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「家庭から愛を」

電車がガタンゴトン揺れながら線路を走る。
線路沿いには、いつもの街並みで、見慣れてはいるけれど様々な家が建ち並ぶ。
その中の一つの家、私の家が通過した。

現代社会、
みんなが必死で生活をしている。
そういえば、今朝、玄関から出てくる時は、隣のお母さんが「早く起きなさい」と子どもを叱りつけていた。
子どもはそんな母親に反抗的に「うるさいんだよ〜」と、怒鳴っていた。
父親は出勤時間に間に合わないのか、そんな家族に関心を寄せることなく、一人黙って玄関を出て行った。

私は、これが、日本の家庭の日常なのかなぁ?と、感慨深く再び視線を車窓へと移した。
車窓から見える家のそれぞれ一つに家庭があり、さまざまなドラマが繰り広げられているのだろう。
電車が急カーブにさしかかったため、満員電車の車内に視線をやった。
車内の人々は出勤前なのに、揺れる電車に身をゆだねてすでに疲れている様子だ。
確かに私も決して元気百倍とまでは言わないが、人々を見ていると元気な方なのかもしれない。
駅についた私は、人々の歩みの流れに身を任せながら、職場へと向かった。

私は職場につくと、元気よく「おはようございます」とあいさつをする。
近くの数人が「おはよう」と返事をしてくれる。
私の職場も活気がないなあと思いつつ、席につくと、学生時代から仲の良い同僚が話しかけてきた。
同僚にはすでに子どもがおり、小学校二年生の娘さんと、来年で小学生になる息子さんがいる。
彼がいつも活気に満ち溢れているのだが、きっと家庭に秘訣があるのだ。
もちろん、私も最近結婚したばかりだったので、同僚のような子どもはまだいなかった。

同僚が「なあ、おまえ、確かキャンプが得意だったよな」と、いきなり期待に満ちた目で私を見た。
私は「そ、そうだなあ。独身の頃はキャンプ三昧だったなあ」と頭をかいた。
私は同僚が何か考えていることはおよそ察しが付く。
今度の休みの日に、二人の家族でキャンプに行こうということだった。

休みの日、空は快晴で暑いけれども清々しい天候に恵まれた。
私は、愛車のランドクルーザーを発進させ、同僚の家へとついた。

同僚の家からは、同僚のいつもの太い声で「おっ! お迎えありがとう」という声と、奥さんの優しい「主人がお世話になっています」という丁寧な優しいあいさつがあった。
私たち夫婦も「おはようございます。楽しいキャンプにいたしましょう車に乗ってください」と後部座席を開けた。
そして、驚いたのが同僚の娘さんだった。娘さんは満面の笑顔で私たちに「お兄ちゃん、お姉ちゃん。おはようございます。いつもパパがお世話になっています。そして、本日はお車まで用意してくださってありがとうございます」と優しくも元気で、やや恥ずかしそうに話した。
同僚の息子さんはまだまだ照れ屋さんで「お、おはようござい・・・ます」と言うだけだったがとてもかわいかった。
私たち夫婦と、同僚の家族は安全運転で目的地のキャンプ場に到着した。

私たち夫婦は、キャンプについて恒例のバーベキューを用意し始めた。
すると同僚の娘さんが、私たちの様子を見ていて、積極的にお手伝をはじめた。
娘さんは「お兄ちゃん、お姉ちゃん、お手伝いしたいのでどんどん言ってください」と小さなエプロンをまといお皿を並べたり、私たちがクーラーボックスから出した具材をきちんと準備をするのだった。
私は同僚に思わず「すごい私たちを観察して何をしたらよいのか関心を示してくれてる」と感動から思わず口に出してしまった。
同僚は自分が褒められたわけでもないのに照れくさそうに「いや~、娘のこのなんでも関心を持ち、相手の立場に立って何かしてあげようという行動にいつも癒されるんだよ」とのろけていた。
私は「おまえがいつも職場で元気なのは娘さんからの思いからきているんだな~」と笑顔になった。
小さな娘さんの頑張りに私たち夫婦は魅了され、二つの家族のバーベキューは素晴らしく楽しいものとなった。
そして、バーベキューの終盤、私は運転をするため当然ノンアルコールビールだが、同僚はお酒のビールを堪能していた。
そんな私を見て娘さんは「お兄ちゃん、お父さんは運転もしていないうえに酔っぱらってごめんなさいね」と気を使ってくれるのだ。
私たち夫婦はこの子の優しさに未来は明るいなあと、朝から続く晴れ渡った清々しい空を見上げた。
同僚は私たちの視線を皆から「UFOでも飛んでいるのかー」と言って楽しそうに酔っていた。

今回はキャンプと言っても、子どもたちもいたためバーベキューだけで終わって、私たち家族は帰路に就いた。
そして、同僚夫婦の家族を自宅に送り届けた。
同僚の娘さんと息子さんは疲れて後部座席で寝てしまっていた。
そんな娘さんは、家に着くや否や寝てしまっていたことが申し訳なさそうな様子で「お兄ちゃん、お疲れだったのに運転までしてくだり、本日はありがとうございました」と丁寧にお辞儀をした。
わたしは「気にしなくていいんだよ。また一緒にバーベキューに行ってくれるかな」と尋ねた。
娘さんはやや上目で私たちを見て「はい、お兄ちゃん、お姉ちゃん、今度もぜひ連れて行ってくださいね」と言って、恥ずかしそうに手を元気に振りながら同僚夫婦と家に入っていった。

私たち夫婦はお互い何とも言えない清々しい気持ちを抱いていた。
どちらともなくお互いが同じこと「小さな娘さんから教えられたね」と言った。
私たち夫婦の思いは、家族の誰もが、相手の立場に立って、相手の気持ちを尊重して、言葉をかけ行動する…
それだけでこんなに清々しいんだなあと。
人はついつい家族に甘えて、期待して、思うようにならなければ怒ったりするけれど…。
本当は家族のいる家庭だからこそ、相手の立場に立って労いあうものなんだよなあと。

私たち夫婦も自宅につき、
久々に手をつなぎながら自宅の中に入っていった。

すべては家庭からの愛で始まる。家庭から愛を…。


※これはひでさんの9月広報コンテストで入選した作品です。今回のテーマは「家庭愛」です。

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★一日一愛運動
一日に一度は愛の行いをしましょう。みんなといっしょにあなたの優しい愛を形に表して社会を明るくしましょう。

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