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文化と美術

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主に日本の文化と美術について書いた記事を特集。
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#アニメ考察

アートについて

下記は『アートがわかると世の中が見えてくる』(前﨑信也、IBCパブリッシング)という本からの受け売りである。  1 昔から文化・芸術・学問の発展にはパトロンの存在が大きかった。古く奈良時代は国家そのものがパトロンであり、平安時代は貴族、中世は武家、近世は大名や町衆、近代は実業家。寺社に至っては近代に入るまでずっとパトロンであり続けた。 今はどうかというと、パトロンが存在せず、芸術家の自助努力によるところが大きいと思う。国家(政府)は主に学問の世界において、逆に締めつけるよう

セーラームーンとプリキュアの根本的相違

1 はじめに ~ChatGPTとの問答から~それはひとつの思い付きだった。 1月末の全国的な荒天で体調を崩し、2月初めの寒波でそれが悪化して、未だに回復の兆しがない。 自律神経に不調があるためか、頭が冴えていても身体が倦怠感などで動かせなかったり、身体は自由に動かせても頭の働きが鈍っていて本すら読めない時があったりした。そういう時、浮かんできた疑問をChatGPTに検証してもらったりして遊んでいたのだが、プリキュアの深掘り考察をしていた時に下記のような思い付きがあった。 そ

プリキュアを歴史上の人物に当てはめてみると?

はじめに 夢原のぞみのモデルは劉邦らしい?『ニコニコ大百科』の「夢原のぞみ」の項目に、興味深い記述がある。引用元が記されていないのだが、プリキュアシリーズの初代プロデューサーだった鷲尾天氏によると、夢原のぞみのモデルは劉邦らしい(ただし、司馬遼太郎氏の小説『項羽と劉邦』に登場する劉邦のイメージだという)。 夢原のぞみが主人公を務めた『Yes!プリキュア5』以降、プリキュアシリーズは3人以上で構成されるチーム制に移行し、初代以来のバディ制の要素も残しつつも『美少女戦士セーラー

『わんだふるぷりきゅあ!』についていろいろ考察してみた

今年放送している『わんだふるぷりきゅあ!』は人と動物の交流がテーマになっている。 『わんだふるぷりきゅあ!』にはニコガーデンという異世界が登場するが、ふとYouTubeで動画を見ていたら、ニコガーデン=他界(あの世)という考察が流れてきた。ペットが死んだときの「虹の橋を渡る」という表現からの連想のようだが、いろいろ気になる考察である。ニコガーデンにはすでに絶滅した動物もいて、それがこの仮説を有力にしている。もっとも、他界というのは死後の世界だけではなく、神々が住まう高天原も他

『ドキドキ!プリキュア』の一考察 主に菱川六花について

『ドキドキ!プリキュア』はトランプ(元大統領ではない)がモチーフだったが、細かいところまで手が込んでいて好きだった。 例えば、トランプのスート(マーク)にはそれぞれ以下の意味がある。 ハート=聖杯=愛 ダイヤ=宝石=富 クラブ=棍棒=幸福 スペード=剣=権力 これらはタロットカード由来で、スートはそれぞれ聖職者・商人・農民・貴族を表す。主人公4人はこのスートから名前が取られている。 相田マナ→愛→ハート 菱川六花→菱→ダイヤ 四葉ありす→四つ葉のクローバー→クラブ 剣崎

『スター☆トウィンクルプリキュア』のSF的評価

1 はじめに1-1 はしがき この記事は、プリキュアシリーズの1作である『スター☆トウィンクルプリキュア』(以下、「スタプリ」と略記)をSFとして評価する試みである。 従来、プリキュアシリーズはファンタジー的要素が強いが、その中でいくつかSF的な設定を持つものがあり(管理社会が描かれた『フレッシュプリキュア!』や時間がテーマの『HUGっと!プリキュア』など)、スタプリもそうしたSF的設定を持つプリキュアのひとつであるが、その中でも特にSF的要素が強い作品であるように思われる

細分化した推理小説の統合:名探偵コナン

『名探偵コナン』は青山剛昌氏原作の推理漫画で、1994年から『週刊少年サンデー』に連載され、2年後の1996年からテレビアニメ化され、現在に至っている。作者は「殺人ラブコメ漫画」と評していて、主人公である工藤新一=江戸川コナンと毛利蘭の恋愛を軸とした複数の恋愛関係が作中で描かれ、そうしたラブコメを軸としたうえで、様々な事件が発生し、その謎解きが行われるという特徴を持つ。従来、ファンの間ではこの「ラブコメ」としての側面が強く意識されてきたようで、推理漫画でありながら「推理漫画(

『葬送のフリーレン』が哲学に革新をもたらす可能性について

1 はじめに ~一本の動画から~この記事は、アニメ『葬送のフリーレン』が哲学に革新をもたらす可能性について考察したものである。この思い付きは、一本の動画から始まった。 この動画は『葬送のフリーレン』を見た海外のアニメファンの感想を主に紹介するものだが、そうした感想を見ていると、物語が「魔王討伐の後日談として始まる」という掟破りの始まり方に驚く人がいる一方、フリーレンとヒンメルの関係から哲学的な視点で物語を読み解こうとしている人が割といることに気づかされる。日本でどのような捉

断頭台のアウラは自害するしかなかったのか

(注:筆者は『葬送のフリーレン』を未読・未視聴のまま考察している。文中、おかしなところもあると思うが、ご容赦願いたい。) 『葬送のフリーレン』は、2020年から『週刊少年サンデー』に連載されている異世界ファンタジー漫画である。「魔王討伐の後日談」として物語が始まるのが異色である。主人公の魔法使いフリーレンは長命なエルフ族の出身。かつて旅をともにした同胞たちに先立たれ、思い悩んだ末に「人間を深く知る」ため旅に出る。 この漫画のハイライトの一つが、フリーレンと断頭台のアウラの対