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型式学と編年 かたちの変化を追う

民具は基本的な形状は変わらないが、作られた時代や地域によって、意外と個体差がある。特に、時代が下がると徐々に改良されていくため、同じ道具でも差異が出る。同じ種類の民具を大量に集めて研究するのは、その差異を明らかにして地域差や時代による変化(改良の歴史)を突き止めるためである。時代による変化を調べるのを編年研究と言い、これは考古学でよく行われる。
編年研究はモノを使った時間の物差しを作る作業でもあり、新たに得られた資料がいつ頃のものか推定するために必要なのである。墨書などで年代がわかるのはむしろ稀なのだ。
このあたりをもっと深く掘り込んでみよう。
考古学で、モノの形状の差異を比較し、変化を追跡して変遷のモデルを作る研究を型式学という。上記の編年の基礎となる研究で、これは民具研究にも応用できる。

客車の変遷。左上→左下→右上→右下と変化した。

上は型式学の例としてよく取り上げられる客車の変遷。馬車時代は1個室しかなかったが、機関車が客車を牽くようになると、旅客数を増やすため個室を複数並べて1両の客車にする。ただ個室が連結しているだけなので、部屋の行き来ができない。そこで、個室の外側に廊下を作って行き来できるようにし、客車への出入りを客車の前後に集約して、駅員の負担を軽くする(当初は駅員が各個室へ客を誘導していた。出入り口が集約されると、駅員の誘導の負担も減る)。
こうした研究には複数のサンプルの比較検討が必要で、数十点〜百点レベルの資料比較があって初めて成立する。例に挙げた客車の変遷は変化が早い方で、通常は微細な変化(改良)が少しづつ加わっていく。そのため、大きく変化する前に中間的な様相のものが必ずある。そうした微細な変化は数を見ないとわからない。

土器の口縁部の変化

ちなみに、変化は進化ばかりではなく退化もあって、不要と思われる部位を取り除いたり、面倒臭さからか一部を省略したりする。一例として、中世の畿内で使われていた瓦器碗は、時代が下がると高台(茶碗の底に付いている輪っか)が貧弱になり、支えの役割を果たさなくなる。
『名探偵コナン』のような長寿アニメの場合、世相の反映や作画監督によるタッチの違いから、放送時期によって微妙にキャラクターの顔が違っていたりする。だから、その変遷を表にすると、個別エピソードを見たとき、それがいつ放送されたかわかるようになる。
型式学というのはそういうもので、時代や地域ごとの変化を明らかにして物差し(編年)を作り、今後、同様の資料が出てきたとき、それがいつ頃のものか、どの地域のものか、比較対照できるようにする作業である。

参考記事↓


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