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親魏倭王、本を語る その22

【スペース・オペラとヒロイック・ファンタジー】
1920~40年代のアメリカではスペース・オペラの全盛期で、パルプマガジンに連載された後、単行本化されずに消えていった作品も多いと聞いているが、E・E・スミスの『レンズマン』シリーズや、エドモンド・ハミルトンの『キャプテン・フューチャー』シリーズは今でも人気がある。このルーツはおそらく、エドガー・ライス・バローズの『火星』シリーズではないかと思う。
おもしろいのは、同じ時期にヒロイック・ファンタジーが勃興していることで、代表例は何と言ってもロバート・E・ハワードの『英雄コナン』シリーズである。これに続くのがフリッツ・ライバーの『ファファード&グレイ・マウザー』シリーズとなるだろうか。
このあたりはミステリーほど体系的に調べられておらず、またSFやファンタジーはあまり読まないほうなので疎いのだが、スペース・オペラとヒロイック・ファンタジーは舞台が宇宙か異世界かの違いで、根底にあるものは同じ気がする。

【ダシール・ハメット略伝】
ダシール・ハメットは推理小説界におけるハードボイルドの先駆者で、自身も探偵だった(ピンカートン探偵社に勤めていた)ことからリアリスティックな私立探偵小説を書いた。『血の収穫』『マルタの鷹』などが有名である。
シリーズ探偵にコンチネンタル・オプ、サム・スペードがいるが、後者が作者の考える探偵の理想像として創造されたのは有名である。
ハメットは比較的寡作な作家だが、自作の映画化で収入を得られるようになると創作意欲が衰えていったようだ。同時に、スランプに陥っていたようで、パートナーだった劇作家リリアン・ヘルマンは「執筆活動はずっと続けていたが、作品を完成させることができなかった」と後に語っている。
労働者の実態をよく知るハメットは労働運動に強い共感を持ち、共産党員となっていた。そのためか、第二次世界大戦後の「赤狩り」に巻き込まれ、さらに結核で肺を傷めていたところに過度の飲酒と喫煙が重なり、最終的には肺癌で没している。

【ヘンリー・ライダー・ハガードのこと】
冒険小説の2大名作と言っていい『宝島』と『ソロモン王の洞窟』はほぼ同時期に書かれていて、『宝島』が先行したらしい。聞いたところによると、スティーヴンソンの『宝島』に触発されたライダー・ハガードが『ソロモン王の洞窟』を書き、売り上げは『ソロモン王の洞窟』のほうが良かったという。
ハガードは『ソロモン王の洞窟』の主人公、アラン・クォーターメインを『二人の女王』で続投させ、シリーズ化させる。それとは別に『洞窟の女王』など同工異曲的な冒険小説を書き、人気を博したが、今入手できるのは『ソロモン王の洞窟』『二人の女王』『洞窟の女王』くらいではないかと思う。
ハガードは歴史小説も書いていて、その代表的なものが『モンテズマの娘』『クレオパトラ』だが、両者とも絶版で、特に前者は『世界大ロマン全集』に収録されたきりだったと思う。後者は同名の映画があるが、関係は不明。
ハガードは、系譜としてはエドガー・ライス・バローズに繋がるだろうか。

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