しみに。
合掌
小雪童